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vol.59/「地域コミュニティに積極的に出ていくような家庭医に!」【専攻医】工藤千佳先生
今回インタビューに応じてくださったのは、専攻医の工藤千佳先生。高校生で医師を目指した時点ですでに総合診療に興味を持っていたという工藤先生は地元青森を支える家庭医になることが目標。そんな先生にこれまでの歩みとこれから取り組んでいきたいことなどを語っていただきました。
地元で働くことを前提に家庭医を目指す
ー 先生が医師を目指したきっかけを教えてください。
高校生の時に学校が企画していた医師体験に参加したのがきっかけです。家族に医療者がいなかったので医師の仕事は想像もつかなかったのですが、上北郡六ヶ所村にある「六ヶ所村医療センター」で多職種カンファレンスを見学した時に、医師だけでなく看護師さんやケアマネージャーさん、リハビリの理学療法士さんや作業療法士さんなど、さまざまな職種の方がオープンに意見交換している姿を見て「こういう医療のやり方もあるんだ」と面白く感じました。他に「青森県立中央病院」(青森市)や「あおもり協立病院」(青森市)でも見学させていただき、スタッフ側として働くのも楽しそうだなと感じたんです。
もともと生物が好きだったこともあり、興味を持ち続けられる仕事だなと思い、医師を目指すようになりました。地元で働けることも理由のひとつですね。進路を決めたのは高校2年の冬で、地元の弘前大学か地域医療に力を入れている自治医科大学のどちらかを考えていましたが、最終的に弘前大学を選びました。
もともと生物が好きだったこともあり、興味を持ち続けられる仕事だなと思い、医師を目指すようになりました。地元で働けることも理由のひとつですね。進路を決めたのは高校2年の冬で、地元の弘前大学か地域医療に力を入れている自治医科大学のどちらかを考えていましたが、最終的に弘前大学を選びました。
ー 医学部入学時にはどんな医師になりたいと考えていましたか?
弘前大学にはAO入試で臨んだのですが、その時、自己推薦書に「総合診療医を目指している」と書きました。高校生の頃から総合診療という言葉は知っていたんです。ちょうど19番目の専門医として新しくできた直後で、新聞などで「今後必要になってくる」と報じられていました。自分の地域も医療過疎が点在していて、県全体で医師不足が言われていたので、地元で働くことを前提に考えるなら総合診療医がニーズにマッチしているんじゃないかと思っていました。もちろん高校生の目線ですから、具体的なことは全然知らない状態ではあったのですが。
他の医師の皆さんは医学部に入ってからとか、研修医になってから総合診療を知ったという方が多いようですね。私の場合は早い段階から関心を持ったものの、キャリアモデルもまだあまりいない時期。でも、だからこそ可能性を感じていたのかもしれません。
他の医師の皆さんは医学部に入ってからとか、研修医になってから総合診療を知ったという方が多いようですね。私の場合は早い段階から関心を持ったものの、キャリアモデルもまだあまりいない時期。でも、だからこそ可能性を感じていたのかもしれません。
ー 医学部で総合診療について学んでみて、どう感じましたか?
