ホームニュース他科多職種インタビュー企画他科/多職種インタビュー企画 小児科 岡本光宏先生インタビュー 第3回

ニュース

他科多職種インタビュー企画

他科/多職種インタビュー企画 小児科 岡本光宏先生インタビュー 第3回

 他専門科や他職種のバックグラウンドを知ることで、コミュニケーションが取りやすくなったり、どのようなプライマリ・ケア医が求められているのか、研修中どのように学んでいったらよいかをイメージできるようになるため、インタビューを企画しました。



 今回は、小児科ファーストタッチの著者である兵庫県立丹波医療センター小児科の岡本光宏先生にインタビューを行いました。

最終回は、小児科医とプライマリ・ケア医の役割分担小児科研修終了後の小児診療の研鑽についてです。



 具体的な連携の形、3ヶ月の研修は短い様で長い、、、など最後まで濃い話を伺えました!

 



Noteで読むにはこちらから↓

https://note.com/pc_senkouibukai/n/n71b46a782099?magazine_key=m5470b6e5a494



⑤小児科医とプライマリケア医の役割分担について

鈴木:岡本先生が考えるプライマリ・ケア医と小児総合医の棲み分けはどういったところだと思われますか。小児科医が専門としたいところや、線引きみたいなもののイメージをきいてみたいです。また、プライマリ・ケア医が増えていった未来のイメージはありますか?



岡本先生:丹波に来て思ったことですけれど、近隣の地域では小児科医が1人しかいない病院があります。お産はストップして、赤ちゃんは見なくなったし、一人の小児科の先生もいなくなりました。丹波市も、小児科を守る会がなかったら小児科医はなくなっていたように思います。人がだんだん少なくなっていて、小児の数も少なくなります。



 小児科1~2人では当直をすることができないんですよね。地方都市からは少なくても小児科医はどんどんいなくなって、都会に集まっていくのかなと思います。

集約化の流れは仕方がないとも思っています。やっぱり、大きい病院がドカンとあって、色々な医療ができるというのは仕方がない流れです。



 ただ、そうなると、ただの風邪とか、軽い喘息発作とか、熱性痙攣単純型とか、そんな病気も全部都会まで行かないといけないのかという話になると、それは地域の子供達にとって非常に大変なことです。子供の少ない地域では、子供しか見れない小児科医の居場所がだんだんなくなってきてしまうんですけど、プライマリ・ケアの先生達はその地域でもうまくやっていけるのではないかと思っています。



 というのは、子供は少なくても大人はたくさんいて、プライマリ・ケアの先生は地域でちゃんと仕事があってやっていける。その中で子供もちゃんと見れると。

残念なことに、多分小児科医は地域からだんだん撤退していって、子供しか見れない小児科は居場所を失い、子供の多い中心地の方にいってしまうと。



 地域をお願いするのは申し訳ない事だけれども、初診や外来に関してはプライマリ・ケアの先生がしっかり見てくれて、これはホームケアで大丈夫。これは入院で見た方が良いので紹介状書くね、という棲み分け。こういう棲み分けができたらよりいいな、と思っています。




石田:僕も岡山の県北で医療をしていて、小児科の先生がおられない地域だと、救急車1~2時間かけて県南に行くことは大変だなって思いました。確かに、病院がどんどん都会に集まってきています。若い先生で都会で働きたい人も多いでしょうし、田舎では働けない家庭の事情もあるかもしれません。地域で働く医師がこれからどうなっていくのかは分かりません。

 

 そういったところでも風邪の子供とか、あとは人工呼吸器使っている子供とか、在宅で管理しているけれど何かあればICUに行かないといけない子供もいるということがゼロではないと。地域によって使える資源とか医者の数もそうですけど、大事なのは連携なのかなと思います。僕たちプライマリ・ケア医ができることをしっかりアピールする。ここまではできますけど、ここからはお願いします、といったような連携を少しずつ、長い時間をかけてやっていくということがこれからは必要になってくるのかなと思いました




岡本先生:在宅の部分はプライマリ・ケアの先生が強そうですよね。成人移行で小児科は内科にパスしますが、プライマリ・ケアの先生には引き継ぎをせず最初から継続的に診ていただけるという点は良いかもしれませんね。



