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他科多職種インタビュー企画

他科/多職種インタビュー企画 福井大学医学部附属病院 救急科・総合診療部 林 寛之先生 インタビュー 第2回

他専門科や多職種のバックグラウンドを知ることで、コミュニケーションが取りやすくなったり、どのようなプライマリ・ケア医が求められているのか、研修中どのように学んでいったらよいかをイメージできるようになるため、インタビューを企画しました。

今回は、福井大学医学部附属病院 救急科・総合診療部 林寛之先生へのインタビュー記事の第2回となります。

noteで読むにはこちらから↓
https://note.com/pc_senkouibukai/n/n21016ad6eaa1?magazine_key=mb4e3b75e32b8

②頭を下げる話

林先生) 地域に出て患者さんを診るというのはむしろ、看護師さんの方が情報を持っていて、ここのお家のお爺さんとお嫁さん無茶苦茶仲が悪いとか、悪口言ったり肩持ったりするとめちゃくちゃ怒られたりとか(笑)。 悪口は良くないけどね。
誤診しても患者さん優しいもんね。肩撫でてくれて「頑張りや」って言われて。「すいません」って言って。Monteggia fractureを見逃して固定して、肘伸びなくなっちゃって。「ごめんなさい、再手術しましょう」って言ったら、痛みないからいいわって言われて。その時も「すみません」って謝って。
石田先生たち、土下座したことないでしょう? 福井大では毎年、後期研修医には土下座の練習をしてもらっています。医療安全で、土下座の勉強会っていうのがあるんです。どうやって謝ったらいいのか。誠心誠意謝るんですけど、謝るストラテジーがあるわけです。それをちゃんとステップ踏まないとダメだし、相手の立場をどう考えるかって。僕は今まで2回土下座したことがあるんですけど(笑)。土下座しろっていうのは強要罪ですけど、本当に心から謝ろうと思った時は日本人の心を持った全面降伏ですよ。そこまでしろとは言ってないよってみんな言ってくれるんですよ。でも相手がいかに辛い目にあったかと思うと、謝っても許されないと思うよ。許してもらおうと思って謝っちゃダメ。許されないと思って謝る。そういうのがすごく大事ですよね。

石田) 医者って謝る経験をしたことがない人が多いと思います。でも、これがなかったから怒ってるんだとか、こういうところが辛かったんだとか、そういった患者さんの解釈まで理解が及ぶかどうかというのは大事だと思います。

林先生) それ、すごい大事です。
「こんな酷い目に遭わされたら、クソみたいな福井大学なんて2度と受診するもんかって思いますよね」って言ったら、「その通りや!」って言われて。「そうですよね。僕もそう思います、すみません。」って謝りました。
なんか、どんどん違う方向に脱線しちゃうね(笑)。

鈴木) 他のインタビュー記事とかも見せていただいたんですが、患者さんのために頭を下げるのはかっこいいことだって書いてありました。
他科とのコミュニケーションであったり、争わない姿勢っていうのはどこから学んでいかれたんでしょうか?

林先生) それは、長く臨床経験をやっていてようやく気づいたんです。
やっぱり医者って『後医は名医』は間違いないんですよ。一番最前線にいる家庭医は一番底辺にいるような扱いを受ける。救急だったらER医は底辺の扱いなんです。「最終的にお前らオペもできないのに勝手に受けやがって」とか、「80後半とか90の高齢患者さん受けてどうすんだよ」とか言われるでしょ。科学的にはそうかもしれないんだけど、家族の心情的には違うんですよね。
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本当の専門医は色んなことを幅広く知った上で専門分野を詳しく知っている。でも最近そうじゃない一部分しか知らない人たちがいて、局所医って呼んでるんだけど(笑)。SpecialistじゃなくてLocalistっていうの。上手いこと言うでしょ(笑)。Localistは全身は診ない、患者はもちろん診ない、臓器のパーツだけを診る。そういう医者には理解されないかもしれないけど、患者さんにとってみたら治ればいいわけですよ。そういう時に患者さんのために、嫌味の1つや2つ言われても「お願いします」って心をの折れずに言えることが大切ですね。
意見と事実をきちんと聞き分けられる能力って必要ですよ。家庭医もERも。そういう時に専門科から指摘された科学的事実は学習して、同じ失敗を繰り返さないようにする。でも、「お前なんてカスでクズで役に立たない」っていう悪口はその人の妄想(的外れな意見)だから。妄想は聞き流す。聞き流せないと、心を病んでしまうんだよね。すべて全面的に受け取るんじゃなくてきちんと、意見と事実を聞き分ける。
 もう一つは、なんで相手がそういうことを言うのかを考える。Localistの先生も、とても忙しくてほとんど家に帰ってないとか。子供に「また来てね」って言われて。奥さんと軋轢があって、娘さんが大きくなって全く口を聞いてくれなくなって。離婚が秒読みだっていう時に夜中呼ばれたら?キレたくならない?だから、豊かな想像力っていうのは我々には必要です。勝手に作り上げてもいい。最終的『後医』ならいばれると思うのなら、ICUのintesivistが一番いい。他の科の人が取ってくださいってお願いしに来ても、「え、そんなんでICU入れるんすか?」って言えるでしょ(笑)。そのヒエラルキーから考えると、intensivistが最高位。救急やるならERとICU両方やるのがいい。そしたら、お互いの立場が理解できるとうまくいくから。でも『威張りたいエゴ』と『臨床能力の高さ』は反比例するんですよね

家庭医療の場合はICUと両立はできないよね。そしたらマインドセットが大事。「一番患者さんのためになることをやっている」というプライドを持ってね。患者さんのために頭を下げるのはかっこいいんですよ。その時に、頭の中でバックグラウンドミュージックを流すんですよ。険しい顔をして。そして無事入院できたら、「先生のおかげで無事に入院できました」「よかったですね~」ってほっこりする感じね。医者やってると辛いことって必ずあるので、近視眼的に見ると辛いのは当たり前で、後で俯瞰的に見ると結構笑えるっていう話が多いです。つらい経験を記録しておくっていうのは大事かもしれないですね。ただ、非常に人格を否定されてそれを受け流す力があったとしても、執拗にそういうこと言ってくる場合はきちんとボイスレコーダー使った方がいいかなと思いますけどね。医者相手でも医療安全は大事です

第2回は『頭を下げる話』でした。態度領域のお話がメインでしたが、非常に重要なことばかりだと感じました。第3回は『日本の救急の始まりについて』です。お楽しみに。

最終更新:2022年08月16日 19時58分

専攻医部会

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