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「いま求められる【診療所】のウェルビーイング」 

1.はじめに

2024年4月から、いよいよ医師の働き方改革として時間外労働の上限規制が導入されます。しかし医師の働き方改革の一方でクリニックや診療所での医療スタッフのウェルビーイングにも注目が集まっています。今回は、診療所にいま求められるウェルビーイングについて考えてみたいと思います。

2.医療現場の特殊性

医療現場は、不確実性の高い複雑な対応を瞬時に迫られる現場です。更にその中で医療安全第一に働くスタッフのウェルビーイングを考えるという独特の難しさがあります。つまり患者のQOLや人生にとってベストな選択は何か?を常に考えて働きながら、同時に自分たちのウェルビーイングも追及しなければならない特殊な現場でもあるのです。

 また診療所においては、スタッフの人数が少ないにも拘らず、このような特殊な現場で医療安全を第一に考えながら働かなければならないわけですから、当然それぞれのスタッフに高い技量が求められます。更にスタッフが少人数なだけに人間関係がうまく行かなくなると業務に直ちに影響が出る危険性が高い現場でもあります。

3.リーダーシップの取り方と組織の成熟

ではどうしたらいいのでしょうか?まずリーダーシップの取り方から考えたいと思います。基本的にリーダーは、「スタッフを信頼する」「困った時は自分だけで解決せずスタッフに頼る」「迷った時は組織全体で議論して決定する」「可能な限りコミュニケーションを取り、そのタイミングを逃さない」という姿勢を取り続ける事が重要だと考えています。リーダーである院長とスタッフ間を結ぶサブリーダーを間に置くことも一案です。

 また、診療所という狭い人間関係の中、トップダウンで裁量権も少なく指示されることに従わざるを得ない多忙な毎日で院長とも気軽に話せる人間関係もできていない状況では、辞めたくなるスタッフも出てくると思います。それを防ぐためには、院長もスタッフも診療所に関わる全員が、お互いに気持ちよく、やりがいを持って働ける組織作りが必要です。そのためには組織を作るだけでなく(チームビルディング)組織の成熟が必須であり「スタッフが自分で考える組織作り」が重要です(チームマネジメント)。

 今までリーダーからの指示だけを実行していたスタッフが、自分なりに工夫して実行したり、自分で考え出したアイデアを他のスタッフと共同して実行したりすることで自分が働く診療所への愛着が形成され、スタッフ全員が診療所の運営に積極的に関わるようになっていくことが理想的です。しかしながらこのような組織の成熟には、「スタッフの成長」と「スタッフが意見を出しやすい環境作り」はもちろん「身分や金銭的報酬の保証」「福利厚生の充実」が必須条件になると思います。

4.終わりに

このように小さな診療所の中に、実は産業保健のエッセンスがつまっています。また、リーダーシップ・チームビルディング・チームマネジメントなどは家庭医療と親和性のある部分でもあります。先生方の家庭医の経験を生かして診療所のウェルビーイングを考えること。それがスタッフにとっても働きやすい生きがいのある職場に繋がると思います。


産業保健チーム 富田さつき

最終更新:2024年02月23日 22時09分

予防医療・健康増進・産業保健委員会 産業保健チーム

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