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在宅医療
【生活の困難さと医療の必要度から見るケア移行②】ケア移行のタイミングと移行時のポイント
前回、生活の難しさと医療の高度さごとの担当医療機関について提案をさせて頂きました。(図1)今回はこの図の中での移行のタイミングや移行時のポイントについて話します。
ケア移行のタイミング
プライマリ・ケアから基幹病院へのケア移行のタイミング、つまり紹介のタイミングについては、皆様、よく勉強されていることと思います。一方で、生活が難しくなってきた場合のプライマリ・ケアや訪問診療へのケア移行のタイミングについてはあまり学ぶことも多くないのではないでしょうか?
この時期のケア移行は基準が病状というよりも生活の難しさであるため、慣れるまでは違和感が大きいと思います。ただ、超高齢社会になった日本では重要な知識となります。
ケア移行のタイミングは自分一人では受診できなくなった時、または一人での生活が難しくなった時になります。
具体的には以下の図2の状態になったら考えるとよいでしょう。
この時期からの医療では、病状だけでなく、本人の価値観やADL、社会的背景も含めて方針を決める重要性が、これまで以上に高まります。そのため、ぎりぎりでのケア移行よりも余裕をもってケア移行してもらえるとよいかと思います。
また、訪問診療については、外来に通えるようになるかもしれない人を紹介してもいいのか悩むという声を聞くことがあります。実際、訪問診療をしている患者さんが外来通院に戻るケースも経験します。ケア移行は一方通行ではなく、訪問診療からプライマリ・ケアにも移行できる環境を作っておくことはプライマリ・ケア、訪問診療側の責任で行われるべきことだと思います。専門性の高い病院側はそのあたりは心配せずに紹介してもらえればと思います。
プライマリ・ケアから基幹病院へのケア移行のタイミング、つまり紹介のタイミングについては、皆様、よく勉強されていることと思います。一方で、生活が難しくなってきた場合のプライマリ・ケアや訪問診療へのケア移行のタイミングについてはあまり学ぶことも多くないのではないでしょうか?
この時期のケア移行は基準が病状というよりも生活の難しさであるため、慣れるまでは違和感が大きいと思います。ただ、超高齢社会になった日本では重要な知識となります。
ケア移行のタイミングは自分一人では受診できなくなった時、または一人での生活が難しくなった時になります。
具体的には以下の図2の状態になったら考えるとよいでしょう。
この時期からの医療では、病状だけでなく、本人の価値観やADL、社会的背景も含めて方針を決める重要性が、これまで以上に高まります。そのため、ぎりぎりでのケア移行よりも余裕をもってケア移行してもらえるとよいかと思います。
また、訪問診療については、外来に通えるようになるかもしれない人を紹介してもいいのか悩むという声を聞くことがあります。実際、訪問診療をしている患者さんが外来通院に戻るケースも経験します。ケア移行は一方通行ではなく、訪問診療からプライマリ・ケアにも移行できる環境を作っておくことはプライマリ・ケア、訪問診療側の責任で行われるべきことだと思います。専門性の高い病院側はそのあたりは心配せずに紹介してもらえればと思います。
ケア移行の始め方と進め方
誰がどのようにケア移行を始めるかはさらに難しい問題です。その理由は生活が難しくなっていることを把握することが難しいことと、介護保険の導入までは関わっている医療介護職が外来医師・看護師のみに限られることが多いためです。
そのため、外来医師・看護師はケア移行を考える状態について知っておくことが重要です。
しかし、今までのインタビュー調査では、外来医師・看護師だけに任せているだけでは難しいケースもあることがわかってきました。
専門性の高い病院ではMSWなどケア移行をサポートできる方を外来に配置できるとよりよいでしょう。
また、ケアマネジャー・訪問看護・薬局薬剤師などは生活の困難さを把握しており、先生方になんとか連絡をしたいと思っていることも多いです。専門性の高い病院側は在宅に関わる医療介護職に開かれた状態にしておくことが重要になります。ただ、その際に直接主治医に話をしに行けるのは一部の限られた人だけになりますし、医師も聞く余裕がないことも多いです。連携室などに窓口を作り、相談しやすい開かれた場をもってもらえるとよりよい可能性があります。
