総合診療に関心を持つ、学生、初期研修医、そして総合診療専攻医・修了生の皆さん総合診療専門医制度がスタートし3年が経過し、この春には第一期の修了生が生まれました。まずはこの制度が船出し、無事修了生を送り出すことができたことは大きな一歩であり、専攻医・指導医および関係者の皆様の努力を讃えたいと思います。

総合診療専門医の今後と学会の役割について

 総合診療専門医が確かなキャリアを歩み、地域の医療ニーズに応えていくためには、基本領域研修修了後も生涯学習を継続すること、そして総合診療領域を基盤とする学術・研究活動の発展が重要です。その意味で、学会が果たすべき役割は大きく、専攻医の多くが所属する日本病院総合診療医学会、日本プライマリ・ケア連合学会の両学会が、他の団体と協力しつつその中心的役割を担う必要があります。

両学会ではかねてより総合診療専門医取得後のサブスペシャルティの制度構築に努めてきましたが、この度、さらにこの動きを加速するべく、この領域に関心のある学生・若手医師の皆さんによりわかりやすく、より広く伝えることができるよう、両学会で協働することとなりました。その第一歩として、本文書を発するものです。

総合診療の魅力や強みは、どの様な臨床現場でも通用する臨床の考え方、行動指針でもありますが、総合診療の基本を身につけた先生方には、病院、診療所、また在宅診療など環境により特化したトレーニングを提供することで、さらに現場に特化した質の高い技術を磨いて頂くことができると考えます。そこで、両学会は総合診療専門医のサブスペシャルティとして2つの道を次に提案致します。

サブスペシャルティ (学会認定)の研修について

 現在、総合診療専門医修了後のキャリアとして、両学会では学会認定のサブスペシャルティ専門医として病院総合診療専門医(日本病院総合診療医学会)、新・家庭医療専門医(日本プライマリ・ケア連合学会)を提案しています。

病院総合診療専門医については、2022年4月の正式開始を目指し、今秋にはその内容を示せるよう準備をすすめているところです。本制度については米国のSHM (Society of Hospital Medicine)を参考にグローバルな視点を加えつつ、より日本に即した形で病院総合診療医として成長できるような研修を目指しています。

新・家庭医療専門医については、2020年4月よりすでにその制度を開始しており、WONCA (World Organization of National Colleges, Academies and Academic Associations of General Practitioners/Family Physicians)の認証も受けたグローバル水準の制度として現在407名が研修中です。

両制度の詳細については下記のホームページに最新情報を掲載しておりますのでぜひご参照下さい。

今後について

 引き続き両学会が緊密に連携し、サブスペシャルティ領域の専門医制度の構築、発展のために協働し、総合診療医の皆さんの教育・研究活動を促進すべく継続して活動して参ります。総合診療は社会的ニーズが極めて大きく、これから発展していく分野であることに論を俟ちません。総合診療医として研修することで、患者さんの様々な健康問題に広範囲に対応できる力がつき、さらに特化した上級のトレーニングまで受けることでより柔軟な現場での対応力・マネジメント力が付きます。このようなトレーニングの段階を両学会は体系的に整備して参ります。総合診療はやりがいの大きな領域です。夢をもって飛び込んできてください。お待ちしています。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。

日本病院総合診療医学会理事長 林   純
日本プライマリ・ケア連合学会理事長 草場 鉄周