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他科/多職種インタビュー企画 福井大学医学部附属病院 救急科・総合診療部 林 寛之先生 インタビュー 第8回

他専門科や多職種のバックグラウンドを知ることで、コミュニケーションが取りやすくなったり、どのようなプライマリ・ケア医が求められているのか、研修中どのように学んでいったらよいかをイメージできるようになるため、インタビューを企画しました。

今回は、福井大学医学部附属病院 救急科・総合診療部 林寛之先生にインタビューを行いました。(全体で8回)

第8回は、「救急研修について」の内容でお話しいただきました。(聞き手:鈴木,石田,島田)

noteで読むにはこちらから↓
https://note.com/pc_senkouibukai/n/nc54e0f1a078d

⑧救急研修について

石田)

 次の質問です。研修についてですが、総合診療の研修は3ヶ月救急の研修が義務付けられていて、希望すれば自由に変更できるとなっています。先ほど2年間だけでライセンス取らせて、あとの10年間は自分で学べという話もありましたが、どういうことを考えながら学べばいいかとか、こういうことを学べば良いとか、ご意見ありますか?

 

林先生)

 今の話とちょっとズレるかとも思うけど、救急3ヶ月でも学ぶものがあって、1-2ヶ月でも学ぶことはあると思います。その人が働く所でそんなに救急の患者さんが来ないということであれば、1-2ヶ月でも学ぶことがあると思う。

 絶対3ヶ月というのは僕はこだわってないです。ただし、これからの高齢化社会において、整形内科は必ず学んでほしいなと思うし、皮膚科も学んでほしいと思う。だって地域で多いのは内科・整形・皮膚科・小児科でしょ。これを外したらダメだなと思いますけど。
 

救急だけに傾倒する必要は全くないと思う。もちろん救急は大切だけど、どの科に行くとしても直接回ることによって学べることはあるので。

加えるとしたらメンタルヘルスかな。メンタルヘルスはやっぱり大事ですよ。でもメンタルヘルスを教えてくれる精神科がなかなかいない。ディープな統合失調症なんて学んでもしょうがない。今すぐ飛び降りそうな大鬱病を診てもしょうがない。いい頃合いに外来に来るような、メンタルヘルス。鬱病や適応障害だったり、双極性障害であったり、不安障害だったり、人格障害などなど。そこがある程度きちんと見れないと、プライマリ・ケアで困るんじゃないかなと思います。そこを教えてくれる精神科は少ないですよね。そういうのがこれからは大事かなと思います。

 

石田)

 精神科も幅広くて、隔離病棟で働いている先生や手術で電気刺激する先生とか、カウンセリングがメインとか、いろいろな先生がおられます。

重度の病気なのか、薬も飲んでない軽度な状態なのかで、対応が異なるのかなと。そういった意味では、メンタルヘルスの勉強も重要だなと思いました。

 

林先生)

 カウンセリングをやっているところでしばらく短期修行すると、信頼できるところとコネクションができて良いのかな、と。

カウンセリングって、医者は時間が取れなくてなかなかできない。でもそこまでどっぷりできなくて良いので。どういうことをやっているかがわかれば、こういう人にはカウンセリングが必要だというようなフィルターにかける能力が身に付くと思います。

 自分でできないことも、必要性を判断して他職種・他科に紹介できるよう、学んで欲しいなと思います。

 

一番大事なのは逃げない医者になること、それから診断にこだわる、あとは人間力ですね。ユーモア大事ですよ。患者さんと笑えないと。死にそうじゃない限りは。

その辺りは色々な場所で、いろんな医者に学んでほしい。

 

石田)

 救急にこだわるよりは、必要な知識を自分でアップデートする姿勢が大事ということですかね。

 

林先生)

 家庭医療で、大動脈遮断バルーン挿入技術はいらないんじゃないですか。チェストチューブぐらいできても良いけど、気切もやろうと思えばできるが、電気メスとか準備しなきゃいけないから設備面で無理があるかな。現場で本当に必要なことだけで良い。

私も虫垂炎の手術やれと言われればできるけど、毎日やってる上手な外科医にやって貰う方がはるかにいい。

 

石田)

 自分で必要な知識を、アップデートしながら、教育という形で下地・仲間を作る。

 

林先生)

 短期研修も本当は、一定期間医者になってからできるといいですよね。

 6-7年目で、2-3ヶ月とか短期研修やりたくない?

 

鈴木)

 やりたいですね。

 今リハビリ科を研修やらせてもらってますけど、地域にでて必要なものが見えたところで、これやりたいということが出てきたので、本当に必要なことを勉強しているんだなということを先生が言葉にして教えてくれた感じがして。

 

林先生)

 ちょっと自慢して良い?親父だから自慢と説教は許してね(笑)。

 GGGプログラムという、総合医をふやそう、若い先生を育てようというプログラムを2021年から福井大学で立ち上げていて。

救急・総合診療科所属にならなくて良いから、その能力を身につけてもらうために、診断が困っている時に助けたりとか、短期研修の援助・調整をしたりしています。胃カメラ1-2ヶ月でいいからとか、1ヶ月でも良いから整形外科アップデートしたいなとか、ちょっとブラッシュアップしたい時に、その短期研修の給料をうちが出すんですよ。人手が足りないところに来る訳ですから、来てもらったところはラッキーってね。鴨がネギ背負ってやってくるわけだから。それで、1-2ヶ月教えながら使えるようになるわけですよ。受け入れ側も人手が充実してwin-winの関係になれるのかなと思います。

医学生や初期研修医に対しても学習の機会をこれでもかと提供しています。

 

石田)

 最後に読者(総合診療専攻医・新家庭医療専攻医)に一言お願いします。

 

若い先生たちへの一番のメッセージは、これから30年40年は、フロンティア精神が必要ということ。

総合診療は日本ではまだ確立されてないので、いろんなとこからいじめにあったり、非難にあったりすることはある。

そういうのにレジリエンスを持ってね、しなる竹のようにひゅっと立ち直る力が強い人が、総合診療領域にくるべきで、誰でも彼でも来てくださいと言わなくていいんじゃないかなと思います。

ある程度、フロンティア精神がある人が来てくれた方が、これからの40年良いプライマリ・ケアを作れる医者になれるんじゃないかなと思う。若い人の力を楽しみにしています。



一同)

 林先生、ありがとうございました!
  • https://www.primarycare-japan.com/pics/news/news-194-1.png

全8回でお届けいたしましたインタビュー記事も今回で終了です。いかがだったでしょうか? 専攻医の先生方の研修の参考になれば幸いです。また、専攻医部会は今後も様々な企画を発信いたします。よろしくお願いいたします!

最終更新:2022年10月15日 22時13分

専攻医部会

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