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他科/多職種インタビュー企画 小児科 岡本光宏先生インタビュー 第2回

他専門科や他職種のバックグラウンドを知ることで、コミュニケーションが取りやすくなったり、どのようなプライマリ・ケア医が求められているのか、研修中どのように学んでいったらよいかをイメージできるようになるため、インタビューを企画しました。

今回は、小児科ファーストタッチの著者である兵庫県立丹波医療センター小児科の岡本光宏先生にインタビューを行いました。


第二回では、若手医師の指導で困ったこと、小児科医の一般的なキャリアについてお話を伺います。


専攻医は自信満々で診療を、小児科医は子供の総合医、、、などなど心に響く話を沢山していただきました!!

https://note.com/pc_senkouibukai/n/n8b20c0f5d600?magazine_key=m5470b6e5a494
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③若手医師の指導で困ったこと

鈴木:プライマリ・ケアの専攻医を教える上でコミュニケーションなどに関して教えるのに困ることはありますか?それか、もう少し一般的に若手の医師に指導する時に困ることがあるのか聞いてみたいです。


岡本先生:プライマリケアの先生じゃなくて若手の小児科の先生の時になるんだけれど、一度入院中の患者さんが怒って夜中に帰っちゃったっていうことがあったんですよね。その時の病名はウイルス性細気管支炎で、ファーストタッチにも書いたんだけどウイルス性気管支炎ってすぐには治らないんですよね。平均的な症状の持続期間は12日間と長いんです。入院初日よりも第3〜4病日が一番悪くなるので、入院した日よりも翌日、翌々日の方が悪くなってることが多いです。
 担当した医師は若いし、知識・経験不足があって。生後6ヶ月未満の子供の細気管支炎だから、輸液と吸入と去痰薬を使っていくとここまではいいんだけどね。翌日、翌々日にはさらに悪くなって酸素投与が始まります。いつぐらいになったらよくなるのかとか、どれくらいの入院期間になるのかという質問にうまく答えられないわけですよね。専攻医から不安な印象がすごい出てしまいました。医師の不安って患者さんに伝わるもので、主治医が不安だと、親はこの医者でいいのかなぁっていう話になってしまいます。夜間に不安が爆発して、こんな病院にはいられないって言って帰ってしまったケースがあるんですね。
 
 先生たちプライマリ・ケアの専攻医たちは子供を診る時に小児科医ではないという弱点のような負い目のようなものを感じる事があって、不安に感じることがあるかもしれない。先生たちは子供以外も診ていて、どんなに積極的に診療を続けても子供を診る数は小児科医に負けてしまうので。経験値が足りないと言って不安になるかもしれないのね。でも不安は顔に出ちゃダメだと思うんですね。
 プライマリ・ケア専攻医の先生たちはね、子供を診ている数は少ないかもしれないけれど、外来とか、初診とか、情報をまとめる力とか、チームの中心にいる力とかはやっぱり自分達がプロであるという、いい意味の自尊心を持ってもらいたいです。

 子供が来た時にも小児科医ではないので、という負い目は全然感じずに、むしろ小児科医よりもプライマリ・ケア医の方が上手にできる自信があるくらいのつもりで、自信満々でやってもらうといいと思います。まだプライマリ・ケア医の知名度は低いと思うけど、自信満々に子供を診てもらう方が患者さんの安心に繋がると思います。

 今のところね、自信のなさで崩壊したプライマリ・ケア医は見てないんだけれども。プライマリ・ケアの専攻医にアドバイスできるとしたら、子供を診るにあたって、自信満々に診てもらったらいいと思っています。



鈴木:ありがとうございます。僕も小児科研修の初日に免疫グロブリン不応の川崎病の患者さんの担当になって不安でした。



岡本先生:あれは誰でも不安になるけどね(笑)。 群馬スコア高ぇって。



鈴木:子供も診たことないし、川崎病も診たことないしなぁと思った時に、親御さんに「あれ、名札に内科って書いてますけど」って言われて。



岡本先生:今日外来に来られた患者さんが、救急外来で内科の先生に診てもらってって言っておられました。悪い印象ではないと思うんだけどね。ただ、名札を診てましたね保護者の方は。



