ホームニュースプライマリ・ケア Field LIVE!vol.52/ 「人生のすべてが力になる!家庭医として生きることの楽しさを伝えたい!」【専攻医】 斉藤聡大先生
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vol.52/ 「人生のすべてが力になる!家庭医として生きることの楽しさを伝えたい!」【専攻医】 斉藤聡大先生
今回ご登場いただくのは、亀田ファミリークリニック館山で家庭医としてのやりがいを追求している斉藤聡大先生。子どもの頃はプロ野球選手を夢見ており、その後ノーベル賞を受賞するために工学部に入学したというユニークな経歴を持つ方です。そんな斉藤先生がなぜ医師になったのかということや家庭医療の魅力についてなど様々にお話をうかがうことにしました。
病気で苦しんでいる人に手を差しのべたい
― 医師を目指すようになったのは、大学の工学部に入った後ということですが?
はい、そうなんです。私の子供の頃の夢はプロ野球の選手になることで、実際に小学校の低学年から高校3年生まで野球に明け暮れる日々を送ってきました。高校3年生になった時、受験を考えることになるのですが、さすがにプロになるのは難しいことがわかるわけですね。それで現実的な進路を考えた時に、自分は理系が好きだということに気づきました。そのタイミングで日本人がノーベル賞を受賞したニュースが流れてきて「かっこいいな」と思い、工学部に進むことにしたんです。工学部に入って研究職に就き、将来的にはノーベル賞を取るつもりでした(笑)。
― その在学中に医師になろうと思われたわけですね?
工学部で3年間を過ごしてわかったことは、研究職よりも他に興味があり楽しいことがあるのが明らかなのに、このまま卒業して就職すれば悔いが残るだろうと思い、医学部を再受験することにしました。これはその直前に祖母が病気で亡くなったことも影響しています。祖母は私のことをとても可愛がってくれたのですが、そういう大切な人でも亡くなってしまうことに虚しさのようなものを感じたんです。だったら、せめて病気で苦しんでいる人に手を差しのべて、少しでも苦しみを取りのぞけるような人間になりたい……そう思って医師を目指すことにしました。私自身、人と交流したり話をすることが好きなタイプですし、人と接する仕事は向いているはずと思いました。
― 進学先は琉球大学です。沖縄の大学に進んだ理由は?
私は出身が浜松で、大学は名古屋でした。進学しても生活環境があまり変わらなかったので、思いっきり遠くへ行ったら自分の想像を超えた出来事が起きるかもしれないという期待から沖縄を選びました。あと、テレビドラマの「Dr.コトー診療所」が好きで、島医者に憧れを持っていたことも大きかったですね。沖縄には離島がたくさんありますから。
実際に琉球大学で学んでみてありがたかったのは、地域実習の機会をたくさん与えていただいたことです。大学や県が資金援助をしてくれて、力強いバックアップ体制が整っていたんです。それで毎年実習に参加して、いろんな離島に行かせていただきました。宮古島や石垣島といった人口5万人規模の大きな島にも行きましたし、一方で、それこそ人口300人くらいの阿嘉島にも行きました。あとは伊平屋島、西表島、久米島、大東島……。1人で島医者をやってる方々に対しては、大変なことも少なくなさそうだけど、やりがいは大きそうだなという印象を得ましたね。
実際に琉球大学で学んでみてありがたかったのは、地域実習の機会をたくさん与えていただいたことです。大学や県が資金援助をしてくれて、力強いバックアップ体制が整っていたんです。それで毎年実習に参加して、いろんな離島に行かせていただきました。宮古島や石垣島といった人口5万人規模の大きな島にも行きましたし、一方で、それこそ人口300人くらいの阿嘉島にも行きました。あとは伊平屋島、西表島、久米島、大東島……。1人で島医者をやってる方々に対しては、大変なことも少なくなさそうだけど、やりがいは大きそうだなという印象を得ましたね。
いろんな病気に対応できる医師になるのが理想
― 先生が家庭医療に出会われたのは、いつ頃だったのでしょうか?
