学会からのお知らせ
高額療養費制度の見直しに関する当学会の立場表明
健康保険制度は医療へのアクセスを保証するものであり、重要な健康の社会的決定要因(SDH)です。
先般、高額療養費制度について 国会で議論されました。 自己負担額の引き上げは、経済的理由による受診抑制につながるとともに、経済的困窮は、患者のみならずご家族の健康・ウェルビーイングにも影響します。
そこで本学会では、令和8年5月21日付で高額療養費制度学会の見直しに関する立場表明を行いました。そこでは、健康影響予測評価(HIA: Health Impact Assessment)とそれに基づく当事者を含むステークホルダーの合意形成、また、社会的公正の視点に立った検証を求めています。
「健康保険法等の一部を改正する法律案」は令和8年5月29日に成立し,令和8年(2026年)8月と令和9年(2027年)8月の2段階で施行され、詳細な政省令の整備や運用ルールの確定が進められることになっています。
本学会の会員は、プライマリ・ケアの現場で患者に直接関わる立場にあります。今後、学会の責務として、改正後の影響について現場の声を集約し、政策立案者に届け、より良い制度設計に貢献する所存です。
先般、高額療養費制度について 国会で議論されました。 自己負担額の引き上げは、経済的理由による受診抑制につながるとともに、経済的困窮は、患者のみならずご家族の健康・ウェルビーイングにも影響します。
そこで本学会では、令和8年5月21日付で高額療養費制度学会の見直しに関する立場表明を行いました。そこでは、健康影響予測評価(HIA: Health Impact Assessment)とそれに基づく当事者を含むステークホルダーの合意形成、また、社会的公正の視点に立った検証を求めています。
「健康保険法等の一部を改正する法律案」は令和8年5月29日に成立し,令和8年(2026年)8月と令和9年(2027年)8月の2段階で施行され、詳細な政省令の整備や運用ルールの確定が進められることになっています。
本学会の会員は、プライマリ・ケアの現場で患者に直接関わる立場にあります。今後、学会の責務として、改正後の影響について現場の声を集約し、政策立案者に届け、より良い制度設計に貢献する所存です。
高額療養費制度の見直しに関する学会の立場表明
2026年4月24日、医療保険制度改革を含む健康保険法改正案が衆議院厚生労働委員会で可決されました。改正案には、高額療養費制度の見直しが盛り込まれています。
私たちプライマリ・ケア従事者は、専門各科と連携し、生命・生活を脅かす疾病に罹患した人に対して、等しく最善の医療を提供し、健やかな暮らしを支援する役割を担っています。プライマリ・ケアの現場では、経済的理由により必要な治療を諦めざるを得ない患者や、治療を受けた結果として生活が立ち行かなくなる患者に日々出会っています。その立場から当学会は、今回の高額療養費制度の見直しによる自己負担増が、特に医療需要の高い患者において、適切な医療アクセスの著しい妨げになることを強く懸念しています。高額療養費制度の対象者は治療と仕事の両立に困難を抱えやすく、経済的理由で通院や治療を諦めざるを得ない状況に陥りかねません。それは生命の危機に直結します。一方、医療費負担増による家計支出の増大、経済的な困窮は、患者のみならず家族の健康・ウェルビーイングにも影響する可能性があります。
健康保険法改正案は今国会で成立すると見込まれ、今後、高額療養費制度の見直しに向けて厚生労働省や国会で議論が行われることになります。日本プライマリ・ケア連合学会は、政策決定プロセスには以下の視点をふまえる必要があると考えます。
私たちプライマリ・ケア従事者は、専門各科と連携し、生命・生活を脅かす疾病に罹患した人に対して、等しく最善の医療を提供し、健やかな暮らしを支援する役割を担っています。プライマリ・ケアの現場では、経済的理由により必要な治療を諦めざるを得ない患者や、治療を受けた結果として生活が立ち行かなくなる患者に日々出会っています。その立場から当学会は、今回の高額療養費制度の見直しによる自己負担増が、特に医療需要の高い患者において、適切な医療アクセスの著しい妨げになることを強く懸念しています。高額療養費制度の対象者は治療と仕事の両立に困難を抱えやすく、経済的理由で通院や治療を諦めざるを得ない状況に陥りかねません。それは生命の危機に直結します。一方、医療費負担増による家計支出の増大、経済的な困窮は、患者のみならず家族の健康・ウェルビーイングにも影響する可能性があります。
健康保険法改正案は今国会で成立すると見込まれ、今後、高額療養費制度の見直しに向けて厚生労働省や国会で議論が行われることになります。日本プライマリ・ケア連合学会は、政策決定プロセスには以下の視点をふまえる必要があると考えます。
1. 合意形成のプロセスの観点