鈴木:結構見られてると感じますね。2ヶ月うーんと思いながら過ごしてました。総合診療科=内科ではないですし、小児科も救急科もローテーションで回って行きます。もちろん、病院によって内科とはなんぞやというところは違うと思いますが、そこはちょっと相談してみます。



岡本先生:やっぱりね、プライマリ・ケアや総合診療の認知不足だと思うの。もっと患者さんについてなんでもみてくれて、外来の初診に関してはプロであるということをを発信していくといいと思う。名札から、わかりやすく、もっと発信していくといいと思います。



鈴木:ありがとうございます。

  • https://www.primarycare-japan.com/pics/news/news-164-1.png

④ 小児科医の一般的なキャリアについて

鈴木:小児科の専門医の一般的なキャリアについて聞いてみたいです。 3年で小児科専門医というのは取得するというのが一般的な流れかなと思うのですが、その後はどんなキャリアが広がっているのでしょうか?


岡本先生:僕が初期研修を神戸大学で受けたことや、医局員であるというのもあると思うけど、まず大学院にいって博士号を取りに行くというスタンスの人も結構います。半分ぐらいの人が博士号をとるために社会人枠で大学院生になって、大学院で勉強しながら、診療もしながら、研究もして、4年間で論文書いて、そして博士号を取るというパターンです。もう半分は大学院へ行かず、市中病院でバリバリとやっていくというような人。僕は後者の方。

 僕は5年目終わって6年目の時に、教授からは「大学院へは行かないのか?」と言われましたが、僕の中の医者のイメージが、街のお医者さんになりたいというのもあったので、あまり博士号には興味がないですといって、市中病院で働くことになりました。


 小児科はご存知の通りジェネラルであることを売りにしているので、サブスペシャリティなんて全然なくてもいい。ずっと一般小児科医で働き続けることは可能です。


 ただ、中でも得意・不得意というのがあって、希少疾患の診断が上手な先生や、一方で心や不登校の話を上手に聞く先生とか、僕の場合はアレルギーも多かった。ちょっと真剣に診たり、いいアドバイスができるとすぐに噂が立って、患者さんが集まってくるんですよね。


 僕も全然アレルギー専門医じゃなかった時からよくアレルギーを診てて、負荷試験とかやっていた。そうすると噂を聞きつけてか、アレルギーの患者がどんどん来るようになって、気がついたらアレルギー専門医の資格を満たしていた。それでアレルギー専門医になった。要は、ジェネラルは何を診てもいいし、何でも診れなきゃいけないけど、その中でも得意・不得意からどうしてもサブスペシャリティができてしまうことがある。でも僕はアレルギー専門医だけど、アレルギーしか診ないわけではなくて、結構不登校の子もたくさん診てるし、その場その場の地域で求められる、誰も診てくれないような病気が集まってくるようになる。そうやって勉強していく中で、自然とサブスペシャルが見つかるという感じでした。



鈴木:岡本先生は、アレルギー疾患に興味を持って専門を取ったというよりも、地域のニーズに合わせて診療している結果がアレルギー専門医だったということなんですね。



岡本先生:僕は丹波に来た時アレルギー専門医じゃなかった。でも負荷試験してくれるところが、丹波から60kmぐらい離れているこども病院しかない。卵を食べさせるためだけに行かせるのもだめだからね。見様見真似でやってるうちにというのはありますよね。これっていいのかな。総合医であると言いながらサブスペシャリティをとるというのは矛盾しているような気もする。



石田:僕は津山中央病院で小児科研修をやっていました。 部長の先生は本当にジェネラルという感じでやっておられました。心身症とか消化器疾患とか、新生児・NICU管理もされていて、まさにジェネラリストだなと見ていて思いました。