大学内では総合診療がメインストリームではないんだなと意外に感じました。まだ新しい分野ということもあって「何をやっているのかよくわからない」というイメージが大学の先生方の中にもあるように見えました。ただ一方で、地域医療の先生が講義に来てくださる授業もあって、大学と地域という立場は違うけれど、どちらも必要なんだなと思いました。
在学中は内科など他の科にも興味を持ちましたが、症候学など総合診療系の授業が面白いと感じていました。総合診療医には内科などの医学的知識がベースになるので、まずそういった土台をしっかり身につけることも大切だとも思っていましたし、手を動かすのも好きだったので外科系にも興味がありましたね。
同期の中にはAO入試の時は総合診療を目指すと書いていた学生がけっこういたんですけど、初期研修が始まる頃には「あれ、いないな」という感じになっていました。総合診療を選ばなくなった理由は人それぞれで、実習をやってみて他の分野が面白いと感じて進路を変えた人もいました。
大学の先生方の反応は半々でしたね。スペシャリストとして一つの分野を極めるのが医師のあるべき姿だと考える先生もいれば「隙間を繋いでくれる総合診療の先生がいてくれたら本当にありがたい」と声をかけてくださる先生もいて、それぞれが普段何を考えて診療しているかによるのかなと感じていました。
在学中は内科など他の科にも興味を持ちましたが、症候学など総合診療系の授業が面白いと感じていました。総合診療医には内科などの医学的知識がベースになるので、まずそういった土台をしっかり身につけることも大切だとも思っていましたし、手を動かすのも好きだったので外科系にも興味がありましたね。
同期の中にはAO入試の時は総合診療を目指すと書いていた学生がけっこういたんですけど、初期研修が始まる頃には「あれ、いないな」という感じになっていました。総合診療を選ばなくなった理由は人それぞれで、実習をやってみて他の分野が面白いと感じて進路を変えた人もいました。
大学の先生方の反応は半々でしたね。スペシャリストとして一つの分野を極めるのが医師のあるべき姿だと考える先生もいれば「隙間を繋いでくれる総合診療の先生がいてくれたら本当にありがたい」と声をかけてくださる先生もいて、それぞれが普段何を考えて診療しているかによるのかなと感じていました。
総合診療として青森県の医療を支えている
ー 初期研修で印象に残っていることはありますか?
総合診療医は守備範囲が広いですから、初期研修ではできるだけいろいろな科をまわれる青森県立中央病院を選びました。さまざまな見聞を広げることが、将来につながると思ったんです。
県内基準ではハイパー寄りですし指導医たちは多忙です。青森県立中央病院が特殊だったのは麻酔科が2ヶ月必修だったことですね。県内ではここだけだと思いますが、そこで患者さんの(血管を確保する)ルート取りや採血、(気道を確保するための)気管挿管など、いろいろな手技をさせてもらったんです。この経験は本当にどこの病院に行っても生きていて、物怖じせずに「はい、やります」とできるようになりました。
県内基準ではハイパー寄りですし指導医たちは多忙です。青森県立中央病院が特殊だったのは麻酔科が2ヶ月必修だったことですね。県内ではここだけだと思いますが、そこで患者さんの(血管を確保する)ルート取りや採血、(気道を確保するための)気管挿管など、いろいろな手技をさせてもらったんです。この経験は本当にどこの病院に行っても生きていて、物怖じせずに「はい、やります」とできるようになりました。
ー 後期研修先として十和田市立中央病院を選んだ理由は何でしょう?
地域枠だったので青森県内の医療圏内であれば自由に選べたのですが、十和田を選んだのは、先輩が直近で3人いて、同期も何人か入る予定だったからです。1人で何かするより、相談し合える身近な先輩や同期がいた方が安定しやすいと思ったんです。また、病棟と在宅と外来をバランスよくやっている総合診療科だったのも魅力でした。
初期研修をした青森県立中央病院は2次・3次医療機関でICUや救急メインの総合診療です。専攻医の先生も自治医科大学出身の方がいたりと、そちらはそちらで学ぶことが多かったと思っています。実際、救急のローテートは県立中央病院でさせていただきました。どちらもフィールドは違いますが、総合診療として青森県の医療を支えているなと感じています。ただ、自分が最終的に目指したいのは家庭医療や在宅の方向なので、最終的な着地点から逆算して、十和田が今一番合っていると思って選びました。
