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vol.53/ 「地域の医療機関と連携しながら患者さんを支える薬局作りを!」 【薬剤師】 相馬渉 先生

今回インタビューにご協力願ったのは、プライマリ・ケア認定薬剤師の資格を持つ相馬渉先生。
青森県内で調剤薬局を展開する株式会社ファルマの取締役薬剤部長も務められている方です。
そんな相馬先生に薬剤師になったきっかけやファルマに入社した理由、プライマリ・ケアとの出会いなどについていろいろと伺いました。
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大きな規模の薬局で経験を積みたかった

― 先生はどのような理由で薬剤師を目指すようになったのですか?

もともとは医師を目指していたんです。父が内科医だったので、後を継ぐのだろうという意識があったと言っていいでしょうか。
また、祖母は薬剤師として働いていて父の診療所の隣に調剤薬局を構えていました。
そういう環境で育ったこともあり医学には関心を持っていたのですが、特に興味を惹かれたのが薬の方だったんですね。
「どうして薬は効くんだろう?」ということから始まって、薬のことを深く学びたくなり、医学部ではなく薬学部に入ることにしたんです。その結果、薬剤師になったというわけです。
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    大学最後にお友達と訪れた旅行
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― 卒業後は現在もお勤めの調剤薬局チェーンに入社されます。

ファルマは青森県内に調剤薬局を展開するローカルチェーンの企業です(2025年7月現在6店舗展開)。
私は調剤薬局といえば祖母が一人で営む小さな店舗しか知らなかったのですが、ファルマが運営する「弘前調剤センター」はスケールが違ったんですね。
在籍する薬剤師が15人ほどもいて、処方箋も1日およそ650枚を扱うような店舗でした。
その規模にびっくりしたと同時に「これだけたくさんの処方箋が扱えるなら薬剤師としてたくさんの経験が積める」と思いました。
内科や外科をはじめとして、いろんな診療科目の処方箋を取り扱うことができますから。それで入社することにしたんです。

― 入社して配属されたのが、その「弘前調剤センター」だったんですね。

はい。弘前調剤センターはファルマの第1号店で、いわば本店という位置づけです。
あらゆる診療科の処方箋に対応可能で、弘前市内の医療機関はもちろんですが、市外の患者さんもたくさん訪れます。入社して8年目で私はここの薬局長となり、5年ほど勤めてから今度は同じファルマの「藤代薬局」に異動となりました。
この藤代薬局は弘前調剤センターとは違って、精神科をメインとする薬局だったんですね。
その分患者さんの数も少なくて、近い距離で話せることが特徴でした。だから患者さんの顔もよく覚えることができました。
その後いったん弘前調剤センターに戻った後、2017年には新店の「ファルマ弘前薬局」の立ち上げに関わり、ここでも薬局長を務めました。
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    現在薬局長を務めているファルマ弘前薬局
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    地域病院の門前薬局

プライマリ・ケアとの出会いから得たもの

― 先生がプライマリ・ケアと出会われたきっかけは何だったのでしょうか?

日本プライマリ・ケア連合学会のことを知る前に、たまたま父ととある学会に行ったことがあります。
それがプライマリ・ケア関連のものでした。父は内科医ですからプライマリ・ケアに興味があったんだと思います。
ちなみにいまは80歳を超えていますが、まだ現役で頑張っていますよ(笑)。
その学会には医師や看護師、薬剤師といった様々な医療関係者が参加していました。
私にとってそれは新鮮な体験だったんですね。と言うのも、それまで薬剤師の学会にはよく顔を出していましたが、当然のことながら参加しているのは薬剤師だけだったからです。
だから父と行ったその学会で他の医療関係者と交流ができておおいに刺激を受けたというわけです。
その経験があった後、日本プライマリ・ケア連合学会との出会いがありました。
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    プライマリ・ケアに最初に触れたのはご実家で開業されている医師のお父様のご縁だったとのこと

― どういう経緯だったのでしょうか?

青森には「青森民医連」という組織があるのですが、そこの医師の先生方から声をかけていただいたのがきっかけです。
その先生方は日本プライマリ・ケア連合学会にも入っていて、総合診療にも力を入れられていたんですね。それで「今度新しくプライマリ・ケアの認定薬剤師制度ができたので勉強してみませんか?」とお誘いを受けたのです。
2013年のことでした。先生方も認定医としての資格を持っているとのことでしたし、プライマリ・ケアに関心のある薬剤師が増えてほしいと思われたんでしょうね。
ちょうどそのタイミングで当時の理事長の丸山泉先生が講演会に来られて、その話に強く感銘を受けました。以来、毎年欠かさず学会の集まりには参加しています。

― 丸山先生のお話のどのような点に感銘を受けられましたか?

