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在宅医療
専門性の高い病院『外来』から在宅医療へのケア移行:ベストプラクティスインタビュー ~薬剤師編
専門性の高い病院『外来』から在宅医療へのケア移行:ベストプラクティスインタビュー ~薬剤師編
専門性の高い病院外来から在宅医療へのケア移行には患者への選択肢の提示や、紹介のタイミング、紹介のされ方、そもそも病院の医師が在宅医療を知っているかなど、様々な課題があります。しかし、この時期のケア移行には課題が多いものの、地域ごとの背景が違い、簡単に解決策を提示するのは難しいです。そこで、高齢者医療・在宅医療委員会二人主治医制チームでは、アンケート調査を行い、より良いケア移行のための活動集の作成などをしてきました。今回は、地域で活発に活動されている薬剤師さんのインタビューを行いました。
インタビューをさせて頂いたのは大分県別府市で地域拠点病院の門前薬局をされている有限会社キムラ薬局の中島美紀(なかしま みき)先生です。
※ 専門職の呼称については、インタビュー時の表現を、そのまま使用しております
インタビューをさせて頂いたのは大分県別府市で地域拠点病院の門前薬局をされている有限会社キムラ薬局の中島美紀(なかしま みき)先生です。
※ 専門職の呼称については、インタビュー時の表現を、そのまま使用しております
研修会でチームになる
―この時期のケア移行が上手くいくためのポイントは何ですか?
関係性やコミュニケーションとかが本当に大事です。上手くいっているケースだと、うちの地域ではPEACE研修会に在宅医の先生が毎年講師に入っている。そうすると、ワークで話し合ったりする中でチームができる。それをそのまま実際の患者さんでもその関係性が使える。PEACE研修会はグループワークがあったりするので、そこでコミュニケーションをしっかりとれるのがいいですね。それで、その後もやりやすくなる。そして、上手くいくといいチームができる。ただ、連携の取れている病院とはうまくいく先生も、他の病院とは上手くいかなかったりもしています。
あとは、近くの病院は拠点病院で、連携をとろうという姿勢がすごく強い。そのため、在宅医の先生にどんどん声をかけてPEACE研修会に参加してもらうように、講師として呼んだりとかしています。そうやって連携する在宅医の先生を増やしていっている。私も新しい薬剤師が入ったときにはPEACE研修会に参加してもらうようにしていますね。
関係性やコミュニケーションとかが本当に大事です。上手くいっているケースだと、うちの地域ではPEACE研修会に在宅医の先生が毎年講師に入っている。そうすると、ワークで話し合ったりする中でチームができる。それをそのまま実際の患者さんでもその関係性が使える。PEACE研修会はグループワークがあったりするので、そこでコミュニケーションをしっかりとれるのがいいですね。それで、その後もやりやすくなる。そして、上手くいくといいチームができる。ただ、連携の取れている病院とはうまくいく先生も、他の病院とは上手くいかなかったりもしています。
あとは、近くの病院は拠点病院で、連携をとろうという姿勢がすごく強い。そのため、在宅医の先生にどんどん声をかけてPEACE研修会に参加してもらうように、講師として呼んだりとかしています。そうやって連携する在宅医の先生を増やしていっている。私も新しい薬剤師が入ったときにはPEACE研修会に参加してもらうようにしていますね。
薬局を取り巻く環境の変化
他で言うと、以前は薬局が入るとなっても患者さんや家族から理解が得られなかった。「薬局は玄関でいいよ」みたいな感じで。それが今はお互いに分かってくれて、ソーシャルさんや看護師さんから患者さんへの説明が変わったのか、患者さんの受け入れもすごく良くなってきている。
―ソーシャルさんたちの説明が変わってきている理由は?
長いこと付き合って、必要性を感じてくれたんだと思います。何度も連携して、その繰り返しがつながっているのかなと。
―ソーシャルさんたちの説明が変わってきている理由は?
