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他科/多職種インタビュー企画 小児科 岡本光宏先生インタビュー 第1回

他専門科や他職種のバックグラウンドを知ることで、コミュニケーションが取りやすくなったり、どのようなプライマリ・ケア医が求められているのか、研修中どのように学んでいったらよいかをイメージできるようになるため、インタビューを企画しました。

今回は、小児科ファーストタッチの著者である兵庫県立丹波医療センター小児科の岡本光宏先生にインタビューを行いました。(全体で3回)

第一回は、岡本先生ご自身の小児科医となった経緯、総合診療科の小児科研修についてです。

ゼンカイジャー、子供を褒めると親は喜ぶ、父親には丁寧な説明を、、、などなど興味深い話が盛り沢山です!!(聞き手:専攻医 鈴木/石田/島田)

① 自己紹介と小児科を選んだきっかけ

鈴木:今日はよろしくおねがいします。まずは、岡本先生の自己紹介と小児科を選ばれたきっかけを教えていただけますでしょうか?

岡本先生:よろしくおねがいします。僕は奈良県立医科大学卒業で地元が神戸だったので初期研修から神戸大学に戻ってきました。12年前に神戸大学の小児科研修プログラムという初期研修プログラムがありました。小児科志望だったので、このプログラムに入ることに決めていました。定員は2名で、僕と今神戸大の先生が選んでました。お金がもらえるとかそういうのじゃないんだけど、初期研修2年間のうち12ヶ月小児科を回ることが決まっていて、その代わりに精神科は2週間、地域は2週間、内科は4ヶ月でいいというものでした。僕はその時から小児科になろうと決めていたので、小児科を長く研修できるプログラムはいいなぁとマッチングの時に思って選びました。

 小児科をどうして選んだかというと、かっこいいエピソードはなくて、父親が小児科医だったからという普通のエピソードになってしまいます。父親が勤務医だったり、途中から開業したりとかいうこともあって、父親が働いている姿がとても身近にありました。僕が小学生だったとき、父親が校医として体育館で集団健診している姿を見て、子供心ながら誇らしい気持ちになりました。なんとなくそういう医者になりたいなぁというのはありました。僕自身、結構精神年齢が幼くて、ゲームも好きだし漫画も好きだし、アニメも好きだし。小児科医になってつくづく思うのが、どうぶつの森とか他にもポケモンとか、こういう話が子供達と合うので、元々小児科は向いてるんだろうなぁとは思っています。僕の外来にはちょっと基本ルールがあります。まずは服を褒めたりとか、服についてるキャラクターを褒めたり、最近の子供はどんなのが好きなのかなってセンサーを立てておきます。最近だったら鬼滅の刃の話をしたりとか、その前だったらアナと雪の女王とか。

そういったのが、元々好きだったので向いてるのかなぁって思ってました。父親がとか、自分自身の適性がというところがあって小児科を選びましたね。コースがコースだったので途中でぶれる要素がなかったですね。

鈴木:ちなみに、コースに入る前に悩んだ専門科とかはあったんですか?

岡本先生:なんとなく外科系のイメージは全くなくて、内科は普通にいいなぁと思いました。あとはなんだろうね。まぁでも、皆さんそうなんじゃない?ポリクリっていい指導医に会うと、その科いいなぁって思って、2週間おきにそう思うんじゃない。結局、マッチングの時にどこか1個と決めたら小児科を越えるのはちょっと無理だったかな。

石田:ちょっと話脱線して申し訳ないんですけど、僕もこの前小児科研修を受けていました。個人的には仮面ライダーとか結構好きで、日曜の朝8時の番組とか結構好きです。戦隊モノとかも。

岡本先生:そうね、今ゼンカイジャーですね、すごい!