プライマリ・ケアは患者さんの「最後のよりどころになる」という点ですね。
いろいろな患者さんを受け入れるという話の中で「どの診療科にかかればいいのかわからないような人たちが最後に診てもらえるのが総合診療なんです」とおっしゃったことに「なるほど」と思い、プライマリ・ケアにとても魅力を感じました。
それで学会に入ったわけですが、プライマリ・ケア認定薬剤師になったのは2016年ですね。
学会に入ったおかげでいろんな方たちとの交流が生まれ、常に新しい発見を得ています。視野もずいぶん広がりました。
SNSでつながっている方も多く、お会いするのは年に一回であっても、日頃の活躍が普段からわかるんです。
自分も頑張ろう、という気持ちになりますね。
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    JPCA学術大会には必ず参加
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    ポスター発表

地域に安心を届ける薬剤師に

― ファルマさんは在宅医療にも力を入れているそうですね。

地域の医療機関との連携の中で取り組んでいるという位置づけですね。
近隣の病院が無料の送迎バスを出したり往診に力を入れたりしているので、私たちもそれに呼応する形で患者さんのところにお薬を届けに行く取り組みを行っています。
現在は法人全体で約300人ほどの患者さんのところに薬を届けています。在宅の患者さんは年々増えている状況で、ご自宅の場合もあれば施設の場合もあります。
入院期間が短くなったことや足腰が弱って外に出られなくなったことなど在宅が増えた理由としてはあげられるでしょうか。フ
ァルマは全店舗が「健康サポート薬局*」として認定を受けており、その点でも患者さんに貢献ができていると思います。

*健康サポート薬局:厚生労働大臣が定める一定基準を満たす薬局として、かかりつけ薬剤師・薬局の機能に加え、市販薬や健康食品に関すること、介護や食事・栄養摂取に関することまで気軽に相談できる薬局
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    待合で健康教室
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    地域に出向いての健康教室
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    時期に合わせたテーマで行っています
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    学校薬剤師として小学校でたばこについて授業

― 在宅と通常の店舗での対応とではどのような違いがありますか?

距離感が全く違いますね。薬局では薬の話だけにとどまりがちですが、ご自宅に伺うとそれ以外の話もするようになります。
例えば、その患者さんの若かった頃のお話を伺ったりといったこともありますね。
患者さんの生活空間に入っていくわけですから自然と話題も広がっていくんですね。また、在宅ではポリファーマシーを防ぐことができることも大きいかと思います。
高齢の患者さんの多くは複数の医療機関にかかっていて、それぞれから薬を処方されています。
ご自宅に行くと薬剤師はそうした大量の薬を目にすることができますし、それを一括で管理することができるようになるので結果的に薬の量が減るというわけです。
患者さんご自身も「どうしてこの薬を飲んでいたんだっけ?」と首をかしげるケースも実は少なくありません。
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    自ら電気自動車で在宅へお薬を届けに

― 相馬先生が今後取り組んでいきたいことは何でしょうか?

薬局としての現在のサービスを維持しながら、常に新しい人材が入ってきてくれる魅力ある薬局作りをしていきたいですね。
おかげさまで毎年新卒の人たちに入ってきてもらっていますが、その理由のひとつに薬学生の実務実習を受け入れていることがあると考えています。
実習では在宅も経験しますから、それで興味を持ってくれる人も結構多いんです。
また、地域の方々の健康サポートに取り組みたいという人も少なくないですね。
そうした人たちに入ってきてもらって、どんどん活躍できる環境作りにも取り組んでいかなければと思っています。
その一方で、最近では近くの病院から依頼を受けて、若い医師の先生方を研修で受け入れるといったこともしています。地域医療の一環で薬剤師の現場を見ておきたいという先生が増えているんです。うちの若い薬剤師と仲良くなって情報交換も活発になっているようです。
こうした交流も今後は広げていきたいですね。
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    医療機関との連携も勢力的にしています
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    他の学会でも多くの研究成果を発表しています

プロフィール

ファルマ弘前薬局
 取締役薬剤部長 / 薬局長 相馬 渉
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<資格・認定>
薬剤師免許
プライマリ・ケア認定薬剤師
研修認定薬剤師
健康サポート薬局研修修了


<所属学会>
日本プライマリ・ケア連合学会
医療薬学会
J-HOP東北ブロック幹事
一般社団法人弘前薬剤師会副会長

<経歴>
2001年3月 東北薬科大学卒業
2001年4月 (株)ファルマ 弘前調剤センター入社
2008年4月 弘前調剤センター 薬局長
2013年10月 藤代薬局 薬局長
2016年 4月 弘前調剤センター 薬局長
2017年 10月 ファルマ弘前薬局 薬局長
2018年 5月 取締役薬剤部長

取材後記

インタビュー中は終始微笑を浮かべて対応してくださった相馬先生。
そこから伝わるのは穏やかな人柄でした。薬剤師として日々患者さんに接している相馬先生ですが、その患者さんたちはきっと大きな安心感を抱いていることでしょう。
学会での交流を通して新しい情報にふれることの楽しさも語ってくれた相馬先生。
若い人材たちを育てる育てる一方で、自身の成長への努力も怠らない姿勢は素晴らしいものだと言えます。
そんな相馬先生には今後もますます活躍していただきたいと思います。

最終更新:2025年07月31日 17時59分

「プライマリ・ケア公式WEB」 編集担当

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「プライマリ・ケア公式WEB」 編集担当

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