初期研修をした青森県立中央病院は2次・3次医療機関でICUや救急メインの総合診療です。専攻医の先生も自治医科大学出身の方がいたりと、そちらはそちらで学ぶことが多かったと思っています。実際、救急のローテートは県立中央病院でさせていただきました。どちらもフィールドは違いますが、総合診療として青森県の医療を支えているなと感じています。ただ、自分が最終的に目指したいのは家庭医療や在宅の方向なので、最終的な着地点から逆算して、十和田が今一番合っていると思って選びました。
ー 日本プライマリ・ケア連合学会との関わりについて教えてください。
学会のことを知ったのは学生の時で、家庭医療学夏季セミナーに参加してスタッフもやらせていただきました。学会時代にはまだ入っていませんでしたが、支援部の先生方にはかなりお世話になりましたね。学生時代は総合診療や家庭医療を目指す仲間が周りに少なかったので、その意味では学会の方々との交流を通してモチベーションを高く保てていたと思います。先輩の総合診療医の先生方との出会いや情報収集の場として本当に役立ちました。
専攻医になってからは、上司の勧めもあって専攻医部会に入りました。専攻医1年目の時に研修支援部に入って、ポートフォリオなど専攻医が必ずやらなければいけないことを支援する活動をしています。家庭医自体が少ないので、ポートフォリオを指導してくれる先生もなかなかいないんです。総合診療のポートフォリオと家庭医のポートフォリオは全然違うのですが、自分は最終的に家庭医を目指しているので、今のうちに家庭医のポートフォリオの書き方を知りたくて。他の先生方と勉強会を開いたり学会でセッションを出したりして、そこから今は副代表をやらせていただいています。
専攻医になってからは、上司の勧めもあって専攻医部会に入りました。専攻医1年目の時に研修支援部に入って、ポートフォリオなど専攻医が必ずやらなければいけないことを支援する活動をしています。家庭医自体が少ないので、ポートフォリオを指導してくれる先生もなかなかいないんです。総合診療のポートフォリオと家庭医のポートフォリオは全然違うのですが、自分は最終的に家庭医を目指しているので、今のうちに家庭医のポートフォリオの書き方を知りたくて。他の先生方と勉強会を開いたり学会でセッションを出したりして、そこから今は副代表をやらせていただいています。
情報をどんどん発信して仲間を増やしていきたい
ー 先生が理想とする医療について教えてください。
まだ自分の中でも完全に定まっているわけではないのですが、理想の医師像を考えた時に「特定の臓器や分野に強いスペシャリスト」というよりは、地域の身近なところで相談しやすい、いわゆる「かかりつけ医」のような存在がイメージにあります。それに一番近い役割が家庭医なのかなと思っています。
今、青森県内は高齢化が進んでいる一方で、地域の小規模病院が潰れてしまうこともあります。今後のことを考えると、在宅医療など病院外で患者さんの最期まで生活を支えていく分野がますます必要になってくると思うので、そういったところもカバーができる医師になりたいというのが目標のひとつです。
私の家庭医を目指すモチベーションの原点は「こういう医師がいたら自分だったら嬉しいな」という気持ちなんです。スキル習得は大変ですし、覚悟も必要ですが、経験を積みながら自分が理想とする医療が提供できるように成長していきたいと考えています。
今、青森県内は高齢化が進んでいる一方で、地域の小規模病院が潰れてしまうこともあります。今後のことを考えると、在宅医療など病院外で患者さんの最期まで生活を支えていく分野がますます必要になってくると思うので、そういったところもカバーができる医師になりたいというのが目標のひとつです。
私の家庭医を目指すモチベーションの原点は「こういう医師がいたら自分だったら嬉しいな」という気持ちなんです。スキル習得は大変ですし、覚悟も必要ですが、経験を積みながら自分が理想とする医療が提供できるように成長していきたいと考えています。
ー 総合診療の中で、家庭医はどのような役割を担うとお考えですか。
「家庭医」という名称から私がイメージするのは、少なくとも病院にずっといる医師ではないだろうなということです。どちらかと言うと患者さん側のフィールドにより近い存在、その人の家や暮らしている地域コミュニティに積極的に自分の足で出ていくのが家庭医なのかなと。
総合診療自体、特定の臓器や年齢層を診るのではなく、その人の全身、そして時間軸で考える医療だと思います。入院している時からリハビリ・退院・仕事復帰まで、生涯にわたって生活する範囲全体を広い視点で診る。そういう総合診療の考え方を持った医師が様々な場面で増えていくことが大切だと思っています。