ケア移行の進め方については、移行先の把握が重要です。病気のことはもちろん、ちゃんと生活の困難さに対応してくれるプライマリ・ケアや訪問診療先を知っておくことが大切になります。
しかし、日本のプライマリ・ケアは、地域や医療機関によって提供内容や得意分野に差があるのが現状です。診療圏の広い専門性の高い病院が実際にどのような医療をしているのか把握するのは非常に難しく、今まで専門性の高い病院からプライマリ・ケアへのケア移行が上手くいかなかった要因の一つになっていた可能性があります。
インタビューではMSWが患者宅に近い訪問看護ステーションなどに紹介先を相談し、事前にプライマリ・ケア側に打診することで対応していました。その地域の訪問看護や包括支援センター、医師会などに聞くと紹介先の候補が見えるのではないかと考えます。なお、これらの業務を多忙で転勤も多い専門性の高い病院の医師が行うことは難しいと思われ、今後は外来でのケア移行にも連携室などが介入することが重要になるでしょう。また、これからはかかりつけ医機能報告制度もこの難しさを改善してくれる一助となることが期待されます。
ケア移行の課題と対策
なお、専門性の高い病院側の医師から「患者・家族が受け入れてくれない」、「紹介しても戻ってきてしまう」という声を聞くことがあります。この点については①患者教育と、②ケア移行の精度をあげる、③特殊な事例に引っ張られすぎないことの3つが重要になるかと思います。
①患者教育ですが、これは各医療機関で病院ごとの役割や図1のようにケア移行していくことを患者さんや家族に伝えていく必要があります。実際にインタビューした事例では基幹病院はかかりつけにはなれないことを病院としてアピールしていました。
また②ケア移行の精度をあげるについては、紹介先とのミスマッチ対策をしていきます。これは先ほどの連携室を通して紹介先に適切な医療機関を選ぶことが肝要です。さらに、難しい事例では事前に連絡を取ることで受け手側が準備をできるようにすることも大切です。
③特殊な事例に引っ張られすぎないことについてです。たしかに一部の患者はケア移行を拒否しますが、実際にはケア移行にすんなり応じる方が多数です。難しい事例はどの分野にもあり、ごく一部の特殊な事例を大きく捉えすぎないことが重要です。
理想としては、専門性の高い病院の医師や看護師がケア移行の必要性に気づき、連携室に連絡する。連携室が紹介先の選定と打診を行い紹介する。また、プライマリ・ケアは紹介された事例に対して真摯に対応するとともに、気になる事例に出会ったら積極的に専門性の高い病院に相談する。そのような中で、よりよい病診連携ができることを期待します。
専門クリニックや、プライマリ・ケア、訪問診療間のケア移行
専門クリニックとプライマリ・ケアや訪問診療間、プライマリ・ケアと訪問診療間のケア移行はもう少しやりやすいと思います。同じ地域の中で診療を行っておりますので、ぜひ顔の見える関係を築いて適切な先生にご紹介ください。といければいいのですが、意外とそうはいかないのが難しいところです。医師会で顔を合わせても、実際の診療の様子は見えてこないのが正直なところです。
ただ、幸いなことにどちらの医師も短期間では変わらないことが多いので、最適な医療機関を一度見つけてしまえばあとは楽です。訪問看護やケアマネ、包括支援センター、医師会などに確認して紹介先を開拓しておきましょう。
なお、生活が難しくなるほど変化を嫌います。そのため、患者さんにはケア移行について悪くなる前から話をしておいて、嫌がられてもその重要性を伝えてケア移行してください。患者・家族が望むからと、患者は診察に来ないのに薬だけ処方している例もありますが、本当の意味で患者のためにはなっていません。「小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり」です。医療のプロとしての姿勢が期待されています。
また、先ほど述べたように訪問診療からプライマリ・ケアへのケア移行も重要です。病状は必ずしも予想どおりには行きませんし、改善して外来に通院できるのは良いことです。訪問診療は紹介されたら亡くなるまでの片道切符ではありません。もし訪問診療しか行わない先生はぜひ信頼できるプライマリ・ケア医を連携先として見つけておいてください。改善したら外来に移行できることを知れば、紹介側のハードルは大いに下がるでしょう。
生活が難しくなってからの要、地域包括ケア病棟
