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特別編!吉田国際委員長のWONCA2026(世界家庭医機構)アジア太平洋地域大会 現地参加レポート

皆様、こんにちは。国際委員会 委員長の吉田伸です。

2026年3月25-27日、フィリピン・イロイロシティで開かれたWONCAアジア太平洋地域大会に参加して参りましたので報告します。

WONCA(世界家庭医機構)は、1972年に発足した家庭医療の国際学術組織で今年50周年を迎えます。
アジア地域太平洋(APR)学術大会について、昨年は韓国・釜山で開催され、多くのJPCA会員が活躍しましたが、
今年はフィリピンの中心にあるパナイ島最大の都市、イロイロシティでの開催となります。
私が福岡から4時間半のフライトで夜中のイロイロシティに着くと気温は25度を超えていました。ホテルで一泊し、3km歩いて学会会場に行きますと汗だくでした。
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開会セレモニーでは、伝統楽器の演奏のもと華やかな現地舞踊の披露があり、続いて開会の儀式が行われました。
冒頭のフィリピン大統領からのメッセージでは、フィリピンのプライマリ・ケアと家庭医療専門医たちへの期待が語られました。
今回の大会テーマは、「Family Physicians are Gifted to Give(家庭医は与える才能を持つ)」です。
世界中でフィリピン人が知られる温かなケアと共感、すなわち「パグリンガップ(Paglingap)」に根ざしたフィリピン人のアイデンティティを反映しています。この文化的価値観は、フィリピンの家庭医が、思いやりに満ち、患者中心で、家族を重視し、地域社会に根差したケアを提供できることを示しています。そしてこれは、フィリピン家庭医学の先駆者であるDr Zorayda Leopando(写真1)に触発された遺産です。ちなみにDr Leopandoはフィリピンの家庭医たちやWONCAの古参メンバーから愛称のDadaと呼ばれ、『家庭医母さん』といった雰囲気で慕われています。
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    写真1)Dr. Zorayda Leopando

続いて、大会長のDr Karin Estepa-Garcia、フィリピン家庭医療学会会長Josefina Isidro-Lapeña、WONCA APRの会長Dr Brian Chang(台湾)、WONCA Worldの会長であるDr Viviana Martinez-Bianchi(米国)、そして現在はWONCA APRの次期会長へと選出されたDr Aileen R. Espina(フィリピン)の挨拶へと続きました。(写真2)。
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    写真2)開会式 WONCA APR次期会長 Dr Aileen R. Espina(フィリピン)

Dr Zorayda LeopandoとDr Aileen R. Espinaは公式晩餐Gara DinnerのファッションショーでもPowerful and Beautiful !!
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Wes Fabb Oration受賞講演 Dr. Donard Liによる From Birth to Wisdom: The Healthy Ageing of Family Medicine

Wes Fabb Orationとは、WONCA APRが模範的な卓越性とリーダーシップを示し、地区内の家庭医療と総合診療の発展に貢献した家庭医に授与する最高の称号です。今回は4年ぶりの受賞者として、香港家庭医療学会会長およびWONCA会長を歴任されたDr. Donald Li が選出され、受賞講演を行いました(写真5)。
3年前に香港における高齢者医療政策の評議会長に就任されたDr Liは、アジア太平洋の多くの文化において、高齢者はただ大声をあげるものではなく、むしろ声を鎮めるものであり、記憶を運び、懐古的でも保守的でもなく地に足のついた現在地を示す存在であると語ります。そして、そこから家庭医にとっての成熟とは、医療のデジタル化、利益取引化、分断、気候変動、そしてバーンアウトと、いかなる社会変化があっても落ち着きと誠実さを保ち、患者、血族、コミュニティに対するCovenant(誓約)を貫くことであると説かれました。すばらしい名講演であるため、ぜひ興味のある方は全文を読み込んでみてください。

Wes Fabb Oration 2026: Dr Donald Li 全文
https://www.globalfamilydoctor.com/News/WesFabbOration2026DrDonaldLi.aspx
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    写真5)Dr. Donald Li によるWes Fabb Oration受賞講演

