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プライマリ・ケア Field LIVE!
特別編 学会委員会に聞いてみました! vol.04/『診療データベース委員会』
「ICPCの活用を中心に、診療の現場で役立つデータベースを!」【診療データベース委員会】
日本プライマリ・ケア連合学会にある委員会の活動を広くお伝えする特別企画「学会委員会に聞いてみました!」。第3弾となるこの回でご登場いただくのは「診療データベース委員会」の先生方です。委員長を務める大野毎子先生のほか、4名のメンバーのみなさんから委員会の具体的な取り組みや今後の展開についてお話いただきました。
ICPC(プライマリ・ケア国際分類)を中心とした活動
― はじめに診療データベース委員会の成り立ちから教えていただけますか?
山岡:そもそも重本洋定先生という方が個人的に手がけておられた活動が始まりです。重本先生はWONCA(世界家庭医機構)の国際分類委員会の日本代表だった方で、「プライマリ・ケア国際分類(ICPC:International Classification of Primary Care)」を個人で翻訳して出版されていました。その活動を支援しようということで結成されたのが旧日本プライマリ・ケア学会の「国際疾病分類研究会」という組織です。それが1994年のことでした。その後、日本プライマリ・ケア連合学会に再編されたことで「診療データベース委員会」として再スタートしたという経緯があります。
ちなみにICPCとはプライマリ・ケア向けの疾病分類のことです。疾病分類は一般的にICD:International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problemsを使いますが、このICDは膨大な数の病名があるんですね。プライマリ・ケアの現場ではそこまで多くの病名は必要ありませんから、より現状に即した形でICPCが考えられました。それに加えて、診療を進めていくなかで病名等の判断が変わっていく過程もコードで表すという体系も組み込まれています。
ちなみにICPCとはプライマリ・ケア向けの疾病分類のことです。疾病分類は一般的にICD:International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problemsを使いますが、このICDは膨大な数の病名があるんですね。プライマリ・ケアの現場ではそこまで多くの病名は必要ありませんから、より現状に即した形でICPCが考えられました。それに加えて、診療を進めていくなかで病名等の判断が変わっていく過程もコードで表すという体系も組み込まれています。
― 現在はどういう取り組みをされているのでしょう?
大野:いま山岡先生のお話にもあったように、従来はICPCのみで活動を進めてきたのですが、2020年から方針が変わりました。ICPCだけではなく、プライマリ・ケアに関するさまざまなデータを活用できるようにしていこうというものです。例えばレセプトのデータもあれば電子カルテのデータもあります。こうした情報を加工したり、診療に役立てるようにどうすればいいかを考えていくことが当委員会の基本的な役割という位置づけです。
「抄読会」
具体的な活動としては、まずICPC関連で言えば「抄読会」というものがあります。
国内外の論文を読みながらICPCの活用法を調べる取り組みです。
国内外の論文を読みながらICPCの活用法を調べる取り組みです。
「ICPC3(改訂版)」
また、これもICPC関連ですが、ICPC3(改訂版)が出ましたので、それに関する取り組みも行っています。
「データベースの構築・運用」
さらにシステム入力班としてデータベースの構築・運用に関わる活動も進めています。
大きくはこの三つですね。
その他には、WONCAのなかにICPCを扱うWICC(ウィック)というセクションがあるのですが、そこに当委員会のメンバーを2人出しています。年に2回国際会議があり、そこに出席するという形です。
その他には、WONCAのなかにICPCを扱うWICC(ウィック)というセクションがあるのですが、そこに当委員会のメンバーを2人出しています。年に2回国際会議があり、そこに出席するという形です。
プライマリ・ケアに関するデータを誰もが使えるデータベース
― データベースの構築から手がけてらっしゃるんですね。
青木:プライマリ・ケアに関していろんな人が使えるようなデータベースはまだ日本にはないんです。だから日本プライマリ・ケア連合学会としてそういうものを作っていこうという話になりました。学会員をはじめとする多くの人に使ってもらいながら育てていこうという感じですね。
ICPC関連以外の情報も視野に入れながら他の委員会からの協力も得て進めていこうとしたところに新型コロナウィルスの流行が始まって一時的にストップしました。いまは再始動に向けて準備を進めているところですが、難しいのはどういう情報を集めるか、どうやって集めるかといったことです。それぞれの病院なり医師なりが持っているデータを集めて使いやすいように加工し、データベースとして活用してもらうことが理想なんですが、データは膨大な量になるので、まずはその枠組みを作らないと前に進めないということがありますね。
