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がん診療における「二人主治医制」の意義と課題
はじめに
がん診療の進歩により、患者さんは長期にわたって治療することになったり、寛解後に長い年月経過観察を受けるようになっています。これまでは病院専門医が中心に診療を担うことが多かったのですが、治療が長期化するにつれて、そもそもの生活習慣病の管理や精神的サポート、地域での療養支援など、プライマリ・ケア医の役割がますます重要となっています。そこで注目していきたいのが「二人主治医制(shared care)」です。
二人主治医制とは
二人主治医制については、高齢者医療・在宅医療委員会にてその利点などを提起されていますが、病院専門医と地域のかかりつけ医(プライマリ・ケア医)が協力して診療を行う仕組みです。病院では専門的ながん治療を、地域では生活支援や慢性疾患の管理、日常の相談を担い、両者が連携することで患者のQOL(生活の質)を高めます。
患者側のメリットとして、病院と地域の両方に相談窓口があり安心できる。がん以外の健康問題も継続的に取り組むことができ、がんの治療とともに生活や就労についても相談することができる。在宅療養や地域資源につながりやすい。などがあります。
医療者側のメリットとしては、専門医は専門領域に集中でき、双方向のコミュニケーションが実現すれば、切れ目のないケアを提供でき、スムースでより質の高い診療が提供できる可能性がある。
高齢者医療・在宅医療委員会では、二人主治医制について検討を重ねており、様々な医療ニーズに応じて二人主治医制の有用性について提案を行なっています。主に在宅医療を中心として提案されてますが、がん診療についても同様なことが言えます。(https://www.primarycare-japan.com/news-detail.php?nid=746)
医療者側のメリットとしては、専門医は専門領域に集中でき、双方向のコミュニケーションが実現すれば、切れ目のないケアを提供でき、スムースでより質の高い診療が提供できる可能性がある。
高齢者医療・在宅医療委員会では、二人主治医制について検討を重ねており、様々な医療ニーズに応じて二人主治医制の有用性について提案を行なっています。主に在宅医療を中心として提案されてますが、がん診療についても同様なことが言えます。(https://www.primarycare-japan.com/news-detail.php?nid=746)
がん診療における課題
一方で、いくつかの課題も明らかになっています。
プライマリケア医ががん治療・有害事象・フォローアップ法・副作用対応などに慣れていない、という自己評価・他者期待との間にギャップがあるということです(Miho Kimachi, et al J Gen Fan Med 2022:23 149)また、治療関連の副作用対応や緊急時の判断について責任範囲が不明確であり、両者の連携不足が患者に不安を与えることがあるとの指摘もあります(McMaster Forum 2021)。
実際、日本で行われた調査では、病院医師とかかりつけ医の間で「期待される役割」と「自己認識されている役割」にギャップがあることも報告されています(Chinen et al., BMC Primary Care 2021)。
プライマリケア医ががん治療・有害事象・フォローアップ法・副作用対応などに慣れていない、という自己評価・他者期待との間にギャップがあるということです(Miho Kimachi, et al J Gen Fan Med 2022:23 149)また、治療関連の副作用対応や緊急時の判断について責任範囲が不明確であり、両者の連携不足が患者に不安を与えることがあるとの指摘もあります(McMaster Forum 2021)。
実際、日本で行われた調査では、病院医師とかかりつけ医の間で「期待される役割」と「自己認識されている役割」にギャップがあることも報告されています(Chinen et al., BMC Primary Care 2021)。
小児がんや緩和ケアにおける視点
小児がんや医療的ケア児では、病院での専門治療と地域での生活支援の両立が不可欠です。発育発達を見守り、保育教育との調整、家族支援などはプライマリ・ケアが得意とする分野であり、二人主治医制の意義はより大きいといえます。海外の報告でも、小児がん生存者のケアにshared careを導入することが推奨されています(Wiener et al., Cancer 2020)。
今後の課題
今後、患者がメッセンジャーの役割をせねばならないとの指摘があり(Sharon Lawn, et al Health Expect. 2017 May 3;20(5):1081-1087)、ICTを活用した診療情報の共有がさらに進む必要があると言われています。また、プライマリ・ケア医のがん診療に関する研修機会の拡大も必要です。そして、プライマリ・ケア医も「がん診療のチームの一員」として積極的に関わっていくことが期待されます。
おわりに
がん診療は病院だけで完結しません。二人主治医制を進めることで、患者と家族の安心と生活の質を高めることができます。専門医とプライマリ・ケア医が互いの強みを生かし、限界を補い合うことで、がん診療はより包括的かつ持続可能なものとなると考えられます。
最終更新:2025年10月02日 01時29分