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【論文紹介】サバイバーシップケアを切り開くプライマリ・ケア医たち

がん診療に関するプライマリ・ケアワーキンググループ(がんプラ)の水海道さくら病院総合診療科の西と申します。
今回紹介する論文は、
Hemler JR, Crabtree BF, O’Malley D, Howard J, Mikesell L, Kurtzman R, Bates B, Hudson SV.
Recent Innovations in Primary Care Cancer Survivorship Roles.
J Am Board Fam Med. 2024 May-Jun;37(3):399-408.
です。

米国の革新的なプライマリ・ケア医へのインタビュー

がん治療後のサバイバーシップケアは、いまだ多くのプライマリ・ケア医にとって“未開の領域"かもしれません。

この論文は、米国のプライマリ・ケア医ががんサバイバーシップケアにおいて担う新たな役割の実態を、10名の革新的医師への質的調査を通じて明らかにしたものです。

著者らは、プライマリ・ケア医の役割を「がんの既往をもつ患者を通常診療の中で診るGENERALISTS」から、「がんセンター内で主にがん治療の影響に対応するONCOgeneralists」まで、4タイプに分類しました(下表)。共通するのは、医師個人の努力と、現場での実践知の積み重ねでした。

サバイバーシップケアを地域に広げるために、今何が求められているのか――教育、連携、制度整備を考えるうえで、多くの示唆を与えてくれる一編です。
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    表. サバイバーシップケアにおけるプライマリ・ケアの役割(文献を元に筆者作成)

あなたのがん診療への関わりはどのタイプ?

これをがん診療全般に当てはめて考えてみると、

診療所セッティングでは、一般的ながんの診断・治療・サバイバーシップケアに関する知識を持ち、他の慢性疾患と同様にがん診療に関わり(GENERALIST+)、がんへの関心が高いPC医はがんにフォーカスしてより複雑なニーズに対応できる知識を持つ(oncoGENERALISTS)ということになります。

病院セッティングでは、がん治療医と連携しながら急性期のがん患者のニーズにも対応し(ONCOGENRALISTS)、さらに一定期間専門的な研修を積み、PCの視点を活かしながらより主体的にがん診療に関わる(ONCOgeneralists)という役割もあるでしょう。

「がん患者を地域で支える社会」の実現に向けて

がん患者を地域で支えていくためには、全てのPC医がGENERALIST+の役割を果たせるのが理想的ですが、そこには様々な障壁があります。乗り越えるためにはPC医向けの学習リソースの充実、診療支援ツールの導入、がん専門医とのネットワーク構築、そして何よりもがん診療に積極的に関わろうという意識付けが必要だと考えます。

筆者らが所属するがん診療に関するプライマリ・ケアワーキンググループでも学術大会での教育講演やシンポジウム、ブログ配信などを通して課題解決に取り組んでいます。6月の学術大会でも以下のセッションを企画しています。
  • https://www.primarycare-japan.com/pics/news/news-1274-4.jpg
詳しい内容は後日ご紹介させていただきます。どうぞお楽しみに!

最終更新:2025年05月02日 11時49分

がん診療に関するプライマリ・ケアWG

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