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【地域で活躍する看護師紹介⑭】一穂会西山ウェルケア介護老人保健施設 坂本宏美さん 編

プライマリ・ケア領域で活躍する看護師を知っていますか?
シリーズでお伝えする【地域で活躍する看護師紹介】。
今回は、静岡県浜松市にある「一穂会西山ウェルケア介護老人保健施設」で勤務している坂本宏美さんの活動を紹介します。

Q.これまでどのような看護の道を歩まれてきましたか?

看護師へのあこがれは、自分自身の経験が礎になっています。
幼い頃に扁桃腺肥大で発熱を繰り返し、突発での病院受診や手術経験から自然に芽生えたように思います。

そして、目標とする看護師となってからは、急性期病院手術室・訪問看護・診療所看護師として勤務し、その間にケアマネジャーや静岡県西部糖尿病療養指導士の資格を取得しました。

政令指定都市である浜松の診療所では、プライマリ・ケアを実践する所長の元で、外来診療・健診・訪問診療・往診・保育園を含めた企業への出張健診、所長が嘱託医を担う障害者施設内科健診・労働災害に伴う呼吸器特診・被爆者健診など、多岐に渡る業務に従事してきました。
そのような日々の中で、所長と共に地域医療に少しでも貢献したいと模索している時に、プライマリ・ケア看護学の本を紹介されました。
これまでの経験がより明確に意味づけられ、看護師への期待と役割が大きく変化していると感じ、資格取得にチャレンジしました。
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Q.プライマリ・ケアの現場で、どのような活動をされてきましたか?

プライマリ・ケアの現場で、自身が取り組んできたことを紹介します。

診療所看護師として

①個人や家族の健康を守る外来機能

勤務していた診療所は、創立45年間かかりつけ医として幅広い世代の方が受診します。
3世代で受診されることもありました。
ご本人、お子さま、孫世代の家族背景や病歴を理解しながら看護を行うようにしていました。

②地域包括ケアとなる在宅支援

在宅で往診する患者さん一人一人に、多職種でチーム医療を提供してきました。
また、メンバー間では情報共有に努めてきました。
この10年は、サービス付き高齢者住宅で亡くなる方を看取る機会が増えたため、高齢者住宅の職員のグリーフケア含めたカンファレンスを開催するようになりました。
現在は、それぞれの思いを表出したり、生前からお別れのあいさつをしあうことや、患者さんに聞こえるように患者さんの好きな歌を歌い、最期の言葉かけを行うなど、亡くなられた方への感謝といたわりの気持ちをお伝えするような取り組みをしています。
また、入居者と共に見送るお別れの会を行っています。
このような取り組みは、高齢者住宅での看取りのあり方を変えることにつなげることができたと思います。

③地域の健康問題に対処する地域支援機能

経済的課題は、健康にも大きく影響を及ぼします。
勤務していた診療所では、県内で数少ない無料低額診療事業を行っていました。
生活保護につなげる支援や国内に在留資格がなく入国管理局への収容が健康上及び人道的理由から一時的に免除された外国人の支援などです。
通常の診療所ではあまり対応することがない、よろず相談所のような地域住民の困りごとに取り組んできました。

④診療所をマネジメントする役割

週1回行われる多職種カンファレンスで、通院中や往診、地域相談などから、ケアの方向性などをみんなで検討する必要がある患者さんについての情報共有を行っていました。
また、大学の家庭医療学の学生の実習機関として後進育成のサポートや、学習会を行って質の向上を図るなど職員の育成をしてきました。
その他、診療所の経営管理、リスク管理などについて、微力ながら努めてきました。

日本プライマリ・ケア学術大会実行委員として

大会長が所属される浜松医大のつながりから、2024年6月に行われた日本プライマリ・ケア学術大会実行委員として、1年以上運営のお手伝いに携わり、貴重な経験をすることができました。