長いこと付き合って、必要性を感じてくれたんだと思います。何度も連携して、その繰り返しがつながっているのかなと。
自院だけでなく地域単位で連携を進める
あと、薬局同士でも在宅に参加する薬局を広げようという方向にあるので、情報は必ずオープンにして伝えるようにしています。そうしないと患者さんがどんどん帰れない。私は地域薬剤師会の在宅委員会にいるので、情報をちょこちょこ共有するようにしています。たとえば、使用済みの注射は薬局で受け入れようとか。相談があったら、その病院のキーパーソンを伝えたり、付き合うときのコツを先方の許可を得て伝えている。特に失敗事例を会員さんに共有したりしていますね。
―実際にはどんな感じでやってるんですか?
他の薬局から、「この病院から在宅の指示をもらいたいんだけど、どうしたらいいかな?」みたいな相談が来るので、その時に誰に相談に行くといいかを伝えています。病院の先生の中には「訪問指示ってなに?」みたいな先生もいるので、その時に間にはいってくれる人がいるとスムーズにいく。ここまで具体的になると相談をされたときになるけど、もう少しアバウトにこの病院はここに相談にいくといいとかは、許可を得て研修会でも話をしたりしますね。
―地域の薬剤師という集団で成長するというか進む感じなのがいいですね。
それは在宅では必須かなと思っています。1か所が独占していても患者さんにとって良くないので。
―実際にはどんな感じでやってるんですか?
他の薬局から、「この病院から在宅の指示をもらいたいんだけど、どうしたらいいかな?」みたいな相談が来るので、その時に誰に相談に行くといいかを伝えています。病院の先生の中には「訪問指示ってなに?」みたいな先生もいるので、その時に間にはいってくれる人がいるとスムーズにいく。ここまで具体的になると相談をされたときになるけど、もう少しアバウトにこの病院はここに相談にいくといいとかは、許可を得て研修会でも話をしたりしますね。
―地域の薬剤師という集団で成長するというか進む感じなのがいいですね。
それは在宅では必須かなと思っています。1か所が独占していても患者さんにとって良くないので。
二人主治医制は必要。そしてそれを大きいところから言って欲しい
―薬局で働いていて、二人主治医制*1が必要だと感じる、困っている人って結構いますか?
結構いると思います。特にうちは大きな病院の門前なんですけど、広域で患者さんを受けているので、遠方から来てたりします。すると、訪問看護さんから連絡が来て、便秘したりとかで薬が必要なときがある。でもここにしかかかってないと、わざわざ来ないといけなくなる。あとは、パーキンソン病の方で90日処方が出ているとか。ここぞというときは専門医でいいが、ちょっとしたお薬の調整っていうのはパーキンソン病であっても、在宅医の先生が近くで診た方が細かく調整できるので安心じゃないのかなって感じます。長期処方の理由を聞くと、遠方なのでと、来るのも大変で家族に手伝ってもらったり、介護タクシーとか。
―それは確かに難しそうですね。
そうなんですよ。だから実際、病院の先生方も難しいと思ってらっしゃる先生もいるんじゃないかと思います。病院の先生から「なにかあったら見るから普段は近所で」と言ってもらえたら患者さんも安心じゃないかな。患者さんの一番不安なところって、何かあったときにその病院で診てもらえるかだと思うので。
―そういうときに薬局はどう働きかけることができますか?
患者さんから「もう安定して、遠いからこの日数にしてもらった」とか聞くことがあります。そういったときに「地元で探したいな」っていうのは時々お話しされたりする。でも「やっぱり先生のもとを離れるのが怖い」っていうのが患者さんが良く言われる言葉の一つ。そういったときに、こういう二人主治医制というシステムを医師会や病院が推奨しているというのがあると言いやすい。
―二人主治医制が必要そうな患者さんの病院主治医に連絡することもありますか?
トレーシングレポート*2とかで伝えたりします。直接話すときも、(先生の気持ちを配慮して)遠回しに話したりしてますね。
―トレーシングレポートをちゃんと見てもらうのって難しくないですか?