 僕の中では外来や普段の管理をプライマリ・ケア医が行い、有事の際に小児科にというパターンが作れたらよりいいなと思ってます。




石田:僕たちプライマリ・ケア医は有事の際の対応が苦手で、なるべく困らないように勉強しないといけないなと思います。しかし、3ヶ月という期間でどこまでできるかというのが、施設や専攻医のスキルによって変わってくると思います。

 3ヶ月という短い期間で全てを学ぶことはできない。専攻医も今いる地域で、どういった形でスキルアップしていくかは一人一人で考えていかないといけないのかなと思っている。連携をしながら一人一人スキルアップしていくことが大事だという認識で大丈夫でしょうか。




岡本先生:そうですよね、本当にそう思います。まさにその通り。

 

  • https://www.primarycare-japan.com/pics/news/news-165-1.png

⑥小児科研修終了後の小児診療の研鑽について

鈴木:研修期間中は小児科の先生が近くにいて、相談できます。3ヶ月の研修を終えて、地域の病院や、診療所で子供も診ますということだったら、完成しているわけはないと思うので、その後の研鑽をどう積んでいったらいいのかはとても心配しています。




岡本先生:3ヶ月って、ある程度子供の診療に自信をもつところまでいって欲しいなと思うんですよね。そのための教育プログラムが小児科医側に用意されていないのが残念だなと思います。3ヶ月間小児科医のうしろで外来を見学しました、ではほとんどスキルアップされていなくて、その病院を離れて独り立ちしても子供が時々来た時に、採血するのかとか尿検査する状況なのか判断つかないということになるかもしれないです。



 3ヶ月は短いようで相当長いように思う。自分がたとえば、3年目でスーパーローテが終わって、小児科医になったという4~6月で一人で当直もしてたし、外来もしてたし、上級医に相談するという状況だけれども、ある程度は3ヶ月いたら自信を持っていいのではないかと思っています。そこから後は、ひたすら子供を避けずに見続けて、さらに研鑽を積むしかないよね。でも確かに相談先はあったほうが良いよね。どうしとけばよかったなとか、そういうのね。なんかいい方法あるのかな。




鈴木:ちなみに今、丹波の開業医の先生と小児科の先生の間でフィードバック、悩みみたいなのを開業医の先生から聞いたりしていますか?




岡本先生:僕は開業医の先生とfacebookで繋がっているので、メッセンジャーで返すことはありますよ。また紹介状は一番ベーシックなフィードバックですよね。僕もできるだけポイントを掴めるように、『次から同様の症例があった場合には紹介はwelcomeですけど、ある程度はこういう考え方で僕はやっています』というような返事を書くようにしています。



 メッセンジャーやツイッターとか、相談してもらったら答えられる範囲で答えますけれども。




石田:僕も小児科研修していた時に、小児科の6年目と4年目の先生がおられて、LINEを交換して、相談できる仲になりました。そういうつながりは大事なのかなーと思います。




岡本先生:そういうつながりはいいよね。逆もあるしね。高校生になったんだけれども続きをお願いできないかという。繋がっていると良いかもしれませんね。




石田:そういうつながりを大事にして地域で繋がっていくのが大事ですよね。




岡本先生:知り合いの小児科医がいる病院では、小児科専門医が1人しかいないんですよね。その先生は月に3~4回当直しているんですが、残りの28回はどうしているかというと、内科の先生が子供を見ていると。困った時に小児科の先生に相談するという。



 基本は内科の先生が働いて、小児科の先生はアドバイザーみたいな形でやっているということを聞きました。それって先生、毎日オンコールってことですよね?って(笑)。まあでも内科の先生がうまいことやってくれているからほとんどやることないよって。僕は、休める日がなくて大変だなって思いましたけれども。そういう役割の方法もあるのかなって思います。小児科医の数がうちの病院は上級医が3人、小児科専攻医が2人、合計5人でプライマリ・ケアの専攻医が1人がいて6人。5人いると月6回当直で良いからやっていけるけど、これ以上減って月7回を超えるとしんどくなってきてね。ただ、たとえばウチは恵まれているんですよね。丹波市という小さな地域に小児科医が5人もいると。



