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第13回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 学生セッション 受賞者インタビュー Vol.3 <口頭発表の部 最優秀賞 > 大分大学医学部

2022年6月11日(土)~12日(日)パシフィコ横浜で開催された、第13回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 学生セッション。口演発表(研究)8エントリー、ポスター発表(活動紹介)18エントリーの中から、各部門で受賞された発表内容をご紹介します。

口頭発表の部 最優秀賞

メタボリック症候群や体重増加と逆流性食道炎の関係について

##受賞内容
 口頭発表の部 最優秀賞   
##演題名
 メタボリック症候群や体重増加と逆流性食道炎の関係について
##大学
 大分大学医学部
##発表者名
 松原 淳之介さん(大分大学医学部5年)
##指導者名
 塩田 星児先生(大分大学医学部附属病院 総合内科・総合診療科/大分大学医学部附属地域医療学センター准教授)


大分大学では、4年生が各医局の講座に配属となり研究を行う研究室配属が行われています。今回、発表を行った松原さんは、総合診療・総合内科講座に籍を置き塩田 星児先生指導のもと、大分県地域成人病検診センター(現おおいた健診センター)で上部消化管内視鏡検査を行った受診者データから、逆流性食道炎とメタボリック症候群や体重増加との因果関係について発表。秀逸なデータ解析や考察が評価され、口頭発表の部で最優秀賞を受賞しました。
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注目したのは、体重増加と逆流性食道炎との因果関係

今回、取り組んだ研究背景として、近年の研究では年単位での体重増加がNAFLD(非アルコール性脂肪肝)と関係していることは報告されています。しかし、現時点での肥満だけではなく長年の肥満や経時的な体重増加がその他の消化器疾患と関係している可能性が考えられるものの、その因果関係については十分に解明されていませんでした。

そこで、この10年の体重増加や肥満になったことが逆流性食道炎に関連しているかについて検討を行いました。方法としては、2019年1月1日から12月31までに、大分県地域成人病検診センターで上部消化管内視鏡検査を行った受診者2,748名を対象とし、年齢、性別、身長、体重、腹囲、10年前の身長・体重・腹囲・血圧・喫煙歴・飲酒歴・血液検査項目(血糖値、脂質)、上部消化管内視鏡所見のデータ項目からSPSSを用いた解析方法で実施しました。考察として、この10年で肥満になった人は、肥満にならなかった人と比べて、逆流性食道炎と優位に関係していることがわかりました。また、10年前にBMIも腹囲も正常の群で逆流性食道炎を認めた人は、体重、腹囲、BMIとその増加量も逆流性食道炎を認めない群に比べて大きい傾向にありました。
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つまり、肥満になったことが逆流性食道炎のリスクになっていると考えられ、また過去に肥満があっても正常体重に戻すことで、逆流性食道炎を予防できる可能性について学術大会で発表しました。

何千件もの膨大なデータをまずはエクセルを使って分析

研究では、先生からテーマとデータを提供していただき、それをまずは数値化していくことからスタートしました。1年生の時に統計の授業がありましたが、基礎的な知識しかなく、データをどう分析するのか、見ていくのかということも学びたかったことのひとつでした。実際にやってみて、エクセルの使い方から始まり機能を理解し使いこなせるまでが大変でしたが、発表の場では色んな質問が飛んでくると思ったので、まずはデータとしっかり向き合い、かみ砕いて理解することに注力しました。

その後、統計ソフトを使うようになったのですが、この値が何を意味しているのか、何がわかるのかというところ考え見立てていくことも結構大変でした。自分の中で仮説を立てながら先生にご意見をいただき、さらに考察を加えていくという流れで形にしてくことができました。
―塩田先生もそこはあえてエクセルを使うようご指導されたのですか?

統計ソフトを使えば一瞬で終わることもたくさんありますが、データを見つめないと見えてこないものもあるので、あえてエクセルで計算を色いろとやってみてもらいました。ひとつひとつのデータを見ている時間がとても長くて、松原君自身はそこが一番大変だったのではないかと思います。

学内での発表からさらにブラッシュアップして学術大会へ

学術大会の前に、学内で発表する機会があったので、そこでの反省点や改善点も資料に反映することができました。学内での発表時間は7分間でしたが、自分の言いたいことを伝え切れていなかったり、一番言いたいことを伝えるためのデータの提示方法にも改善点があり、結果的に質疑応答でも詰まってしまう場面もありました。学会での発表は専門の先生が集まってこられますし、学内発表よりも質疑応答の時間が長いので、学内発表の反省をもとに総合診療科の先生にスライドの添削や発表のデモンストレーションから、たくさんご意見やアドバイスをいただきました。
―当日の発表は松原さんとしての点数は何点ですか?

緊張していたこともあり、質問者に対して100パーセント理論が通った答えではなかったなと振り返って思うところもありましたが、完全に答えられなくて詰まるようなことはなかったので…80点くらいかなと思います。
―塩田先生からご覧になって、何点くらいでしたか?

100点だったと思います。質問にもしっかり答えられてしましたし、学内発表での経験も大きく影響したと思います。何より自分たちが解析した結果だけではなく、他の論文ではどう論じられているかといった、結果に対するバックグランドを考察の部分に反映したことでさらに磨きがかかったと思います。
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    賞状を手に松原さん(右と)と塩田先生(左)

若い先生たちが活躍する日本プライマリ・ケア連合学会

学生という立場で学会の全国大会に出られる機会はなかなか巡ってこないと思うので、今回参加させていただいたことは非常に有意義な体験でした。総合診療科の先生も発表されていましたが、堅苦しい雰囲気が一切なかったのもとても印象的でした。総合診療科が新しい分野なのは理解していましたが、研究の分野においてもできることがたくさんあり、非常に若い先生も活躍されていることが知れたのもよかったです。

松原 淳之介さんが将来目指したいこと

将来、もし大分県で働くことが決まった場合、総合診療に携わることがあるかと思いますが、今回の経験を糧に様ざまなテーマで研究も行っていきたいです。そういった意味でも、今回総合診療科に属して、学会で発表させていただける機会に恵まれとても有意義な経験となりました。

最終更新:2022年12月19日 16時38分

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