本政策の検討において、政策や事業が健康に及ぼす多様な利益・不利益を事前に予測し、当事者同士で検討を行う、根拠に基づく政策決定(EBPM: Evidence Based Policy Making)は不可欠です。プライマリ・ケア従事者が対応する身体的・精神的・社会的いずれの健康の観点からも、本政策の影響が懸念されます。今回のような大きな政策提案を行う際には、事前に当事者を含むステークホルダーが参集した会議体を組織し、熟議を行う必要があります。
EBPMを行うための一例として、世界保健機関が国連加盟国に推奨する健康影響予測評価(HIA: Health Impact Assessment)のプロセスがあります(引用1)。実際にどの集団にどのような健康影響をもたらしうるのか予測し(例:医療利用・疾患の増悪・家計の医療費負担割合など)、合意を形成するプロセスを要望します。特に高額療養費制度の利用者において、受診抑制は治療を放棄することになり生命との関わりが大きく、どのような層において受診抑制が起こり得るかについて、当事者を含むステークホルダーが合意できるかという点は極めて重要です。
EBPMを行うための一例として、世界保健機関が国連加盟国に推奨する健康影響予測評価(HIA: Health Impact Assessment)のプロセスがあります(引用1)。実際にどの集団にどのような健康影響をもたらしうるのか予測し(例:医療利用・疾患の増悪・家計の医療費負担割合など)、合意を形成するプロセスを要望します。特に高額療養費制度の利用者において、受診抑制は治療を放棄することになり生命との関わりが大きく、どのような層において受診抑制が起こり得るかについて、当事者を含むステークホルダーが合意できるかという点は極めて重要です。
2. 社会的公正(Social Justice)の観点
社会保障制度は国民の生活と健康を守ることを目的とし、健康の社会的決定要因(SDH: Social Determinants of Health)の中でもマクロレベルの重要な一要因です。社会的に不利な立場の人々へ十分な配慮をした見直し協議を進めることで、健康格差を是正する社会的公正性の高い制度改革を実現し、制度への信頼を高めることができます。 本制度の対象者は、疾患の特性や医療費の負担により、もともと社会的に不利な立場に置かれやすいことにも注意が必要です(引用2)。
プライマリ・ケアの現場では、患者が必要なケアを継続的に受けられるよう多職種・多機関連携のもと支援を行っています。しかしそれでもなお、生活困窮等の社会的要因により、治療の継続が困難となったり、中断を余儀なくされる患者に日常的に直面しています。自己負担上限額の引き上げにより治療継続に影響を受けることが想定される患者に対しては、十分な保証および支援策を制度と一体的に整備・提供することが不可欠です。
プライマリ・ケアの現場では、患者が必要なケアを継続的に受けられるよう多職種・多機関連携のもと支援を行っています。しかしそれでもなお、生活困窮等の社会的要因により、治療の継続が困難となったり、中断を余儀なくされる患者に日常的に直面しています。自己負担上限額の引き上げにより治療継続に影響を受けることが想定される患者に対しては、十分な保証および支援策を制度と一体的に整備・提供することが不可欠です。
「必要なときに必要な医療を受けられ、生活が破綻しない」国民皆保険制度が持続可能なものでなくてはならないことに、疑問の余地はありません。 本政策の見直しにあたっては、医療費全体への配慮と共に、誰ひとり取り残されることのない医療が継続して提供されるよう、患者・市民参画、健康影響の評価、制度設計により生じうる不利益への支援策の整備などについて、多面的な議論と丁寧な検討が求められます。
当学会の会員は、プライマリ・ケアの現場で患者に直接関わる立場にあります。今後の議論を注視し、また、当事者の声を丁寧に拾い上げ、現場の医療従事者の意見を集約して社会に発信してまいります。政策立案者に現場の声を届けることを通して、より良い制度設計に貢献したいと考えます。
当学会の会員は、プライマリ・ケアの現場で患者に直接関わる立場にあります。今後の議論を注視し、また、当事者の声を丁寧に拾い上げ、現場の医療従事者の意見を集約して社会に発信してまいります。政策立案者に現場の声を届けることを通して、より良い制度設計に貢献したいと考えます。
<参考文献>
[引用1] World Health Organization: Health impact assessment. Overview.
https://www.who.int/health-topics/health-impact-assessment#tab=tab_1(2026年5月1日閲覧)
[引用2] 東京都福祉保健局:がん患者の就労等に関する実態調査. 2019.
https://www.who.int/health-topics/health-impact-assessment#tab=tab_1(2026年5月1日閲覧)
[引用2] 東京都福祉保健局:がん患者の就労等に関する実態調査. 2019.
2026年5月21日
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
最終更新:2026年07月31日 16時14分