「Dr.コトー診療所」の影響を受けたという点で、プライマリ・ケアには出会っていたと言えますし、沖縄で学んだことも地域医療という面で関わりがあったと言えます。その中で「家庭医療」のことを深く知るきっかけになったのは、5年生の時の家庭医療夏季セミナーへの参加でした。
セッションの数はたくさんあったのですが、あまり深く検討している時間がなくて、目に止まったものを片っ端から選んでいった中に亀田ファミリークリニックのセッションがあったんです。それで見学に来るようにとのお誘いを頂いて足を運んだのですが、その時に思ったのが「家庭医療は面白い!」ということです。
セッションの数はたくさんあったのですが、あまり深く検討している時間がなくて、目に止まったものを片っ端から選んでいった中に亀田ファミリークリニックのセッションがあったんです。それで見学に来るようにとのお誘いを頂いて足を運んだのですが、その時に思ったのが「家庭医療は面白い!」ということです。
― どういうところに面白さを感じたのでしょうか?
先ほどもお話したように、私が医師を目指したのは、病気で苦しんでいる人に手を差しのべたいというのが動機でした。その対象は特定の人ではなく「誰でもすべて」というもので、いろんな病気に対応できる医師になるのが理想でした。その思いが亀田ファミリークリニックなら実現できるということが見学をしていてわかったんです。
例えば、子供を診ている一方で、高齢者の方々も診ている、こちらで妊婦検査をしていると思えば向こうでは透析患者さんに対応している、さらには在宅診療まで……という具合に、まさに「誰でもすべて」診ているわけです。
亀田ファミリークリニックは日本でもっとも診療領域が広いクリニックと言われていますが、本当にそんな感じで「絶対にここで学びたい!」と思いました。その時の体験から初期研修は亀田総合病院・地域ジェネラリストプログラムを受け、後期研修は亀田ファミリークリニック館山・亀田家庭医総合診療専門研修プログラムのお世話になりました。
例えば、子供を診ている一方で、高齢者の方々も診ている、こちらで妊婦検査をしていると思えば向こうでは透析患者さんに対応している、さらには在宅診療まで……という具合に、まさに「誰でもすべて」診ているわけです。
亀田ファミリークリニックは日本でもっとも診療領域が広いクリニックと言われていますが、本当にそんな感じで「絶対にここで学びたい!」と思いました。その時の体験から初期研修は亀田総合病院・地域ジェネラリストプログラムを受け、後期研修は亀田ファミリークリニック館山・亀田家庭医総合診療専門研修プログラムのお世話になりました。
私が亀田ファミリークリニックの病院見学に参加した時に、見学の世話をしてくれたのが彼女です。それが最初の出会いで、その後は初期研修医の先輩後輩として過ごしてきました。入籍をしたのは昨年(2024年)です。
夫婦揃って家庭医ということになりますが、お互いに共通点が多いので、一緒に暮らしていて心地よいです。プライベートでも仕事の話は普通にしますし、2人とも似たところがあって、楽観的な性格だと思っています。また、家庭医の傾向として患者さんの気持ちを思いやるということがありますが、それが夫婦の間でも自然に行われていると感じています。自分がこうしたいというだけではなく、相手が何をしたいのかをまず前提に考えたりといったことですね。「自分の幸せ」ではなく「2人の幸せ」を最優先にするという感じです。一緒にいて楽しいですね。
夫婦揃って家庭医ということになりますが、お互いに共通点が多いので、一緒に暮らしていて心地よいです。プライベートでも仕事の話は普通にしますし、2人とも似たところがあって、楽観的な性格だと思っています。また、家庭医の傾向として患者さんの気持ちを思いやるということがありますが、それが夫婦の間でも自然に行われていると感じています。自分がこうしたいというだけではなく、相手が何をしたいのかをまず前提に考えたりといったことですね。「自分の幸せ」ではなく「2人の幸せ」を最優先にするという感じです。一緒にいて楽しいですね。
家庭医として生きていくことの魅力
― 今後取り組んでいきたいことはありますか?