生活の難しさが増してくると体調不良時などに自宅で生活するのが難しくなることがあります。疾患の病態は入院するほどではないが自宅での生活が難しいときや、リハビリやケアの調整、レスパイト入院など様々な形で地域包括ケア病棟等との連携が必要になります。ケア移行とは異なりますが、生活が難しくなってくると地域包括ケア病棟等との連携は欠かせなくなります。上手く連携できる体制を日ごろから築いておきましょう。
図1に専門クリニックや地域包括ケア病棟等を追加した完全版が図3です。それぞれ性質の異なる施設をケア移行でつないで地域で患者さんを支えていきましょう。
誰がどのようにケア移行を始めるかはさらに難しい問題です。その理由は生活が難しくなっていることを把握することが難しいことと、介護保険の導入までは関わっている医療介護職が外来医師・看護師のみに限られることが多いためです。
そのため、外来医師・看護師はケア移行を考える状態について知っておくことが重要です。
しかし、今までのインタビュー調査では、外来医師・看護師だけに任せているだけでは難しいケースもあることがわかってきました。
専門性の高い病院ではMSWなどケア移行をサポートできる方を外来に配置できるとよりよいでしょう。
また、ケアマネジャー・訪問看護・薬局薬剤師などは生活の困難さを把握しており、先生方になんとか連絡をしたいと思っていることも多いです。専門性の高い病院側は在宅に関わる医療介護職に開かれた状態にしておくことが重要になります。ただ、その際に直接主治医に話をしに行けるのは一部の限られた人だけになりますし、医師も聞く余裕がないことも多いです。連携室などに窓口を作り、相談しやすい開かれた場をもってもらえるとよりよい可能性があります。
ケア移行の進め方については、移行先の把握が重要です。病気のことはもちろん、ちゃんと生活の困難さに対応してくれるプライマリ・ケアや訪問診療先を知っておくことが大切になります。
しかし、日本のプライマリ・ケアは、地域や医療機関によって提供内容や得意分野に差があるのが現状です。診療圏の広い専門性の高い病院が実際にどのような医療をしているのか把握するのは非常に難しく、今まで専門性の高い病院からプライマリ・ケアへのケア移行が上手くいかなかった要因の一つになっていた可能性があります。
インタビューではMSWが患者宅に近い訪問看護ステーションなどに紹介先を相談し、事前にプライマリ・ケア側に打診することで対応していました。その地域の訪問看護や包括支援センター、医師会などに聞くと紹介先の候補が見えるのではないかと考えます。なお、これらの業務を多忙で転勤も多い専門性の高い病院の医師が行うことは難しいと思われ、今後は外来でのケア移行にも連携室などが介入することが重要になるでしょう。また、これからはかかりつけ医機能報告制度もこの難しさを改善してくれる一助となることが期待されます。
ケア移行の課題と対策
なお、専門性の高い病院側の医師から「患者・家族が受け入れてくれない」、「紹介しても戻ってきてしまう」という声を聞くことがあります。この点については①患者教育と、②ケア移行の精度をあげる、③特殊な事例に引っ張られすぎないことの3つが重要になるかと思います。
①患者教育ですが、これは各医療機関で病院ごとの役割や図1のようにケア移行していくことを患者さんや家族に伝えていく必要があります。実際にインタビューした事例では基幹病院はかかりつけにはなれないことを病院としてアピールしていました。
また②ケア移行の精度をあげるについては、紹介先とのミスマッチ対策をしていきます。これは先ほどの連携室を通して紹介先に適切な医療機関を選ぶことが肝要です。さらに、難しい事例では事前に連絡を取ることで受け手側が準備をできるようにすることも大切です。
③特殊な事例に引っ張られすぎないことについてです。たしかに一部の患者はケア移行を拒否しますが、実際にはケア移行にすんなり応じる方が多数です。難しい事例はどの分野にもあり、ごく一部の特殊な事例を大きく捉えすぎないことが重要です。
理想としては、専門性の高い病院の医師や看護師がケア移行の必要性に気づき、連携室に連絡する。連携室が紹介先の選定と打診を行い紹介する。また、プライマリ・ケアは紹介された事例に対して真摯に対応するとともに、気になる事例に出会ったら積極的に専門性の高い病院に相談する。そのような中で、よりよい病診連携ができることを期待します。
専門クリニックや、プライマリ・ケア、訪問診療間のケア移行
