【開催報告】2023年度ポートフォリオ研修会と発表会について

プライマリ・ケア認定薬剤師の更新には、5 事例のポートフォリオが必須となっています。毎年、ポートフォリオについての研修会とポートフォリオ優秀者の発表会を開催していて、今年度も3月3日（日）開催いたしました。
参加していただいた、プライマリ・ケア認定薬剤師の小川克己先生に開催報告を書いていただきました。
とても素敵な開催報告です。是非是非お読みください！

2024年3月3日に開催されたプライマリ・ケア認定薬剤師研修会 「ポートフォリオ研修会＆発表会」 に参加しました。これはプライマリ・ケア認定薬剤師更新のために提出されたポートフォリオの優秀事例の発表会と表彰式で、例年この季節に開かれる、いわばプライマリ・ケア薬剤師の風物詩です。コロナ禍以降はオンラインによる研修会となりましたが、今年も100名を越す多くの方が参加されました。

午前はポートフォリオって何？どうやって書くの？書くための約束事やコツは？などを広島市立広島市民病院総合診療科の佐藤只空先生にご講義いただきました。佐藤先生はお坊さんもされていると自己紹介され、プライマリ・ケアには宗教観が必要だと思っている私はすごくワクワクとしました。

講義は、ポートフォリオとは写真家やデザイナーが「こんな仕事が出来ますよ」とまとめた作品集である、という説明から入ります。ただし私たちが書くポートフォリオは自身の省察を含む学習の記録であり、それを書く「我々は“対人関係専門職"である」という前提条件が示されます。巷では “薬剤師業務の対物から対人へシフト“と叫ばれている中、プライマリ・ケア薬剤師は既にそれを越えた集団であると思いました。佐藤先生の講義はポートフォリオの森の奥へ進んでいきます。対人関係専門職は省察的実践家と技術的熟達者の2つの側面をもち、それぞれをアライグマとジャイアントパンダに例えられ・・なるほど！そして省察的とは？どのように省察するのか？をグループワークを交えながら講義は森というより樹海の中に入ります。それもそのはず、「成人学習者は（実践的試み⇒具体的経験⇒省察的観察⇒抽象的概念化を）螺旋状に学習を重ねていく」と、出口がないのです。

グループワークでは、ポートフォリオを書くにあたってのアイデアや困りごと、要望を持ち寄りました。事例のピックアップについて様々なアイデアが出ました。一歩踏み込んだ症例、心が動いたこと、トレーシングレポート、地域での活動、自分や家族のこと、常に領域を意識する等々、中には「できたこと・できなかったこと・感情・next step」の表を小さくコピーして持ち歩いている、というツワモノも。参加者の意識の高さに圧倒されました。多くの人の悩みごとに、薬剤師は医師の様に指導医-専攻医という関係がなく指導を受ける場がないという声が多かった一方で、学会の支部で相談会をやっている、会社やで取り組んでいる、という報告もありました。過去に提出されたポートフォリオを公開してほしいという複数の意見、これは私も前々からそう思っていました。AIが書いてくれると良いな、という今どきの意見もありました。

小林先生は、講義の締めくくりとして「良い仕事をまとめたものがショーケースポートフォリオ」とお話しされ、何だか空が見えた気がしました。

午後は薬剤師ポートフォリオの領域AからJで一題ずつ優秀ポートフォリオの発表がありました。資料が事前に配布されていましたが、報告者が思いを込めて口頭で発表すると体温が伝わってきます。どれも特別な出来事を挙げたわけでなく、日常の業務を薬剤師らしい視点で深堀し、丁寧に仕事をされたことが伝わってきました。ZOOM上での発言、チャットでの質問や感想が徐々に活発になっていきました。オンライン越しでの再会という微笑ましい光景もありました。参加者それぞれが疑似体験や自身の経験を合わせて省察したのではないでしょうか。ポートフォリオを通して教えていただいた細かな具体事項も沢山あります。実は発表の最中にその参考図書を思わずポチッとしました。やはりポートフォリオは書く人だけでなく読む人（聴く人）にも良い学習ツールであると思いました。

さて、今年は自分が認定更新です。ポートフォリオについて十分学びました。ボチボチと書き始めないと・・あ！計画的でないことがバレました。相談に乗って下さいね。