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世界の潮流の変化

1月20日、米国でトランプ大統領が第2期をスタートさせました。8年前からの第1期政権での不安定な政治情勢の記憶が鮮明な我々としては身構えてしまう流れではありますが、これも米国民の選択ですから受け止めるしかないとも感じています。ただ、初日からの数々の大統領令の中で我々の立場から特に気になるのは、DE&I(多様性、公平性、包摂性)へのあからさまな攻撃的な姿勢、そして地球温暖化を防ぐためのパリ協定からの離脱を宣言したことでしょうか。もちろん、不法移民に対する強引な排斥の姿勢も見逃せません。
私たち、日本プライマリ・ケア連合学会では数年にわたってDE&Iの取り組みを強化してきました。健康格差に潜む社会的な決定要因の存在とそれに対する介入の重要性、また、男女の格差はもちろんのこと、性的マイノリティの方に対する医療者としての適切なアプローチの重要性の理解とその啓蒙など、簡単に進められることではありませんが、学術大会などで繰り返し取り上げ、いくつかの宣言で内外にアピールを続けてきました。地球温暖化についてもプラネタリーヘルス委員会を設立し、昨年はプライマリ・ケアにおける気候非常事態宣言(浜松宣言)を発出しました。こうした姿勢について欧米の先進的な取り組みから学ぶことは多いのですが、日本に対する政治的、文化的な影響力の大きなアメリカのトップが示す姿勢は実に残念なことであり、日本においても懐疑的な姿勢を持つ方の主張を強化することにつながらないか心配もあります。加えて、欧州でもドイツやフランスで極右政党が議会で議席を増やす動きもあるようですから、トランプ現象が飛び火していく危険性も高まっていると思います。世界は大きな挑戦の時期を迎えています。
とは言え、フランス革命の時も革命から反革命、そして一時的な帝政などと激しく変化し、社会制度には揺り返しがつきものです。最終的には民主主義や自由と平等という理念は21世紀に至るまで失われていません。人間社会はコンピューターと異なりアーチファクトがなくなることはなく、むしろそこから新たな希望が生まれることすらありますので、我々は慌てずに今までの姿勢をしっかり保ちながら前進していけば良いのだと思います。
これから数年の世界の潮流の変化を見定めながら、日本の現場でプライマリ・ケアをしっかり進めて参りましょう!

草場鉄周

最終更新:2025年02月03日 17時58分

「プライマリ・ケア公式WEB」 編集担当

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「プライマリ・ケア公式WEB」 編集担当

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