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第13回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 学生セッション 受賞者インタビュー Vo.6 <口頭発表の部 優秀賞 > 三重大学医学部

2022年6月11日(土)~12日(日)パシフィコ横浜で開催された、第13回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 学生セッション。
口演発表(研究)8エントリー、ポスター発表(活動紹介)18エントリーの中から、各部門で受賞された発表内容をご紹介します。

口頭発表の部 優秀賞

オンライン授業における医学生の学習環境及び態度 Postコロナを見据えた横断的観察研究

##受賞内容
口頭発表の部 優秀賞  
##演題名
オンライン授業における医学生の学習環境及び態度 Postコロナを見据えた横断的観察研究
##大学
三重大学医学部
##発表者名
山中 章司さん(三重大学医学部4年)
##指導者名
宮崎 景先生(三重大学医学部 名張地域医療学講座・総合診療部)
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新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、三重大学医学部でも対面授業に代わってオンラインでの授業が開始された。オンライン授業というこれまでになかった授業スタイルに関して、学習環境や授業のコンテンツ、進め方等について、教員や学生が実際にどのような課題を感じているのか実態まで掴めていなかった。そこで、本研究では医学生のオンライン学習環境や学習態度を明らかにし、オンライン授業の課題や今後に向けた改善の可能性を探った。

医学生のデジタルデバイスの普及活動がきっかけに

今回の研究は、三重大学医学部のカリキュラムにある研究室研修で取り組みました。宮崎先生の研究室が、オンライン研究やオンラインを活用した医学教育などをテーマにされていたことに興味を持ったのがきっかけでした。もともと私自身が医学生のデジタルデバイスの使用促進活動を行っていたこともあり、コロナ渦でみんながどうやって学習しているのか調べてみたいという思いがあったので、ここでならその研究ができるかも!と総合診療部のドアを叩いたのが経緯です。実際に進めていく研究テーマや内容は先生方とご相談をしながら、三重大学でも実施されていたオンライン授業の実態として、学生たちはどんな環境で受講しているのか調査することになりました。

三重大学医学部医学科の学生286にアンケートを実施

私自身、オンラインでの授業を受けていて学生が誰一人顔を画面に表示させないことがずっと気になっていました。もちろん、先生は真っ暗なところに向かって授業をしている状況で、きっとやりにくいのではないかな?と思い、私はずっと顔出しして参加していました。でも、実際には100名以上の学生全員がオンライン授業で顔出ししてしまうと、通信データが重たすぎて授業がフリーズしてしまうといった課題も出てきます。オンライン授業の導入時は様ざまなことが手探りの状況でしたが、私がまず知りたかったこととして、『一体ほかの学生はどんな風に授業を聞いているのか』ということでした。言ってしまえば、ご飯を食べたり寝っ転がったりしていてもわからないわけで、うまく活用できている人もいれば、ダラけてしまう人もいる。そこで、結果的に学生はオンライン授業に満足しているか、また改善できることは何か等が可視化できるよう、アンケートで調査実施することにしました。

―アンケートはどのような方法で実施されましたか?

三重大学医学部医学科の1~4年生に対して、Google Formを使ったアンケートで調査しました。オンライン授業が導入されて、これまでリアル授業の経験がある2年生以上と、リアル授業の経験がほとんどない1年生とで感じ方や満足度も違ってくるだろうと想定していました。実際に回答してくれた学生は、1年生が64名、2年生が71名、3年生が87名、4年生が64名の合計286名です。

―アンケートの作成や集計で一番苦労されたことは何ですか?

自分なりに色々考えてアンケート項目を作っていきましたが、いざ集計する段階になって、「この聞き方をしたらそう回答するよね…」や「この聞き方では質問の意図がちゃんと伝わらないよね…」といった、設問に対する反省点がいくつかありました。どういう意図で何について回答して欲しいかが伝わる設計を入念に行うべきだったというのが、今後に向けての課題となりました。

