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【シリーズ二人主治医制②】多職種こそが、二人主治医制の鍵

はじめに

「かかりつけ医を持ちましょう」
厚生労働省は、大相撲の解説でも有名なデーモン閣下を起用して、「上手な医療のかかり方」というキャンペーンを行っています。

その中のQ&Aでは、「いつも大きな病院に受診する」方に対して、「身近なかかりつけ医に相談する」よう勧めています。身近に相談しやすい医療機関を持つことで、患者にとっては医療アクセスの向上が、大病院にとっては過重労働の緩和が期待できる、win-winな状況を作り出すためのキャンペーンです。

 しかし、実現にはいくつかのハードルがあると思います。そのうちの一つは、大きな病院が忙しすぎることです。

二人主治医制を妨げるもの〜病院外来の忙しさ〜

大病院への患者の集中、負担の集中は大きな問題となっています。解消のために、病院は地域連携室を設置し人員を配置することで、患者が早期に地域の中小病院や施設、自宅へと退院できるよう仕組みを構築しています。しかしこれらの仕組みが対象とするのは、主に入院患者。外来患者への対応までは、手が回りません。では外来患者を地域の中小医療機関へと誘導する役割は、誰が担っているのでしょうか。

 これは、外来に出ている各医師に任されているようです。しかしただでさえ忙しい病院の医師が、患者に説明し、紹介状を書く時間を確保するのは大変なことです。そして苦労して地域に返したはずの患者が、「悪化したのでまたこちらでお願いします」「やっぱり不安で、先生に診てもらいたいです」と帰ってきたら。苦労して紹介しようとする気持ちも、折れるのではないでしょうか。時間を割いて地域へ返すよりも、自分で診た方が早い、と。

 これでは、外来患者の地域移行は進みません。対応策はあるのでしょうか。

多職種こそが、二人主治医制の鍵

こんな事例を聞きました。糖尿病で大学病院に通院している患者さん。服薬のアドヒアランスが低くなり困っていました。担当のプライマリ・ケア認定薬剤師が自宅に訪問すると、認知機能や身体機能の低下、二人暮らしの配偶者との関係性など、糖尿病科の医師には相談しづらいが、服薬に影響を与える様々なものが見えてきました。そこで担当薬剤師から大学の医師に、地域にかかりつけ医を持ってもらうよう提案したとのことです。

 私は、地域や院内の多職種こそが、この問題を解決するキーパーソンだと感じています。医師という少ない資源で対応するのではなく、外来の受付、看護師さん、院内外の薬剤師さん。ケアマネージャーや介護スタッフ、リハビリスタッフ。様々な職種が、「この人は地域にかかりつけ医を持っておいた方がいい」と感じる瞬間があるはずです。それを医師にフィードバックし、患者にも説明することができれば。病院医師の負担を減らしながら地域に外来患者を返していく、そんな仕組みが構築できるはずです。

地域のプライマリケア医と病院のセカンダリケア医が、協力して患者のケアと治療にあたる二人主治医制。この構築は、お互いの医師だけで行えるものではありません。それぞれの院内スタッフ、地域の医療介護福祉専門職。行政やメディアの協力。そして何より、そこで暮らす住民の理解。そのどれ一つが欠けても、達成できないものだと思います。

二人主治医制を知るために役にたつ資料

日本中の様々な地域で、取り組みが今も行われていると思います。私自身も、先輩や仲間と協力し、いくつかの広報ポスターや動画を作成してみました。ぜひ、ダウンロードしてご活用ください。
  • https://www.primarycare-japan.com/pics/news/news-784-1.png
  • https://www.primarycare-japan.com/pics/news/news-784-2.png
  • https://www.primarycare-japan.com/pics/news/news-784-4.png
  • https://www.primarycare-japan.com/pics/news/news-784-5.png
また、二人主治医制について知ることのできる簡単な動画も作成しました。
大きな病院に通院している患者さんが地域にかかりつけ医を持つことの意義
どのような医師が地域のかかりつけ医として向いているか、などを知ることができます。

最後に

最後に、望みが叶うための小さなおまじないでこの話を終えたいと思います。ドイツには、「願いが叶うように」「幸運を祈る」「頑張れ」といった意味を込めて、両手で握り拳を作り机を3回叩きながら、このおまじないの言葉を唱えるそうです。NHKのEテレでも紹介されていましたね。では、みなさんご一緒に。

toi, toi, toi!

最終更新:2024年04月17日 19時01分

在宅医療委員会

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