 でも若い専攻医の先生とか同学年の先生と話をすると、やっぱり循環器学びたい、消化器学びたいとか、膠原病・リウマチを学びたいとか、サブスペシャリティの話を医局長の先生とすることもあって、悩んでいる方もいます。岡本先生のようなキャリアを進まれる方もおられると聞いて、僕も同じような想いを感じていました。

 僕もプライマリ・ケア医を目指そうと思ったのは、幅広くジェネラルに診られる人になりたいというゴールがあったからです。



岡本先生:多分2パターンあるのかなと思います。1つ目は私はエコーに強くなりたい循環器が見れるようになりたいというもの。この考え方はどっちかっていうと循環器内科医の先生等のパターンの考え方に近いんだろうと思います。2つ目は、逆に何でも診るつもりなのにその地域にニーズがあって、例えば今の丹波では圧倒的にアレルギー患者さんを診てもらえる人がいなくって、困っているという状況があって、そこでなんとかしなきゃいけないなーと環境に合わせて小児科医が変化するパターン。このようにキャリアに対する考え方が違うのかなと思います。

僕が他に持っているのはPALSの小児救急のインストラクターや、NCPRとか新生児のインストラクターとかがあって、それは以前NICUにいたからです。



 結局僕の中で何がしたいのかというと、子供が見れたらそれでいいと思っています。

子供のどの疾患が診たい、ということが重要ではなくて、その場その場で求められるものができたらいいなと思うと、このような生き方になるのかもしれません。

もちろん、「私は遺伝が好きだ」といって、地域の需要とかでなく、遺伝学が勉強できるところに私は働きに行きたいという人もいると思うし、私は「循環器が好き」、だから専門病院に行って、どんどん循環器の勉強をしたいんだというタイプの人もいて、いろいろな人がいると思います。 僕はそうでなくて、その地域の人という感じです。



鈴木:最初のイメージでは、小児科の専門を取った後は、皆がサブスペシャリティを目指していくのかなっと思っていました。先生みたいに、最初から小児のジェネラルを目指す人はどれぐらいの割合でいるのでしょうか?



岡本先生:勝手なイメージだけど半々じゃないかな。うちの部長の先生なんてまさに特に専門を設けずにやっておられるし。得意不得意はあるけど、サブスペシャルを持ってない先生もすごく沢山いる。



鈴木:プライマリ・ケア医を目指すにあたって、専攻医が「自分たちのアイデンティがどういうところなんだろ」という不安を感じることが、多かれ少なかれあると思っています。

小児のジェネラルに進む方はサブスペシャリティがないことに負い目を感じる事はあるのでしょうか?



岡本先生:僕は、サブスペシャルを持ってしまったことに対して若干、逆に自分の存在意義を失ったんじゃないかなーという気がしています。本来は、小児科医は子供の総合医なんだから、それを持っていればいいのに、 気づいたらアレルギー専門医になっていて、これが本当に良かったのかどうかわからないなという気すらしています。

 小児科学会が、総合医であることをすごい売りにしている。そのマインドが好きで小児科医になった人がやっぱり半分ぐらいいると思います。やっぱ心臓が好きでなるなら循環器医になるべきかなーと思うので、小児科医である必要がそもそもなくなってしまうと思うし。

 そうは言っても、環境とか状況とかでサブスペシャリティを取る先生は半分くらいいるけども 、残り半分は子供の総合医でいると思います。



鈴木:半分ぐらいそのように進んでいかれる先生がいるというのが、新鮮でした。キャリアについては、3年で専門をとるということしか聞いたことがなかったので。



石田:僕も小児科の医局に戻って専門のライセンスを取ってから地域の病院とかに出るのかと思っていました。プライマリ・ケアに興味がある志を持った小児科の先生がおられるというのは嬉しかったです。



(次回最終回のテーマは、小児科医とプライマリ・ケア医の役割分担、小児科研修終了後の小児診療の研鑽についてです。次回もお楽しみに。

 具体的な連携の形、3ヶ月の研修は短い様で長い、、、など最後まで濃い話を伺えました!)

最終更新:2022年07月18日 20時03分

専攻医部会

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