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第14回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 学生セッション 受賞者インタビュー Vol.4<ポスター発表の部 優秀発表賞 > 岐阜大学医学部
2023年5月13日(土)〜14日(日)ポートメッセなごやで開催された第14回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 学生セッション。口演発表(研究)19エントリー、ポスター発表(活動紹介)37エントリーの中から、各部門で受賞された発表内容をご紹介します。今回は「ポスター発表の部」で優秀発表賞を獲得した岐阜大学医学部の鳥羽璃瑚さんと、指導にあたった牛越博昭先生からお話をうかがいました。
ポスター発表の部 優秀発表賞
「地域医療×俳句」~俳句を通じた総合診療学習の試み~
##受賞内容
ポスター発表の部 優秀発表賞
##演題名
「地域医療×俳句」~俳句を通じた総合診療学習の試み~
##大学
岐阜大学医学部
##発表者名
鳥羽璃瑚さん(岐阜大学医学部医学科)
##指導者名
牛越博昭先生(岐阜大学医学部附属地域医療医学センター 教授 センター長)
ポスター発表の部 優秀発表賞
##演題名
「地域医療×俳句」~俳句を通じた総合診療学習の試み~
##大学
岐阜大学医学部
##発表者名
鳥羽璃瑚さん(岐阜大学医学部医学科)
##指導者名
牛越博昭先生(岐阜大学医学部附属地域医療医学センター 教授 センター長)
岐阜大学医学部「ぎふ医療ケアサークル」は、総合診療について学生が気軽に学ぶ「ジェネふらセミナー」を継続して開催している。今回、総合診療における「言葉」の重要性に着目し「地域医療×俳句」と題してセミナーを企画。現代俳句協会副幹事長の神野紗希先生をお招きして、医療系学生が患者さんの物語を聞いたり、診療所のある春日の自然を散策した体験を俳句で表現する機会が得られるセミナーとした。総合診療の理解を深める試みとなったため報告する。
総合診療医にとって重要な「言葉」の表現力を磨く
―まずはサークルの概要から教えていただけますか?
「ぎふ医療ケアサークル」は2011年11月に創設された医療系サークルです。学生が主体となって気軽に地域医療にふれられる機会をつくり、地域医療をもっと身近なものとして感じられるようにしようとの目的でさまざまに活動を行ってきました。現在、メンバーは在学生と卒業生を合わせておよそ80名となっています。私はサークルリーダーとしての役割を与えられています。
当サークルでは「ジェネふらセミナー(ジェネラリストふらっとセミナー)」と題して総合診療について誰もが気軽に学びに来れるセミナーを不定期に開催しています。そのコーディネーターを務めてらっしゃるのが総合診療医で、揖斐川町春日診療所の管理者兼所長である菅波祐太先生です。
ジェネふらセミナーを実施するにあたって、私たちはその菅波先生からアドバイスやご提案をいただいているのですが、今回もまた企画のヒントをいただきました。それは文学的な要素をセミナーに取り入れてみてはどうかということで、もともとは先生のお知り合いに俳人の方がいらっしゃることから発案されたそうです。その俳人の方の師匠にあたる方が夏井いつき先生(テレビ番組「プレバト!!」の出演者)で、メンバー一同「それは面白い」ということで実施することにした経緯があります。
当サークルでは「ジェネふらセミナー(ジェネラリストふらっとセミナー)」と題して総合診療について誰もが気軽に学びに来れるセミナーを不定期に開催しています。そのコーディネーターを務めてらっしゃるのが総合診療医で、揖斐川町春日診療所の管理者兼所長である菅波祐太先生です。