 これがたとえば4人に減ったら月7~8回当直しないとだめで、そのうち誰かやめて、3人になったら月10当直しないといけなくなります。月10回当直は絶対無理な状況になってきて、これはもう破綻への一歩です。ここを例えば、月5-6回くらいの当直をして、プライマリ・ケアの先生が残りをして、ただプライマリ・ケアの先生が入っている時はオンコールで相談を受けると。プライマリ・ケアの先生が基本的に病院にいるという診療のパターンももしかしたらあるのかもしれないなと思いますね。




石田:プライマリ・ケア医が小児科の当直を肩代わりできるとやっぱり小児科の先生もありがたいんじゃないかなって思っているんですけど。




岡本先生:それはめちゃくちゃありがたいですよ。今もプライマリ・ケア専攻医の先生が当直してくれて本当にありがたいですよ。




鈴木:逆になんかありがたすぎるんですけど(笑)。地域によるとは思いますけれど、若手のプライマリ・ケア医を目指す僕らみたいな人はもっと小児科をみる場面があったらいいなと思ってる人は多いんじゃないのかなって思います。経験できる場所というのはありがたいと思ってます。




岡本先生:小児科ファーストタッチ、あるでしょ?これね、2019年の3月に出たんだけど、原稿がいつできたかっていうと2018年の1月から3月の3ヶ月で書いたの。なんで書けたかっていうと、その時期はプライマリ・ケアの専攻医の先生がいたのね。そのおかげで時間にゆとりが生まれて、正直暇になったので、暇になった岡本がこれを書いたという。要はプライマリケアの先生が3ヶ月いてくれると僕の仕事はすごく楽になって、普段できないことができるようになって。それは本を書くとかじゃなくても家族サービスとか専門医とかサブスペへの勉強とか、論文を書くとかいう方向でも良いし。なんとなくすごいゆとりが生まれましてね。本当に戦力になってました。



 最初僕はプライマリ・ケアの先生は外来で、小児科医は入院でという役割分担を提案したのだけれども、石田先生や鈴木先生と話してて、そういう分け方でなくても良いのではないかと正直思ってきました。要は、こんな言い方したら申し訳ないけど、プライマリ・ケアの先生が基本当直に入って、オンコールは小児科の先生という形で。ああ、いや、オンコールばっかりでラクしようとは思ってないけど。



 なんていうのかな、当直とオンコールという体制でも全然やっていけるのかなと思ってます。こういう形だと小児科のお手伝い感があって逆に申し訳ないけどね。先生たちが当直入ったら大人も見るでしょ?




鈴木:病院によっては内科当直で成人の内科と小児を診ることになりますね。




岡本先生:プライマリ・ケア医がもっと増えなければいけないのかな。




石田:僕は個人的には子供から大人まで幅広く診たいという想いがあって、この道を選んだわけですが、そういう道があることをみんなに知ってもらわないと行けないのだと思います。



 僕は小児科研修は終わったんですが、月2回だけ小児科当直させてもらっているんです。申し訳ないんですけど勉強させてくださいって言って。僕のスキルアップや経験になるし、向こうの先生も当直の回数が減ったらwin-winじゃないかなと思って。



 ただ、僕が対応できない帝王切開後の新生児の挿管管理とか人工呼吸管理とかはできないので、バックアップ体制がある、約束があるというシステムのもとでやらせてもらっているので。僕たちプライマリ・ケアの先生も勉強になる。



 そのほうが良いコミュニケーションというか、いい関係を構築できると思いますね。




岡本先生:外来と病棟で分けるよりも良いかもしれませんね。新しいビジョンが見えた気がします。




石田:いや、でも先生の本を買って、それで当直を乗り切っているところもあるので。




岡本先生:いや・・・そういってもらえると嬉しいです。

 



鈴木:もっと色々聞いてみたいなと思うことはあるんですけれども、最期に岡本先生から読者(プライマリ・ケア専攻医)に向けて一言お願いします。




岡本先生:子どもも診られる医師になってください。

最終更新:2022年07月18日 20時03分

専攻医部会

記事の投稿者

専攻医部会

タイトルとURLをコピーする