石田:服を褒めたりは良くするなと思いました。この間はステゴサウルスの靴下はいてる子がいて、「ステゴサウルスすごいねぇ、恐竜好きなの?」みたいな話をしたりして。

岡本先生:やっぱり子供が主役ですからね。子供は病院が好きじゃないので、そこをほぐしてあげると、所見が取りやすくなる。泣いてしまうと聴診すら難しくなる。そういう時に、その引き出しは役に立ちますね。

石田:すいません、ぜんぜん違う話をして。

岡本先生:いえいえ素晴らしいです。そのスタンスで。プライマリ・ケアの先生はこれからも子供を見続けるだろうから。もちろんタイミングを考えてね。ぐったりしているのに、あえてそういう話をする必要はないけれど。咳が出てる、鼻が出てる、でも元気そうな子がいれば、褒めてあげると診察に協力的になることが多いですね。

石田:ありがとうございます。

② 総合診療科専攻医の小児科研修について

岡本先生:プライマリ・ケアの先生が小児科を3ヶ月回ってくる時に、僕らは彼らをどう使えばいいのかという。ファーストタッチでも書いているけど、戦力として期待しているところがあって。できれば見学ばかりにならないのが理想だろうなと思っているんです。後ろに研修医とか専攻医がいて、さぁ僕の診察を見なさい!みたいな感じ。それって医学部5年生の時にやったことがあるような気がする。それでは専攻医の先生達をうまく使えてなくて。学生さんだったらそれでいいと思うんだけれども。1日中見学で終わりましたということになると、プライマリ・ケアの先生にとって本意ではないだろうなぁと思うし、僕らとしてもいい教育ができている訳ではないんだろうなぁと思う訳ですよ。例えば最初の1週間はそれでもいいけど、残りの2ヶ月半は、患者さんをどんどん見て、困ってほしいね。どんどん困ってほしい。舌圧子噛まれて喉が見られないとか、患者さんが途中で怒ってしまうケースとかも経験だと思うし。性格にもよるけど記憶に残るので、どんどん挑戦して、どんどん失敗してもらったらいいのかなぁと思っています。プライマリ・ケアの専攻医の先生には、どんどん外来をね。それは初期研修医に求めていることでもあります。外来の方が楽しいと思うので。個人的に、病棟管理は小児科医に任せちゃえばいいと思うんです。でも、外来はやっぱり小児科医だけでは完結できない状況になっていると思います。そこをプライマリ・ケアの先生が見て、やばいのは送るとか、入院管理はよろしくとか、この辺の棲み分けに関しては後で質問が出てくるんだろうけれど。あぁごめん、脱線しちゃった。

ただ、学んでほしいのは一次診療なのに、研修施設は二次診療機関であるというギャップはあると思っています。

鈴木:研修の話にもなったので、総合診療科の小児科研修というテーマに移っていきたいと思います。先生がさっきおっしゃられていたように経験させてもらうのもとても大事なことだと思ってます。昨日も当直の時に突発性発疹の後で倦怠感が続いて機嫌が悪い子がきてました。機嫌は悪いけど全身状態も良くてちょっとずつ良くなっている経過でした。お母さんに、改善している経過であることを説明している横で、お子さんがギャン泣きしていたんですよ。コミュニケーションについて、元々子供が主役として扱うのが大事なのかなと思いながら小児科研修を始めたのですが、途中で小児科では子供は主役ではあるけれども、保護者は高齢患者さんの付き添いの介護者とは意味合いが違うなと思いました。保護者をもっと意識しないといけないんだなと感じました。保護者の顔色を見たり、お母さんこんな表情してたよっていうフィードバックがあって、今回は保護者に集中して診療をしている状況でした。昨日も指導医の先生が後ろから見てくださっていて、子供さんがお茶飲みたそうな様子だったよとか、一回立ち上がってあやしてあげるようなことをしないと、お母さんは子供さんがずっと泣いててイライラしちゃってるから、先生の話半分くらい頭に入ってないよ。と言われました。子供が泣いているのをシャットアウトしちゃっていたなということを反省しました。こういうコミュニケーションのことって本を読んでもわからないなと思い、それが経験させてもらうことの大事さなのかなと思います。