ジェネふらセミナーを実施するにあたって、私たちはその菅波先生からアドバイスやご提案をいただいているのですが、今回もまた企画のヒントをいただきました。それは文学的な要素をセミナーに取り入れてみてはどうかということで、もともとは先生のお知り合いに俳人の方がいらっしゃることから発案されたそうです。その俳人の方の師匠にあたる方が夏井いつき先生(テレビ番組「プレバト!!」の出演者)で、メンバー一同「それは面白い」ということで実施することにした経緯があります。
―俳句と総合医療との組み合わせがユニークに思えました。
菅波先生は「総合診療医にとって〝言葉〟はもっとも重要な道具」とおっしゃっていて、その表現力を磨くために俳句をご提案いただいたわけです。総合診療医は子供から高齢者までいろんな世代の方々とコミュニケーションをとっていきます。相手によっては言葉の用い方を変えていく必要もあります。その言葉を使う力を磨いていくことは確かに欠かせないとメンバー全員がうなずいていました。俳句は言葉を研ぎ澄ましていく表現方法ですから、まさにぴったりだったと言えます。
また、普段は何気なく目にしている地域の風景をじっくりと観察することで、その地域ならではの魅力に改めて気づくきっかけになるとも思いました。1月に企画が立ち上がり、実施をしたのは7月。約半年間かけて準備を進めていきました。
また、普段は何気なく目にしている地域の風景をじっくりと観察することで、その地域ならではの魅力に改めて気づくきっかけになるとも思いました。1月に企画が立ち上がり、実施をしたのは7月。約半年間かけて準備を進めていきました。
参加者は20名。予想以上の成果が生まれた!
―当日はどのような感じだったのでしょうか?
参加してくれたのは合計20名。岐阜大学医学部医学科の学生、他の大学の学生の方、医師・研修医・看護師のみなさん、一般の方、それに子供たちという顔ぶれでした。俳句の講師には現代俳句協会副幹事長の神野紗希先生をお招きしました。また、今回散策する場所としては菅波先生のホームグラウンドである春日地域としたので、同地域に詳しい看護師の方にもアドバイザーとして参加していただきました。
セミナー開始は8時で、最初に神野先生から俳句に関するレクチャーが行われました。その後は全員で地域を散策。時間にしておよそ1時間ほどです。散策が終わった後は散策中に得た感動をもとに一人ひとりが俳句を作り、匿名で投句。そして全員で自分の好きな句に投票をしました。
投句されたのは49句で、そのなかから特選・入選として6句が選ばれました。特定の句に票が集まったわけではなく、すべての句に必ず誰かが投票していたことが印象的でした。みんなそれぞれに好きな句が違うんだなと思うと、それが面白かったりしました。私自身はぜんぶ素敵な句だったと思っています。
セミナー開始は8時で、最初に神野先生から俳句に関するレクチャーが行われました。その後は全員で地域を散策。時間にしておよそ1時間ほどです。散策が終わった後は散策中に得た感動をもとに一人ひとりが俳句を作り、匿名で投句。そして全員で自分の好きな句に投票をしました。
投句されたのは49句で、そのなかから特選・入選として6句が選ばれました。特定の句に票が集まったわけではなく、すべての句に必ず誰かが投票していたことが印象的でした。みんなそれぞれに好きな句が違うんだなと思うと、それが面白かったりしました。私自身はぜんぶ素敵な句だったと思っています。
緑豊かな風景に、参加者もリラックスムードで散策。歩くことで知らなかったエリアの魅力にも気付くことができたという。
―特選・入選となった句
―セミナー終了後にアンケートを取ったそうですね?