ICPC関連以外の情報も視野に入れながら他の委員会からの協力も得て進めていこうとしたところに新型コロナウィルスの流行が始まって一時的にストップしました。いまは再始動に向けて準備を進めているところですが、難しいのはどういう情報を集めるか、どうやって集めるかといったことです。それぞれの病院なり医師なりが持っているデータを集めて使いやすいように加工し、データベースとして活用してもらうことが理想なんですが、データは膨大な量になるので、まずはその枠組みを作らないと前に進めないということがありますね。
― データ入力だけでも大変な気がします。
大倉:それはまさにその通りで、私も経験がありますが、かなり大変です(笑)。そもそもICPCというのは患者さんの「お腹が痛い」とか「熱が出た」といった訴えをアルファベットと数字のコードに変えていくものなんです。その日の治療内容や検査内容、診断名、処方した薬といったことも含めて、すべてコードにすることで診療そのものをデータベース化するわけですね。患者さんの訴えそのものを記述できる点がすごいと私は思いました。
それで実際に2014年だったと思いますが、日本プライマリ・ケア連合学会がオランダと共同で自分たちの診療を全部入力してデータベースにしようというプロジェクトを立ち上げました。私もそのプロジェクトに参加をしたのですが、正直入力作業が大変でした。その経験から入力をもっと簡略化しないとデータベースの構築は難しいという懸念があります。ただ、この部分をクリアにすればかなりスムーズになっていくので、いまはその仕組みづくりに取り組んでいるところです。
それで実際に2014年だったと思いますが、日本プライマリ・ケア連合学会がオランダと共同で自分たちの診療を全部入力してデータベースにしようというプロジェクトを立ち上げました。私もそのプロジェクトに参加をしたのですが、正直入力作業が大変でした。その経験から入力をもっと簡略化しないとデータベースの構築は難しいという懸念があります。ただ、この部分をクリアにすればかなりスムーズになっていくので、いまはその仕組みづくりに取り組んでいるところです。
― 抄読会の取り組みについて具体的に教えていただけますか?
金子:先ほども話に出てきましたが「ICPCをどう活用していくか」を考えることは、当委員会の大切な役割のひとつです。それを考えていくにあたり、他の国や地域の事例を調べて「こんなケースで使えますよ」と提示をすればイメージも付きやすいということで、ICPCを使った論文を勉強会というスタイルで共有できるようにしています。例えばこれまでに紹介した事例では、フランスでトランスジェンダーの方がプライマリ・ケアをどういう際に利用するか、受診した理由といったことを扱った論文があります。また、刑務所に入っている方の医療の受診理由を記述している研究もあり、内容は多岐に渡ります。こうした事例紹介の他には、研究の際にどんなデータベースを使っているのかといったことやICPCをどのようにコーディングしているかという情報も共有するようにしています。海外の先進的なさまざまな取り組みを知ることで実際に日本での取り組みにどう落とし込んでいくか、予算面やシステムのことも含めて「見える化」につなげていける気がします。 ちなみに抄読会のメンバーは委員会以外の協力者の方も含めて6〜7人ですね。
診療に役立つツールとして多くの方に使ってもらえる取り組みを
― 今後の取り組みについてはどうお考えですか?
大野:いま現在取り組んでいることを粛々と進めていくことが第一ですね。
青木先生のおっしゃった
「どのように情報を集めて、加工し、利用できるようにしていくかの枠組みづくり」、
それと大倉先生がおっしゃった
「負担のかからない入力システムの開発」
という2点を集中的に進めていきたいと考えています。
その先にはICPCに関する取り組みがあると思います。現在ICPCは3版まで出ているのですが、その普及に応じて日本語版が必要とされるのなら翻訳も視野に入れていかなければと考えています。
その一方で「AI」に関することも診療データベース委員会として取り扱うテーマになっていて、ここも考えていかなければならないと思っています。先日は「プライマリ・ケアにおけるAIに関するガイドライン」も作成したんですよ。
青木先生のおっしゃった
「どのように情報を集めて、加工し、利用できるようにしていくかの枠組みづくり」、
それと大倉先生がおっしゃった
「負担のかからない入力システムの開発」
という2点を集中的に進めていきたいと考えています。
その先にはICPCに関する取り組みがあると思います。現在ICPCは3版まで出ているのですが、その普及に応じて日本語版が必要とされるのなら翻訳も視野に入れていかなければと考えています。
その一方で「AI」に関することも診療データベース委員会として取り扱うテーマになっていて、ここも考えていかなければならないと思っています。先日は「プライマリ・ケアにおけるAIに関するガイドライン」も作成したんですよ。
― そのガイドラインはどのような内容のものですか?
