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在宅医療
【シリーズ二人主治医制①】二人主治医制〜入門編〜
現在の我が国における主治医機能の問題について
高齢化の進展に伴い、複数の慢性疾患や障害を抱える患者が増加している。複数の医療機関や診療科にかかり、それぞれの医師を主治医として認識している患者も少なくない。しかし、各疾患に対する主治医はいても、全体の舵取りや在宅医療にも対応するプライマリ・ケア担当の主治医がいない、という患者も多く存在する。この問題は、新型コロナウイルスのパンデミックを契機に一気に顕在化し、主治医機能についての議論が加速することとなった。診療所や中小病院において主治医機能を持ったかかりつけ医が、在宅医療を含めて継続的かつ全人的な医療を提供することが期待されている。
総合病院の立場で視ると、病院の臓器別専門医が、がん・認知症・慢性疾患・通院困難患者などの主治医機能を担い、かかりつけ医が全く関与していない例が存在する。この場合、多忙を極める病院専門医が、専門外領域、多疾患併存、急性疾患の対応のみならず、介護問題や在宅医療への移行など患者に起こりうる全ての問題に対応することは相当な負担である。患者側の通院負担や包括性においても弊害が生じるだけでなく、医療から生活の視点が抜けやすく在宅医療へのスムーズなケア移行が阻害される恐れもある。病院への通院が困難になった、あるいは病状進行によりBSC方針となった、などのタイミングでの紹介では遅く、より早期からかかりつけ医が関わるメリットは大きい。病院医療と在宅医療、そして病院専門医とかかりつけ医の間に分断を生じさせず、適切なタイミングでの介入やケア移行を実現させるために「二人主治医制」が推奨される。
総合病院の立場で視ると、病院の臓器別専門医が、がん・認知症・慢性疾患・通院困難患者などの主治医機能を担い、かかりつけ医が全く関与していない例が存在する。この場合、多忙を極める病院専門医が、専門外領域、多疾患併存、急性疾患の対応のみならず、介護問題や在宅医療への移行など患者に起こりうる全ての問題に対応することは相当な負担である。患者側の通院負担や包括性においても弊害が生じるだけでなく、医療から生活の視点が抜けやすく在宅医療へのスムーズなケア移行が阻害される恐れもある。病院への通院が困難になった、あるいは病状進行によりBSC方針となった、などのタイミングでの紹介では遅く、より早期からかかりつけ医が関わるメリットは大きい。病院医療と在宅医療、そして病院専門医とかかりつけ医の間に分断を生じさせず、適切なタイミングでの介入やケア移行を実現させるために「二人主治医制」が推奨される。
二人主治医制とはなにか
二人主治医制とは、病院専門医と並行して、在宅医療にも対応しているかかりつけ医が早期から患者と関わり、双方が主治医として機能することを指す。がん、心不全、糖尿病、慢性腎臓病の領域においては既にこの体制がとられていることが多く、イメージがつきやすいのではないだろうか。病院専門医が「疾患に対して専門的に関わる主治医」として、かかりつけ医が「全体の舵取りや在宅医療にも対応する主治医」として、下記に示す役割が期待されている。
かかりつけ医が、急性疾患あるいは病状変化時の一次診療や、定期的な血液検査を担うことで、その結果から病院専門医を受診する必要性を判断する。待ち時間が長くなりがちな病院専門医への予約外受診を避けることができ、病院専門医の負担軽減にもつながる。また、早期からACPを意識し在宅医療の選択肢を提示しておくことで、病状に応じて外来診療から訪問診療へのスムーズな移行につなげることもできる。医療情報や患者-医師関係の継続性が担保されることで、病院専門医からかかりつけ医に主治医機能が完全移行する際に患者が抱きがちな「見捨てられ感」が軽減することも期待される。医療介護連携のリーダーとして多職種連携を推進させることで、患者が住み慣れた地域で療養継続できるようになる。