専門クリニックとプライマリ・ケアや訪問診療間、プライマリ・ケアと訪問診療間のケア移行はもう少しやりやすいと思います。同じ地域の中で診療を行っておりますので、ぜひ顔の見える関係を築いて適切な先生にご紹介ください。といければいいのですが、意外とそうはいかないのが難しいところです。医師会で顔を合わせても、実際の診療の様子は見えてこないのが正直なところです。
ただ、幸いなことにどちらの医師も短期間では変わらないことが多いので、最適な医療機関を一度見つけてしまえばあとは楽です。訪問看護やケアマネ、包括支援センター、医師会などに確認して紹介先を開拓しておきましょう。
なお、生活が難しくなるほど変化を嫌います。そのため、患者さんにはケア移行について悪くなる前から話をしておいて、嫌がられてもその重要性を伝えてケア移行してください。患者・家族が望むからと、患者は診察に来ないのに薬だけ処方している例もありますが、本当の意味で患者のためにはなっていません。「小善は大悪に似たり、大善は非情に似たり」です。医療のプロとしての姿勢が期待されています。
また、先ほど述べたように訪問診療からプライマリ・ケアへのケア移行も重要です。病状は必ずしも予想どおりには行きませんし、改善して外来に通院できるのは良いことです。訪問診療は紹介されたら亡くなるまでの片道切符ではありません。もし訪問診療しか行わない先生はぜひ信頼できるプライマリ・ケア医を連携先として見つけておいてください。改善したら外来に移行できることを知れば、紹介側のハードルは大いに下がるでしょう。
生活が難しくなってからの要、地域包括ケア病棟
生活の難しさが増してくると体調不良時などに自宅で生活するのが難しくなることがあります。疾患の病態は入院するほどではないが自宅での生活が難しいときや、リハビリやケアの調整、レスパイト入院など様々な形で地域包括ケア病棟等との連携が必要になります。ケア移行とは異なりますが、生活が難しくなってくると地域包括ケア病棟等との連携は欠かせなくなります。上手く連携できる体制を日ごろから築いておきましょう。
図1に専門クリニックや地域包括ケア病棟等を追加した完全版が図3です。それぞれ性質の異なる施設をケア移行でつないで地域で患者さんを支えていきましょう。
おわりに
今までの調査でわかったことは、ケア移行は漫然と経過を追うのみで自然に達成されるものではないということです。多くの現場の方が難しさを感じ、取り組んできましたが、そこにはまだまだ課題が多いです。ケア移行の実施には、各職種の連携はもちろん、ケア移行を意識し、そのタイミングに気づこうとする姿勢が必要です。
少子高齢化はこれからも進んでいき、その中でどのように医療をよりよいものにしていくのかが問われています。その中でプライマリ・ケアも大きな役割を担うことが期待されますが、まだまだ住民、医療機関、行政から十分に使い方をわかってもらえていないところもあるかと思います。プライマリ・ケアが得意な領域もあり、他の疾患と専門医の関係のように、生活が困難な状態になったらプライマリ・ケアに紹介するという文化ができればと思います。
適切な時期にプライマリ・ケアや訪問診療にケア移行できることで患者さんや住民が安心して暮らす一助となれることを期待します。
社会医療法人関愛会 よつばファミリークリニック
大分大学医学部 総合診療・総合内科学講座
藤谷 直明
今までの調査でわかったことは、ケア移行は漫然と経過を追うのみで自然に達成されるものではないということです。多くの現場の方が難しさを感じ、取り組んできましたが、そこにはまだまだ課題が多いです。ケア移行の実施には、各職種の連携はもちろん、ケア移行を意識し、そのタイミングに気づこうとする姿勢が必要です。
少子高齢化はこれからも進んでいき、その中でどのように医療をよりよいものにしていくのかが問われています。その中でプライマリ・ケアも大きな役割を担うことが期待されますが、まだまだ住民、医療機関、行政から十分に使い方をわかってもらえていないところもあるかと思います。プライマリ・ケアが得意な領域もあり、他の疾患と専門医の関係のように、生活が困難な状態になったらプライマリ・ケアに紹介するという文化ができればと思います。
適切な時期にプライマリ・ケアや訪問診療にケア移行できることで患者さんや住民が安心して暮らす一助となれることを期待します。
社会医療法人関愛会 よつばファミリークリニック
大分大学医学部 総合診療・総合内科学講座
藤谷 直明
最終更新:2026年02月23日 11時58分