大野:本当に初歩の初歩、イロハのイからのガイドラインで「AIって何?」というところから始めているものです。AIを使うにあたっての注意点や権利関係のこと、情報の取り扱い(うかつに患者さんの情報を入力しないようになど)といったことを伝えています。AIはきちんと活用すれば便利ですが、使い方によっては問題が起きることもあり得るので、ちゃんとした使い方をしましょうというところにつなげていくのが目的です。
AIに限ることではなくデータベースもそうですが、診療に役立つツールとして多くの方に使ってもらえるようにサポートしていくのが当委員会の使命だと思います。
その点を大切にしながら今後もさまざまな活動に取り組んでいきたいと思います。
その点を大切にしながら今後もさまざまな活動に取り組んでいきたいと思います。
取材協力
大野毎子先生
唐津市民病院きたはた 病院長
略歴
佐賀県唐津市生まれ
1993年 筑波大学医学専門学群卒業
1993年 東葛病院(千葉県)で初期研修、家庭医としての研修
1998年 野田南部診療所所長
2000年 東京大学医学教育国際協力研修センター客員研究員
2001年 北部東京家庭医療学センター臨床研究部長
2003年 豪ニューキャッスル大学臨床疫学分野 医科学修士取得
2005年 唐津市民病院きたはた赴任
2010年 同院院長
2010年~日本プライマリ・ケア連合学会 理事
2018年~唐津東松浦医師会 理事
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青木 拓也 先生
東京慈恵会医科大学
総合医科学研究センター 臨床疫学研究部 准教授
略歴
2008年昭和大学医学部医学科卒
2013年医療福祉生協連 家庭医療学レジデンシー・東京(CFMD) 後期研修修了
2015年東京医科歯科大学大学院 医療政策学修士課程修了
2019年京都大学大学院医学研究科 博士課程修了
2019年より京都大学大学院医学研究科 地域医療システム学講座 特任助教
2020年より現職
日本プライマリ・ケア連合学会 理事
家庭医療専門医、社会医学系専門医、臨床疫学認定専門家
第31回日本医学会総会 奨励賞(社会医学系)受賞
第6回・第8回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 日野原賞受賞
・・・・・・・・・・・・・・・・・
大倉佳宏先生
健生石井クリニック
略歴
2004年3月 香川大学医学部医学科卒業
2004年4月 公立学校共済組合近畿中央病院 初期研修
2006年4月 大阪府済生会千里病院 千里救命救急センター 後期研修
2008年4月 岡山家庭医療センター 後期研修
2012年4月 津山ファミリークリニック
2016年4月 徳島健生病院 内科総合診療科
2017年4月 徳島大学病院総合診療部
2024年4月 健生石井クリニック
2015年にプライマリ・ケア連合学会のICPCプロジェクト(TransHisプロジェクト)に参加したことをきっかけに、ICPCの魅力を知り委員会に参加しました。ICPCに限らずプライマリ・ケアらしいデータベース作りを模索しています。
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山岡雅顕先生
洲本市健康福祉部サービス事業所参事、洲本市応急診療所所長、洲本市国保堺診療所所長、洲本市国保上灘診療所所長、洲本市国保五色診療所医師、兵庫県立淡路医療センター非常勤医師(禁煙専門外来担当)、洲本市産業医
略歴
1988年 愛媛大学医学部医学科卒
1988年 愛媛大学医学部第1内科勤務
1989年 兵庫県立淡路病院勤務
1990年 南淡町国保沼島診療所勤務
1994年 五色町健康福祉総合センター参事(五色町国保堺診療所および五色診療所勤務)
2000年より現職
日本プライマリ・ケア連合学会 プライマリ・ケア認定医
日本禁煙学会 理事・専門指導医
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金子 惇 先生
横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻
同医学部臨床疫学・臨床薬理学講座 准教授
2008年に浜松医科大学卒業、沖縄県立中部病院初期研修、沖縄県立中部病院プライマリ・ケアコース後期研修、2011年より沖縄県立北部病院附属伊平屋診療所、2014年よりCFMD東京リサーチフェロー、2018年より浜松医科大学 地域家庭医療学講座 特任助教を経て2020年4月より横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻 講師、2023年4月より現職
東京慈恵会医科大学 臨床疫学研究部 「地域医療プライマリケア医学」博士課程修了