実際は、患者の意向を汲みつつ、患者の状態や疾患軌道、地域特性を考慮しながら両者の役割分担や主治医機能のウェイトは変化しうる。医療の視点だけでなく生活の視点も取り入れ、患者の人生を豊かにする目的において、双方の主治医が両輪のように協調して機能する二人主治医制の意義は大きい。
病院専門医=疾患に対して専門的に関わる | かかりつけ医=全体の舵取りや在宅医療に対応する |
・定期的に専門外来を受診することによる当該疾患に対する専門的治療(方針決定や説明を含む) ・病状変化への対応(かかりつけ医からの要請による緊急受診や入院を含む) ・定期的な血液検査 | ・病院専門医を受診する必要性・緊急性の判断 ・感冒、発熱などの急性疾患の一次診療 ・併存疾患の日常的管理 ・療養生活へのアドバイス、ACP ・在宅医療という選択肢を早期から提示 |
かかりつけ医が、急性疾患あるいは病状変化時の一次診療や、定期的な血液検査を担うことで、その結果から病院専門医を受診する必要性を判断する。待ち時間が長くなりがちな病院専門医への予約外受診を避けることができ、病院専門医の負担軽減にもつながる。また、早期からACPを意識し在宅医療の選択肢を提示しておくことで、病状に応じて外来診療から訪問診療へのスムーズな移行につなげることもできる。医療情報や患者-医師関係の継続性が担保されることで、病院専門医からかかりつけ医に主治医機能が完全移行する際に患者が抱きがちな「見捨てられ感」が軽減することも期待される。医療介護連携のリーダーとして多職種連携を推進させることで、患者が住み慣れた地域で療養継続できるようになる。
実際は、患者の意向を汲みつつ、患者の状態や疾患軌道、地域特性を考慮しながら両者の役割分担や主治医機能のウェイトは変化しうる。医療の視点だけでなく生活の視点も取り入れ、患者の人生を豊かにする目的において、双方の主治医が両輪のように協調して機能する二人主治医制の意義は大きい。
二人主治医制が推奨される患者
二人主治医制の効果がより発揮されるのは、病院専門医にしか通院していない患者のうち、以下に該当する方たちである。
上記に該当する患者は、療養において既に様々な問題を有しているか、今後抱える恐れのあるハイリスク集団と言える。その対象を早期からピックアップし、早期にかかりつけ医につなげる必要がある。そのためには、まず患者に対して二人主治医制の利点について理解を求めるとともに、病院医師、外来及び地域連携看護師、MSWへの周知・啓発が必要である。さらに、地域の訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所、地域包括・在宅介護支援センターに対しても周知・啓発を行い、地域全体で取り組む必要がある。
・80歳以上 ・独居、または高齢者のみの世帯 ・通院困難になってきた ・複数の診療科に継続受診している ・介護保険の申請を検討している ・訪問看護指示書を病院医師が発行している ・認知症のため療養指導や服薬管理が理解、実行できない ・1年以内に死亡しても驚かない(サプライズクエスチョン) |
上記に該当する患者は、療養において既に様々な問題を有しているか、今後抱える恐れのあるハイリスク集団と言える。その対象を早期からピックアップし、早期にかかりつけ医につなげる必要がある。そのためには、まず患者に対して二人主治医制の利点について理解を求めるとともに、病院医師、外来及び地域連携看護師、MSWへの周知・啓発が必要である。さらに、地域の訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所、地域包括・在宅介護支援センターに対しても周知・啓発を行い、地域全体で取り組む必要がある。
最後に
在宅医療を推進していく上で、病院専門医のみに通院し地域にかかりつけ医を持たないことは不利益が多い。病院主治医と、全体の舵取りや在宅医療にも対応するプライマリ・ケア担当の主治医の両者が協働して「二人主治医制」を実践していくことが患者に最大の利益をもたらすと期待している。
最終更新:2024年04月14日 15時38分