Young Doctors Movement (ラジャクマール運動)の広がりとJPCA会員の活躍

さて時計を少し戻しまして、プレカンファレンスではWONCA APRの若手医師運動(Young Doctors Movement : YDM)であるラジャクマール運動(The Rajakumar Movement : TRM)の企画が終日行われていました。
2014年から2018年にかけて、私は2代目の代表として相棒の今藤先生とこの運動を率い、当時のアジア太平洋の家庭医たちと共に各国2名の代表制度と選挙制度をつくりました。WONCAは世界的にYDMを推奨しており、アジア太平洋のTRMからも多くの学会リーダーが輩出されています。我々の時代から4回の執行役員の交代を経て、今回はご当地フィリピンからDr. Michael Angelo Artezaが代表に選出され、TRMはますます盛り上がっています(写真6、7)。
今回日本からは奈良県立医科大学の佐和先生と北海道家庭医療センターの前田先生が日本代表に就かれ、日本の若手医師の現状を報告し、またきたるWONCA世界大2029京都の告知もしてくれました(写真8)。これからもYDMがつくる家庭医の未来を応援します!
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    写真6)YDMのプレカンファレンス。Dr. ArtezaのTRM代表就任挨拶
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    写真7) TRM代表のDr. ArtezaはGala Dinnerのファッションショーでも活躍(右)
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    写真8) YDMプレカンファレンスにおける佐和先生からの日本の報告
また、本学会も多くのJPCA会員が発表し、成果を上げました。前述の日本のYDM代表のひとり、前田先生は、今回初めての企画となる家庭医療クイズ大会に参戦し、善戦をしました(写真9)。

研究結成果やテーマをもとに政策提言を行うResearch Policy Pitchコンテストでは、専門医の部でまどかファミリークリニックの加藤先生が在宅緩和ケアの政策提言を発表され、見事優勝されました(写真10、11)。他にも語り尽くせぬほどのJPCA会員による様々な発表があり、当日はオープンチャットで連絡をとりながら相互に声援を送りました。
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    写真9) クイズ大会後の前田先生と指導医の佐藤先生
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    写真10、11) Research Policy Pitchコンテストで優勝された加藤先生
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WONCA APR Book 発刊を期して、日本の家庭医療の発展と未来を井上副理事長が講演

3日目朝の基調講演では、2026年9月に発刊予定のWONCA APR Book の執筆者によるパネルディスカッションが開催されました。オーストラリア、フィリピン、台湾の素晴らしい講演のあとで、JPCA副理事長の井上先生が日本の家庭医療のこれまでと現状について発表されました(写真12、13)。
20分弱のプレゼンテーションは、永井友二郎先生が説いた実地医科の理念から始まり、学会の統合と専門医制度の年表、現在の各専門医数と会員数、新家庭医療専門医がWONCA Accreditationの認証を受けていること、日本の高齢者医療や医学教育・研修の課題、国際的なリーダーである伴先生と葛西先生のWONCA終生名誉会員の受賞、プラネタリーヘルスや学術誌の取り組み、そして『2029京都で会いましょう!』の呼びかけと、大変密度の濃い発表でした。
日本の現状と展望を語るに非常に良い内容であり、ビデオを撮影しなかったことが悔やまれました。ぜひみなさま今年9月発売予定のWONCA APR Bookを手に取っていただき、日本のみならずアジア太平洋各国における家庭医療の発展と展望を知っていただければと思います。
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    写真12,13)井上副理事長による日本の家庭医療の発展と未来についての基調講演
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JPCAの隠れた努力。WONCA世界学術大会京都2029のプロモーション

