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運営・管理の道具箱 第3回/リーダーシップ

中間管理職と真のリーダーシップとの微妙な半歩の違いは、プレッシャーの下で優雅さを保てるかどうかだろう。(ジョン・F・ケネディ/1917〜1963)

好かれなくてもよいから、信頼はされなければならない。嫌われることを恐れている人に、真のリーダーシップはとれない。(松下幸之助/1894〜1989)

暗ければ、民はついて来ぬ。(坂本龍馬/1836〜1867)

荒波はリーダーシップを試す本当のテストである。穏やかな海では、どんな船長でもよい船長だろう。(スウェーデンのことわざ)

リーダーになる前は、成功とはすべて自分自身の成長を指している。だが、リーダーになれば、成長とは他人の成長を意味する。(ジャック・ウェルチGE社CEO/1935〜)

創業当時、私が「世界的視野に立ってものを考えよう」といったら噴き出したヤツがいた。(本田宗一郎/1906〜1991)

リーダーシップ持論

リーダーシップといわれると、あなたはどのような人物や格言を思い出すだろうか。松下幸之助、坂本龍馬、武田信玄、本田宗一郎、稲盛和夫、ウォルト・ディズニー、ジャック・ウェルチ、ガンジー、マザー・テレサ、アントニオ猪木など、古今東西、私たちはリーダーといわれてきた人とその時代を生き、また彼らに影響を受けながら生活をしてきた。
リーダーといわれる人たちの共通の特徴がある。彼らはリーダーシップに関する格言をいくつも残していることである。その格言は、彼らの経験に基づいているものであり、現在でも同じような立場・境遇のリーダーたちの胸に響き、その教訓は活かされている。リーダーたちの格言からは「優雅さを保つ」、「信頼を得る」、「嫌われることを恐れない」、「明るさ」、「楽観性」といったリーダーとしての資質を示すものや「リーダーを務める以上、衝突(荒波)は避けて通れない」、「他人の成長に徹すること(利他主義)」などの心構えなどを学ぶことができる。
しかし、これらの格言は、リーダーたちがそれぞれの性格、能力の強みを活かし、おかれた状況や立場、フォロワーの支えなどの状況がそろったうえで得た教訓であるため、個別性が高いことも事実である。言い換えると質の高い「持論」ともいえる。持論は自分なりの信念であるので、偉大なリーダーたちの持論を他人がまねたとしても、彼らのようにうまくいくとは限らない。なぜなら、その持論はその人の性格や能力に基づいているからである。
しかし、ここ最近、このリーダーシップの「持論」が注目されている。金井(神戸大学大学院経営学研究科)は、リーダーシップは、時と状況や、どのような立場の人がやるかによって、その効果・効用は異なってくることを前提としたうえで、現場でリーダーシップを発揮するためには自らの「持論」を言語化する重要性を説いている。また、石川(立教大学経営学部)はリーダーシップの研究者の立場から、リーダーシップ理論は一人のリーダーの持論に留まらず、数多くの経験に基づいているものであり、検証作業を通じて正しいと実証されている点においては有意義としたうえで、理論を現場で活用するためには、自分の性格・能力、おかれた状況や立場、フォロワーの特性などを勘案して「持論」に置き換えることの重要性を説いている(図1)。
  • https://www.primarycare-japan.com/pics/news/news-919-1-1.jpg
リーダーシップの研究者たちは、リーダーシップを発揮するためには、どのような標準化されたトレーニングを受けるよりも、持論を鍛えたほうが有効としている。
リーダーシップ研究の歴史は長く、これまで多くの効果的なリーダーシップ・スタイルが提唱されてきたが(表1)、 書籍や文献を通読したからといって、実際の現場で効果的なリーダーシップを発揮できるとは限らない。その理由は、リーダーシップ理論を学んだのち、それを自分の現場にどのように適応するべきかといった内省、つまりリーダーシップ持論の鍛え方が足りないことが一因となっている。さらに、世の中には「◯◯型リーダーシップ」といった数多くのリーダーシップ・スタイルが存在しており、初学者はどのリーダーシップ理論が正しいのかと混乱してしまうことがある。リーダーシップ理論は、個人の性格や能力の強み、おかれている環境で効果は変わってくるため、万人が使ってどの状況下でも発揮できるものでもない。自分にとって、どの部分的が使えて、どの部分的は使えないということを判断しながら読み進めていかなければ、理論は多く知っているが現場では効果的なリーダーシップを発揮できていないという状況に陥る。
繰り返しになるが、自分たちの現場でリーダーシップを発揮するには、どのような標準化されたトレーニングを受けるよりも、持論を鍛えたほうが有効である。持論を言語化し、それがフォロワー、職場、自分に対してどのような影響を及ぼしているかを繰り返し検証することでリーダーシップ持論は洗練されていく。リーダーシップ理論は、その持論に新たな気づきを与えてくれる。自分のリーダーシップ持論は何だろう。思いつかなければ書き出してみてほしい。

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最終更新:2024年09月04日 00時00分

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