はい。セミナーに参加した感想を書いていただいたのですが、地域探索は町や人の様子を細かく観察するいい機会になっていたことがわかりました。例えば「改めてゆっくり探索すると、普段は気が付かなかった景色が見えた(医師・春日診療所)」「五感に意識的になると、何気ない光景でもふとした発見に心が動いた(医学科6年生)」といった意見がありました。
また、句作に関しては、感動を言葉にして表現することの楽しさや難しさをみなさん体験できていたと言えます。「普段は写真を撮って共有することが多いが、言葉で切り取って感動を共有するのもまた違った良さがある!(看護学部2年生)」「日頃いかに言葉を意識していないかに気が付いた(医学科5年生)」「感動した一場面を17音に収める難しさを感じた(医学科5年生)」などの感想をいただきました。
さらに句会や地域探索を医療とのつながりのなかでとらえた意見もいただきました。例えば「ささやかな日常のふとした発見から暮らしや人生を豊かにする俳句は、患者さんとのコミュニケーションや生活の中でも応用できる。小さな気づきからその人を少しでも理解しようとすることで、よりよいケアにつなげたい(医学科6年生)」「感性や表現力を磨く研鑽を行うことが、より良い医療ケアにつながると思う(医学科6年生)」「同じ場所にいても、人によって注目する点や、それを表す言葉が違うことを学んだ。自分の思いを相手に適切に伝えるには慎重に言葉を選ぶ必要があると思った(医学科1年生)」といったことです。こういう意見が出てきたことは本当にうれしかったですね。
また、句作に関しては、感動を言葉にして表現することの楽しさや難しさをみなさん体験できていたと言えます。「普段は写真を撮って共有することが多いが、言葉で切り取って感動を共有するのもまた違った良さがある!(看護学部2年生)」「日頃いかに言葉を意識していないかに気が付いた(医学科5年生)」「感動した一場面を17音に収める難しさを感じた(医学科5年生)」などの感想をいただきました。
さらに句会や地域探索を医療とのつながりのなかでとらえた意見もいただきました。例えば「ささやかな日常のふとした発見から暮らしや人生を豊かにする俳句は、患者さんとのコミュニケーションや生活の中でも応用できる。小さな気づきからその人を少しでも理解しようとすることで、よりよいケアにつなげたい(医学科6年生)」「感性や表現力を磨く研鑽を行うことが、より良い医療ケアにつながると思う(医学科6年生)」「同じ場所にいても、人によって注目する点や、それを表す言葉が違うことを学んだ。自分の思いを相手に適切に伝えるには慎重に言葉を選ぶ必要があると思った(医学科1年生)」といったことです。こういう意見が出てきたことは本当にうれしかったですね。
牛越先生のアドバイス
―今回の発表に関して牛越先生はどのような指導をされたのでしょう?
鳥羽さんの話にもあったように、ぎふ医療ケアサークルは気軽に地域医療にふれられる機会をつくっていくことを目的としたサークルで、岐阜大学医学部公認のサークルとなっています。私はその顧問としてサークル活動を支えているという立ち位置です。企画内容に関してはサークルメンバーが自主的に取り組んでくれるため、基本的に私から口出しはしません。発表に関しては書いてもらった抄録をより伝わりやすいように添削するといったことをしました。
その流れは私が顧問になってからつくらせていただきました。私は日本プライマリ・ケア連合学会の認定医、指導医ということもあって、学会とのつながりがあります。そのつながりを活かすかたちで発表する機会を設けたことになりますよね。今回の発表で3回目になります。サークルでの活動をただ「楽しかったね」で終わらせるのではなく、研究発表として多くの人々に伝えることは学生たちにとってもおおいに勉強になると思っています。
―サークルで実施した企画を学会で発表するようになったのは?
その流れは私が顧問になってからつくらせていただきました。私は日本プライマリ・ケア連合学会の認定医、指導医ということもあって、学会とのつながりがあります。そのつながりを活かすかたちで発表する機会を設けたことになりますよね。今回の発表で3回目になります。サークルでの活動をただ「楽しかったね」で終わらせるのではなく、研究発表として多くの人々に伝えることは学生たちにとってもおおいに勉強になると思っています。
鳥羽さんが目指す将来について
―鳥羽さんが将来目指したいことは?
まだはっきりとどこの科の医師になるとは決めていないのですが、総合診療に強く関心を持っていることは事実です。私がプライマリ・ケアの領域に興味を抱いたのは、高校2年生の時でした。地域医療を体験見学できる機会があったので、それに参加したのですが、いろいろな視点から患者さんを診たり、その患者さんの家族をも含めたまわりの環境にも視線を投じ、ケアをしていくとうところがとても面白いと思いました。ですから、少なくともプライマリ・ケアの視点を持った医師にはなりたいと思っています。
最終更新:2024年02月24日 19時59分