昨年9月にポルトガルのリスボンで開催されたWONCA世界大会リスボンの評議会において、2029年のWONCA世界学術大会の開催地が京都に決まりました。従いまして今回のWONCA APR Iloiloでも、JPCA一丸となっての地道な広報活動や支援を頂くための関係づくりをしてきましたのでご報告いたします。
まずは大会運営本部に要請して、広報ブースをつくってもらうことができました。メイン開場のすぐ前という好立地、そして参加者が、「日本いいね、京都いいね」と口々に語ってくださる日本人気により、用意したスモールギフトはあっという間になくなりました。したがって後半はブースの前で参加者と一緒に写真を撮るなどして、草の根の外交活動に励みました。
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    写真14-16) 会場内WONCA2029京都ブースでの広報活動
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ところで会員の皆さんは、意外にも海外学会のほうが自国の仲間とじっくり話せたという経験はありますでしょうか。
そんなWONCAでの学会員同士の親睦を深めるため、JPCA主催の公式ディナー、JAPAN NIGHTをここ数年開催しております。ところが今回のJAPAN NIGHTは趣を大きく変え、多くのWONCA world およびAPRの執行役員を招いての宴となりました。目的はもちろん、WONCA2029KYOTOを応援してもらうためです。私は理事長より英語で要人のお名前と所属、ご紹介をする司会を仰せつかり、大変緊張いたしましたが、事務局の蔵下氏とも準備をして、長くお世話になっている方々も、新しくリーダーとなられた方々にも寛いでご歓談いただき、そして京都大会への期待と協力のお言葉を頂くことができました(写真17)。
京都大会はWONCAにとっても初のPCO方式(Professional Congress Organizer:国際会議運営会社による運営)の導入となり、WONCAとJPCAでどのようなレガシーを残すか、たくさんの可能性が試されることとなります。
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    写真17) Japan Night でWONCA執行役員や海外ゲストをお招きして

まとめ。日本が手堅い活動を続けることの大切さと 今後のWONCA2029京都に向けて

ここまでレポートをお読みくださりありがとうございました。会員のみなさんも心を痛めているかと思いますが、今ニュースをみておりますと世界中に多くの衝突と混乱が起きています。
しかし家庭医療の分野では、今回のWONCA APR Iloilo大会でもJPCA会員が多くの活動や発表で活躍し、そして学術大会の運営面でも、草場理事長、井上副理事が率いる会員たちや事務局の地道な仕事により、JPCAはアジア太平洋地区でのプレゼンスを“手堅く、真面目に"築いてきている実感を得ることができました。こういった継続的な活動により、世界の中で誰とでも話せる、誰からも学べる、誰をもお招きできる位置付けに、この日本がなっていきたいと、私も思いを新たにすることができました。そして今度は2029年6月に、日本の京都で初めてWONCA世界学術大会を開催するという明確な目標に向かって動き出すこともできています。

そこに至るまでのWONCA関連学会についてお知らせします。
- 2027年4月22-25日は香港でAPR学術大会
- 2027年11月3-7日は南アフリカのケープタウンで世界学術大会
そして今回のAPR評議会にて、2028年のAPR学術大会はマレーシアのサバで開催されることが決定しました。これら学会への参加グラントも現在企画しておりますので、またご案内をさせてください。

また、日本プライマリ・ケア連合学会では国際委員会のメンバーを中心にWONCA活動に参加しています。
オンラインで参加できるウェビナー(https://www.youtube.com/@woncaworld)、
若手メンバーの交流としてRajakumar movement (https://www.facebook.com/groups/189749157725401)があります。
また、毎回の海外学会前には、期間中にJPCA会員が交流できるようなオープンチャットの登録案内も会員メーリングリストで流しております。
こちらも参加すると大変楽しいと思いますのでぜひ。

国際委員会の委員一同、JPCA会員のみなさまとWONCAでつながり、そして2029京都に向けて盛り上げていきたいと思います。
どうぞ宜しくお願いいたします!
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    写真18)Gala Dinner の庭園にて、JPCAの今回の活動を労いつつ記念写真

最終更新:2026年04月20日 12時11分

日本プライマリ・ケア連合学会 事務局

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日本プライマリ・ケア連合学会 事務局

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