岡本先生:多分繋がっているんだと思います。子供を褒めることと、親に向かい合うことが。子供にかわいいねぇって話しかけてあげると親は喜ぶからね。親の緊張もほぐれて親からも情報が引き出しやすくなるので、子供と親は別個ではなくて、繋がっている要素があります。先生の中ではまだ、今日は子供とか今日は保護者とか段階的に意識して練習するのはいいと思うんだけど、小児科医にとっては保護者の顔色と子供の顔色はほぼ同値になって来ていて、子供がイライラしていたら親もイライラしてくるし、子供がニコニコしていると親もリラックスしてくのでどちらも一緒、アプローチしやすい方からしたらいいと思います。

石田:僕も小児科で3ヶ月研修させていただきました。本当にいろんな親御さんがいるんだなっていうことを実感して、その症例1つ1つに違った対応をしていたなというのが面白いと思いました。診察室でお母さんと僕が話して、お父さんが子供をあやしていたのですが、お父さんは子供をあやすのに慣れていないから「お母さん、僕と代わってよ」と診察中に言ったり。逆に、お父さんが子育てを頑張っている家庭もありました。おばあちゃんとか親戚が近くにいなくて通院するのが大変な親子とか。仕事の関係で受診や入院ができないという方もおられました。

先ほど先生がおっしゃっていた数をこなすということが、色んな経験、色んな引き出しを持っていることで臨機応変な対応に繋がり、小児を診る者として深みが出るんじゃないかなぁと思いました。

岡本先生:石田先生の話を聞いていて、ある程度コミュニケーションもパターン化されてくるかなと思いました。コミュニケーションって無限にあるわけじゃないから、その分野のいい本がなかったら、書けそうだなぁと思ったりして。

例えば、お父さんが子供を連れて来たというケースで、お父さんは子供の様子の観察不足のことがあります。昨日の晩は寝てましたか?とか、いつから熱が出てますか?とか、今朝は朝ご飯食べられましたか?とかいう質問にうまく答えられないんですね。個人的に感じるのは、お父さんは医者の質問にうまく答えられないことで不安が強くなっているケースがあります。子供を普段見ていない父親の方が、熱が3日続いていることに不安がったりするから説明は省略できないなぁと思います。あと、その説明はできるだけ文書で渡しています。血液検査をしたんだったらコメントをできるだけ細かく書いています。というのも、お父さんは家に帰って、お母さんにプレゼンテーションするんですよね。その時に、うまく説明ができなくて、「なんか大丈夫って言われた」という説明になると今度はお母さんが心配になられたりします。できるだけこう言いましたというのは紙に書くとか、カルテのPlanのところだけワードに貼り付けて「これお母さんに説明するときに使ってください」って渡したりしています。現状、今の日本ではお母さんと子供が中心ですが、お母さんが来ない時もあるんですよね。ちょっと説明をする時に、メモを渡すことでうまく行くことがあります。こんなの多分、色んなパターンがあるでしょうね。検査をどんどんしてくれっていう親への対応とかね。入院ができないって言われてしまった時の対応とかね。他にも些細な件だけれども、入院できるんだけれどお母さん1人しか動けないケースね。点滴を先に入れてしまうとうまく行かないんですよ。これは一旦お母さんを家に帰らせて荷物をとって来てもらってから点滴をとる順番にしないと身動きが取れなくなってしまいます。この辺のちょっとしたコツがあって、どんどん失敗してくれと言った手前なんだけれど、そういう失敗されるとかわいそうかなぁと思ったりします。確かにこういうこと書いてある本ってないよね。

鈴木:先生の話を聞いているだけでコミュニケーションに関しても「こんなことがあるんだ」と気づきが得られて勉強になるなぁと思ってます。

岡本先生:こういうの20−30パターンくらい集めて、コミュニケーション術みたいな。誰か書くんじゃないかなぁ。笑

(第二回では、若手の指導で困ったこと、小児科医の一般的なキャリアについて伺います。

専攻医は自信満々で診療を、小児科医は子供の総合医、、、などなど心に響く話を沢山していただきました!!)

最終更新:2022年06月26日 11時08分

専攻医部会

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