浜松大会では、新たな取り組みがたくさんありました。
ダイバーシティ・インクルージョンの部門に所属し、年齢や性別、障害の有無、国籍などにかかわらず、誰もが参加しやすい大会にするという理念のもとで、SDGSに沿った環境への取り組み、コンシェルジュデスク設置、次世代を育てる中高生企画などに携わりました。
また、運営会議に参加するたびに学びを深めることができ、実行委員会を通じて知り合った多くの医師や関係する方々の「人を支える暖かい視点」に触れて、私の心は癒されました。

大会後もSNSなどを通じて、地域で更に活躍する先生方の様子を伺い、これからのプライマリ・ケアの発展がますます楽しみになりました。

老健看護師として新たなスタート

准看護師から数えて40年の節目となる2024年4月から、長く勤務した診療所を離れて介護老人保健施設(老健)に勤務しています。
2020年人口動態統計では、自宅で亡くなる方の割合は15.7%、病院が68.3%、老人ホームが9.2%ですが、自宅で最期を迎えることを希望する人は58.8%であり、実際とは大きな開きがあります。
私は5年前から、行政の依頼で地域包括ケア推進ACP(Advance Care Planning)部会員として、「人生会議手帳」を浜松市の住民や医療介護従事者に普及・啓発を行ってきました。
患者さんの希望と現実の隔たりを目の当たりにして、終末期含めた24時間ケアを行う老健で、これまでの経験を活かしたいと思いました。
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Q.プライマリ・ケア領域で働く魅力(やりがい)はなんですか?

プライマリ・ケア領域で働く看護師の魅力は、地域包括ケアの実践となる多職種連携において、各職種間や病院、地域の橋渡しをして地域医療に貢献し、最適なケアを提供できるようにチームの一員として支えることができることです。
また、日本プライマリ・ケア連合学会に入会し、研修や学術大会などを通じて沢山の出会いがありました。
プライマリ・ケア看護の学びを深めることができると同時に、全国の仲間とつながっていることを感じることができます。
そして、プライマリ・ケア領域での実践を通して、患者さん1人1人の人生を大切にし、ライフヒストリーを聴くことで、健康観や家族・生活背景が浮かび、ヘルスケアにつなげることができるようになりました。
また、これまでの経験が支援につながり、学びを深めることで引き出しが多くなり、患者さんや働く職場・地域に還元できるようにもなりました。
患者さんの笑顔と感謝の言葉に励まされる日々です。
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    能登半島地震災害メンバーと

Q.プライマリ・ケア領域で働く看護職や働こうと考えている仲間へのメッセージ

今回この記事を書くにあたり、一度お断りをしました。
それは、これまでに記事を書かれた診療所に勤務する看護師とは異なり、診療所看護師を辞した私には、適任でないと思ったからです。
しかし、現職場である老健も、多職種連携、地域包括ケア、患者さん中心の医療実践現場です。
働く場所は異なっても、プライマリ・ケア看護師の役割は続いていると感じます。

私はこれまで多くの看取りを経験してきました。
高齢化が加速するわが国では、終末期ケア含めたエンドオブライフケアも重要です。
私は、この職場で、謙虚に誠実に自身のウェルビーイングも大切にしながら働き続けたいと思います。
職場は異なっても、学ぶ姿勢を持ち続けることで、日々の看護業務がより患者さんに喜ばれ、看護師の資質向上やまちづくり、地域貢献にも関わることができると感じています。

御礼・感謝

自分がこれまで看護職を続けてこられたのは身近な家族や先輩・患者さん・一緒に働くスタッフのおかげだと思います。 
好奇心旺盛でおせっかいな性格から、何度も壁にぶち当たってもきましたが、それも含めて今の自分があると思っています。
今回、記事を書くという貴重な機会を与えていただき、自身のこれまでの看護人生を振り返ることができました。
ありがとうございました!

編集後記

今回は、日本プライマリ・ケア連合学会認定プライマリ・ケア看護師の資格をお持ちの坂本さんに、プライマリ・ケア領域で働く看護の魅力を教えていただきました。

「ナースのお仕事」では、素敵な看護師の活動を引き続き紹介していきたいと思います。

あなたもぜひプライマリ・ケア領域の看護師の仲間になりませんか?
お待ちしています!

最終更新:2025年06月10日 17時33分

看護師部会 広報活動支援部門

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