Western University, Master of Clinical Science (Family Medicine)修了
Western University, PhD (Family Medicine)在学中
日本プライマリ・ケア連合学会 家庭医療専門医・指導医
日本内科学会 内科認定医・総合内科専門医
日本専門医機構 総合診療専門医
唐津市民病院きたはた 病院長
略歴
佐賀県唐津市生まれ
1993年 筑波大学医学専門学群卒業
1993年 東葛病院(千葉県)で初期研修、家庭医としての研修
1998年 野田南部診療所所長
2000年 東京大学医学教育国際協力研修センター客員研究員
2001年 北部東京家庭医療学センター臨床研究部長
2003年 豪ニューキャッスル大学臨床疫学分野 医科学修士取得
2005年 唐津市民病院きたはた赴任
2010年 同院院長
2010年~日本プライマリ・ケア連合学会 理事
2018年~唐津東松浦医師会 理事
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青木 拓也 先生
東京慈恵会医科大学
総合医科学研究センター 臨床疫学研究部 准教授
略歴
2008年昭和大学医学部医学科卒
2013年医療福祉生協連 家庭医療学レジデンシー・東京(CFMD) 後期研修修了
2015年東京医科歯科大学大学院 医療政策学修士課程修了
2019年京都大学大学院医学研究科 博士課程修了
2019年より京都大学大学院医学研究科 地域医療システム学講座 特任助教
2020年より現職
日本プライマリ・ケア連合学会 理事
家庭医療専門医、社会医学系専門医、臨床疫学認定専門家
第31回日本医学会総会 奨励賞(社会医学系)受賞
第6回・第8回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 日野原賞受賞
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大倉佳宏先生
健生石井クリニック
略歴
2004年3月 香川大学医学部医学科卒業
2004年4月 公立学校共済組合近畿中央病院 初期研修
2006年4月 大阪府済生会千里病院 千里救命救急センター 後期研修
2008年4月 岡山家庭医療センター 後期研修
2012年4月 津山ファミリークリニック
2016年4月 徳島健生病院 内科総合診療科
2017年4月 徳島大学病院総合診療部
2024年4月 健生石井クリニック
2015年にプライマリ・ケア連合学会のICPCプロジェクト(TransHisプロジェクト)に参加したことをきっかけに、ICPCの魅力を知り委員会に参加しました。ICPCに限らずプライマリ・ケアらしいデータベース作りを模索しています。
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山岡雅顕先生
洲本市健康福祉部サービス事業所参事、洲本市応急診療所所長、洲本市国保堺診療所所長、洲本市国保上灘診療所所長、洲本市国保五色診療所医師、兵庫県立淡路医療センター非常勤医師(禁煙専門外来担当)、洲本市産業医
略歴
1988年 愛媛大学医学部医学科卒
1988年 愛媛大学医学部第1内科勤務
1989年 兵庫県立淡路病院勤務
1990年 南淡町国保沼島診療所勤務
1994年 五色町健康福祉総合センター参事(五色町国保堺診療所および五色診療所勤務)
2000年より現職
日本プライマリ・ケア連合学会 プライマリ・ケア認定医
日本禁煙学会 理事・専門指導医
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金子 惇 先生
横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻
同医学部臨床疫学・臨床薬理学講座 准教授
2008年に浜松医科大学卒業、沖縄県立中部病院初期研修、沖縄県立中部病院プライマリ・ケアコース後期研修、2011年より沖縄県立北部病院附属伊平屋診療所、2014年よりCFMD東京リサーチフェロー、2018年より浜松医科大学 地域家庭医療学講座 特任助教を経て2020年4月より横浜市立大学大学院データサイエンス研究科ヘルスデータサイエンス専攻 講師、2023年4月より現職
東京慈恵会医科大学 臨床疫学研究部 「地域医療プライマリケア医学」博士課程修了
Western University, Master of Clinical Science (Family Medicine)修了
Western University, PhD (Family Medicine)在学中
日本プライマリ・ケア連合学会 家庭医療専門医・指導医
日本内科学会 内科認定医・総合内科専門医
日本専門医機構 総合診療専門医
最終更新:2024年03月20日 20時05分