いま私が興味を持っているのは、地域コミュニティの健康増進です。地域住民の1人として地域活動にも積極的に取り組んでいるのですが、そうした交流を通じて「この地域がより暮らしやすく幸せになるために家庭医として実践できることはどんどんやっていこう!」と思うようになりました。
例えば地域包括ケアシステムであったり、多職種協働であったりとコミュニティメディスンとしていろいろな方向性があると思いますが時間をかけてそうしたことに取り組んでいきたいですね。
例えば地域包括ケアシステムであったり、多職種協働であったりとコミュニティメディスンとしていろいろな方向性があると思いますが時間をかけてそうしたことに取り組んでいきたいですね。
― 家庭医として様々に活躍できそうですね。
私が特に思うのは「人生のすべてが家庭医の力になる!」ということです。例えば野球少年として過ごした日々からはチームワークの大切さを学びました。それは多職種連携などのチーム医療の精神に活かされています。また、私は大学在学中に30カ国海外旅行をしたのですが、その経験を通じて多様性というものを肌で感じました。それに加えて、海外旅行にはトラブルがつきものですが、そのトラブルを乗り越えてきた経験は医療の現場で思いがけないことが起きた時に冷静に対応できる力になっていると思います。さらに結婚や家庭は患者さんのライフステージに思いを馳せる想像力にもつながっています。そう考えると、家庭医として生きることはとても楽しいというのが私の実感ですね。
― ご夫婦揃って家庭医ということで、後進の方々のモデルケースにもなれそうです。
私としては世の中に家庭医がもっと増えてほしいと思っていますから、家庭医同士が夫婦というパターンが今後多くなっていくことを望んでいます。その意味では家庭医夫婦として仕事と家庭をどう両立していくか、キャリアをどのように積んでいくかといったことを、自分たちの経験を通して発信できるようになればいいかなと思っています。それこそ日本プライマリ・ケア連合学会で報告できるようなところまでいけばいいですね(笑)。
亀田ファミリークリニック館山でも産休・育休を取っている方がけっこういますし、そこには私の同期も含まれます。産休・育休サポートグループもあったりして働きやすい環境を作っていこうという風土が育まれているんです。そうした活動に関わっている経験も活かしながら、家庭医として生きていく楽しさを多くの人に伝えていきたいですね。
亀田ファミリークリニック館山でも産休・育休を取っている方がけっこういますし、そこには私の同期も含まれます。産休・育休サポートグループもあったりして働きやすい環境を作っていこうという風土が育まれているんです。そうした活動に関わっている経験も活かしながら、家庭医として生きていく楽しさを多くの人に伝えていきたいですね。
プロフィール
亀田ファミリークリニック館山 家庭医診療科 フェロー
斉藤聡大
<経歴>
2020年3月 琉球大学 卒業
2020年4月 亀田総合病院 初期研修 地域ジェネラリストプログラム
2022年4月 亀田ファミリークリニック館山 亀田家庭医総合診療専門研修プログラム
2025年4月 亀田ファミリークリニック館山 家庭医診療科 フェロー
現在に至る
<資格・所属学会>
日本プライマリ・ケア連合学会
斉藤聡大
<経歴>
2020年3月 琉球大学 卒業
2020年4月 亀田総合病院 初期研修 地域ジェネラリストプログラム
2022年4月 亀田ファミリークリニック館山 亀田家庭医総合診療専門研修プログラム
2025年4月 亀田ファミリークリニック館山 家庭医診療科 フェロー
現在に至る
<資格・所属学会>
日本プライマリ・ケア連合学会
取材後記
斉藤先生が同じ家庭医である奥様と入籍を果たしたのは昨年2024年でしたが、結婚式を挙げたのは今年の5月だったそうです。挙式会場では地域住民の方々がお祝いメッセージを贈るサプライズムービーが流されたとのこと。その映像は亀田ファミリークリニック館山の同僚の皆さんが撮影したもので、出演者は普段斉藤先生が地域の活動を通して関わっている方々でした。「大げさかもしれませんが、町中から祝ってもらっている気分になりました」と斉藤先生。お祝いメッセージは斉藤先生が地域の皆さんから親しまれていることの何よりの証しと言えるでしょう。今後もその思いに応えながら、家庭医として地域のために頑張っていただきたいものです。
最終更新:2025年06月16日 21時35分