医師としてできるのは医学的に正しい知識を、その人の生活に応用すると何ができるかという具体的なアドバイスをして、医学の面から生活を支えたり手助けしたりすることです。ただ、それは医師だけではできません。他の職種の方たちの協力が必要なのは間違いないでしょうね。
総合診療自体、特定の臓器や年齢層を診るのではなく、その人の全身、そして時間軸で考える医療だと思います。入院している時からリハビリ・退院・仕事復帰まで、生涯にわたって生活する範囲全体を広い視点で診る。そういう総合診療の考え方を持った医師が様々な場面で増えていくことが大切だと思っています。
医師としてできるのは医学的に正しい知識を、その人の生活に応用すると何ができるかという具体的なアドバイスをして、医学の面から生活を支えたり手助けしたりすることです。ただ、それは医師だけではできません。他の職種の方たちの協力が必要なのは間違いないでしょうね。
ー 今後、先生ご自身が取り組んでいきたいことは何ですか。
青森県内で働き続けたいと思っています。専攻医として県内を回って気づいたのは、専攻医がいてもバラバラで孤軍奮闘している地域がけっこう多いということです。せっかく興味を持ってこの分野に来てくれたのに、指導医とうまくいかなかったり、一人で何を勉強すればいいかわからなくて挫折してしまう方をできる限り少なくしたいと思っています。
私自身、学生時代は総合診療や家庭医療を目指す仲間が周りにあまりいなくて、どこから情報を得ればいいのかわからない状況でした。だからこそ今の学生さんがそういう思いをしないよう、情報発信をしていきたいんです。青森でもこういう先生たちがいて、ここにアクセスすれば会えるんだよとハードルを下げられたらいいなと。全国から十和田に見学に来てくれる学生さんもいます。発信はまだ弱いところですが、プログラム作りも進めているので、どんどん発信して仲間を増やしていきたいですね。
私自身、学生時代は総合診療や家庭医療を目指す仲間が周りにあまりいなくて、どこから情報を得ればいいのかわからない状況でした。だからこそ今の学生さんがそういう思いをしないよう、情報発信をしていきたいんです。青森でもこういう先生たちがいて、ここにアクセスすれば会えるんだよとハードルを下げられたらいいなと。全国から十和田に見学に来てくれる学生さんもいます。発信はまだ弱いところですが、プログラム作りも進めているので、どんどん発信して仲間を増やしていきたいですね。
プロフィール
<経歴>
2022年3月 弘前大学医学部卒業
2024年3月 青森県立中央病院 初期研修修了
2024年4月 十和田市立中央病院総合診療科 後期研修開始
<所属学会>
日本プライマリ・ケア連合学会
日本内科学会
2022年3月 弘前大学医学部卒業
2024年3月 青森県立中央病院 初期研修修了
2024年4月 十和田市立中央病院総合診療科 後期研修開始
<所属学会>
日本プライマリ・ケア連合学会
日本内科学会
取材後記
インタビューの終わりに差し掛かった時、「工藤先生にとって家庭医とは?」と尋ねてみました。少し考えたあと、先生が口にした言葉は「おせっかい」。患者さんに興味を持って、相手の懐に飛び込んでいくくらいの気概が大切だから、比較的おせっかいなところが求められるのではないでしょうか……と語る先生の表情からは、患者さんのことを真摯に考えている姿勢が伝わってきました。
高校時代の医師体験で多職種連携の医療に触れ、総合診療医を志した工藤先生。現在は専攻医として臨床の現場で日々経験を積みながら、将来は家庭医として地域に根ざした医療を実践したいと目を輝かせていました。青森県内の孤軍奮闘する専攻医をサポートしたい、学生たちが情報を得やすい環境を作りたいという思いも印象的です。地元青森を支えていこうとする若き医師の、これからの成長に大いに期待したいと思います。
高校時代の医師体験で多職種連携の医療に触れ、総合診療医を志した工藤先生。現在は専攻医として臨床の現場で日々経験を積みながら、将来は家庭医として地域に根ざした医療を実践したいと目を輝かせていました。青森県内の孤軍奮闘する専攻医をサポートしたい、学生たちが情報を得やすい環境を作りたいという思いも印象的です。地元青森を支えていこうとする若き医師の、これからの成長に大いに期待したいと思います。
最終更新:2026年01月30日 16時18分
