大事なトレーシングレポートは病院の薬剤部の先生に伝えて、必ず見てもらうようにしています。
―これ、先生のところはできてるからいいですけど、他の薬局がどこもできているかってのが大事ですよね。ただ、難しいことも多くて、悩ましいと思うんですが。
そうなんですよね。薬剤師会の在宅医療委員に入っているのですが、どの薬局もできるようになんでも聞いてくださいと言っています。要は地域の在宅のキーパーソンを知ってる薬剤師をピックアップして、そこに聞いてくださいというのをした方がいい。そういう窓口は絶対必要だと思いますね。
結構いると思います。特にうちは大きな病院の門前なんですけど、広域で患者さんを受けているので、遠方から来てたりします。すると、訪問看護さんから連絡が来て、便秘したりとかで薬が必要なときがある。でもここにしかかかってないと、わざわざ来ないといけなくなる。あとは、パーキンソン病の方で90日処方が出ているとか。ここぞというときは専門医でいいが、ちょっとしたお薬の調整っていうのはパーキンソン病であっても、在宅医の先生が近くで診た方が細かく調整できるので安心じゃないのかなって感じます。長期処方の理由を聞くと、遠方なのでと、来るのも大変で家族に手伝ってもらったり、介護タクシーとか。
―それは確かに難しそうですね。
そうなんですよ。だから実際、病院の先生方も難しいと思ってらっしゃる先生もいるんじゃないかと思います。病院の先生から「なにかあったら見るから普段は近所で」と言ってもらえたら患者さんも安心じゃないかな。患者さんの一番不安なところって、何かあったときにその病院で診てもらえるかだと思うので。
―そういうときに薬局はどう働きかけることができますか?
患者さんから「もう安定して、遠いからこの日数にしてもらった」とか聞くことがあります。そういったときに「地元で探したいな」っていうのは時々お話しされたりする。でも「やっぱり先生のもとを離れるのが怖い」っていうのが患者さんが良く言われる言葉の一つ。そういったときに、こういう二人主治医制というシステムを医師会や病院が推奨しているというのがあると言いやすい。
―二人主治医制が必要そうな患者さんの病院主治医に連絡することもありますか?
トレーシングレポート*2とかで伝えたりします。直接話すときも、(先生の気持ちを配慮して)遠回しに話したりしてますね。
―トレーシングレポートをちゃんと見てもらうのって難しくないですか?
大事なトレーシングレポートは病院の薬剤部の先生に伝えて、必ず見てもらうようにしています。
―これ、先生のところはできてるからいいですけど、他の薬局がどこもできているかってのが大事ですよね。ただ、難しいことも多くて、悩ましいと思うんですが。
そうなんですよね。薬剤師会の在宅医療委員に入っているのですが、どの薬局もできるようになんでも聞いてくださいと言っています。要は地域の在宅のキーパーソンを知ってる薬剤師をピックアップして、そこに聞いてくださいというのをした方がいい。そういう窓口は絶対必要だと思いますね。
インタビュー者の感想
中島先生の取り組みは、一機関としての取り組みを超えて地域単位で環境を整えていこうという素晴らしいものでした。新たに参入する際には、病院や先生の特性などはわからないため、様々な困難があります。そこを中島先生のような精通した方がサポートしてくれるとありがたいし、参入障壁が下がると思います。また、グループワークの多い研修会を通して顔の見える、そして腹の見える関係になっていくというのはとても新鮮でした。今まではPEACE研修は資格を得るために必要なもので2回目を受けるという発想はありませんでしたが、中島先生の話を聞いて継続して関わっていく方法を探してみようと思いました。また、拠点病院の状況を聞いて、再度、この時期のケア移行、そして二人主治医制の重要性を再確認しました。拠点病院の先生方の困難を理解しながらともに患者さんのために働きたいと気持ちを新たにしました。
*1 二人主治医制:今回のインタビュー内では当委員会が推進している、在宅医療が必要になりそうな方が、専門性の高い病院『外来』の主治医の他にプライマリ・ケアにもかかりつけを持つことを意図しています。
*2 トレーシングレポート:保険薬局が患者から聞き取った情報をもとに、医師に提供する服薬情報提供書
最終更新:2025年02月28日 07時42分