受講経験や学年により概念の違った「満足」と「集中力」

アンケートでは、学生が受けたオンラインの授業形態や受講場所、発生した技術トラブルについてヒアリングし、オンラインと対面授業の満足度を相対評価にて調査しました。
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学生の満足度結果は私の予想とは少し違って、オンラインは対面よりも満足度が高いという結果となりました。ここが聞き方をもう少し考えるべきだった反省点のひとつになるのですが、オンライン授業は大学に出向かなくても良いし、そのための身支度もしなくていい、好きな場所で受けられるという「楽に受けれた点で満足」という結果が色濃く表れたと思います。
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そこで、自由回答については、一緒に研究を進めていた同じ医学部4年生の黒田さんや、宮崎先生、後藤先生にもご協力いただき、KJ法を用いて分析を行いました。
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分析の結果としては、「授業に集中できる」という概念は2つあり、リアルの授業はみんなで受講することで、やる気が出たり友達と情報交換できたり、質疑応答のしやすさから授業の質が高さから「集中できる」と感じるのに対し、オンラインの授業は、ひとりで受講することで、受講環境を自分好みにできたり、対人関係のストレスから解放されることによって「集中できる」と感じていることが分かりました。
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―改善点のあぶり出しにも役立つ分析ですね

リアルタイム授業のアーカイブ化や双方向のコミュニケーションを増やすこと、授業資料の事前配布などオンラインならではのメリットを活かした改善点の提案がきたことも、この分析を行ってよかったことのひとつだと思います。

―学年ごとの違いはありましたか?

考察として発表しましたが、学年間の授業形態や満足度の差として、1年生はハイブリッド型(リアルタイムオンライン+対面)の授業が多く、オンラインと対面との満足度の差が少ないとう結果がありました。その理由としては、2021年に入学した1年生は、学校で同級生に会うことも友達を作ることもできない状態が続いていましたが、その状況を鑑み三重大学ではウィズコロナの状況に入ったころから、1・2年生にはハイブリッド型の授業を優先して受講する仕組みが取られていました。ずっとオンライン授業ばっかりだった1年生からすると、やっぱり友達に会えるのはいいな、キャンパスで授業を受けて大学生を実感したといった、リアル授業の新鮮さからオンラインとの差が出なかった結果に繋がったと考えられます。

発表した調査結果は論文として世に残る形へ

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    授賞式後の記念撮影。一番左が山中さん
学術大会でもご意見を頂きましたが、調査した結果は論文にしたら良いよと言われ鋭意まとめているとこです。
宮崎先生や後藤先生は『研究は調査して結果が出るところまでが一番大変だから。あとは、調べて考察作って書くだけだよ』と仰るのですが… やはり初めての体験ということもあり、あと私自身のこだわりもあって、時間がかかってしまっている状態です。宮崎先生が主導で進められたら、きっとすぐに完成すると思いますが、自分で進めたいとお願いしたので先生方にはそのペースに合わせて頂いています。

―宮崎先生は今回の研究で山中さんにどのようなアドバイスをされましたか?

何をメインの軸に置くかということはよく議論していたように思います。山中君がやりたいことは、世の中の人が本当に知りたいことなのか、では世の中の人は何を知りたいと思っているのか、というブレストを重ねていくような感じです。せっかく苦労して研究・調査したその先に、それを知ることで世の中が変わることや、大学が具体的に改善できることに繋がるようにということは常に伝えていました。

―宮崎先生から見られて、今回の調査と発表のご感想は?

山中君は自分のやりたいことが明確で、ほっておいてもどんどん前に進んでいくタイプなので、なるべく自由に調査できるよう見守っていました。発表の仕方も直前までかなりエンターテインメント性が高いスライドだったこともあり、そこは学会の型というかお作法に沿ってもう少し修正しようか、といったアドバイスをすることはありました。山中君の場合はトーク力があるので、発表を聞いていた方は興味を持って聴いてくださっていましたし、ポイントもわかりやすく上手に発表できていたと思います。

―論文でも基本的な先生のスタンスは変わらずで?

そうですね。自分の思いや主張が先走ると論文ではなく、ちゃんと引用しましょうとか、なるべく簡潔に表現するといった論文を書く上でのフェアウェイを示しているような感じです。山中君は言いたいことがたくさんあって、パッションは伝わってくるので、それを最終的には読者がシンプルに咀嚼できるためのサポートですね。

【山中さんの将来目指したいこと】

父が産婦人科医なのでその分野にも興味がありますが、麻酔科のような先生を支えるドクターズドクターにも興味があったり、模索中です。コミュニケーションを通じて人助けをしたいというのが私の中の軸としてあり、それが対患者さんなのか、地域なのか、医師なのか… 対患者さんなのであれば、体のことやそれ以外のことでもちょっと何か困ったことがあれば私の顔が浮かぶ、そんな医師になりたいイメージがあります。今回の日本プライマリ・ケア連合学会の学術大会で発表させていただき、私のなりたい医師のイメージは総合診療や家庭医療の分野に近いところにあると知れたことも大きな糧のひとつです。

最終更新:2023年04月03日 11時25分

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