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プライマリ・ケア Field LIVE!
日本プライマリ・ケア連合学会東北ブロック支部長インタビュー
日本プライマリ・ケア連合学会の北海道から九州まで、8つの地域で活動するブロック支部。
今回、『プライマリ・ケアFieldLive!』の特別編として、各ブロック支部の取り組みや活動についてご紹介する本企画。今回は青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島で組織される東北ブロック支部長 菅家智史先生にお話を伺いました。
今回、『プライマリ・ケアFieldLive!』の特別編として、各ブロック支部の取り組みや活動についてご紹介する本企画。今回は青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島で組織される東北ブロック支部長 菅家智史先生にお話を伺いました。
東北ブロック支部で大切なこと 『医療資源の少なさを「支え合い」で乗り越える取り組み』
広大な面積と医師不足。「日本の未来」を先取りする東北の厳しい現状と使命。
― まず、現在の東北ブロック支部の組織体制と、これまでの歩みについて詳しく教えてください。
東北ブロック支部は青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島の6県で構成されています。組織として非常に大きな節目となったのが、2025年度末のことです。長らく未設立の状態が続いていた青森県支部が、現地の先生方の熱意ある尽力によってついに誕生しました。これにより、ようやく東北6県すべての支部が揃い、ブロックとして真に一体となった活動を展開できる土台が完成したのです。会員数は全国規模で見れば決して大きな数字ではありませんが、その分、会員一人ひとりの顔が見え、互いの活動を尊重し合える「体温の通った結束力」が私たちの強みだと自負しています。
― 東北地方における地域医療の現状と、抱えている課題感についてどのようにお考えですか。
東北は、ある意味で「日本の未来の課題を先取りしている地域」と言えます。日本全体で医師の偏在が問題視されていますが、人口あたりの医師数や医療従事者数は、東北6県すべてにおいて全国平均を下回っているのが現実です。さらに、東北特有の難しさはその「地理的条件」にあります。面積が極めて広大であるにもかかわらず、人口密度が低く、多くの住民が各地に点在して暮らしています。都市部を除けば医療資源の乏しい地域がほとんどですが、そこに人が住み、生活を営んでいる以上、適切な医療が提供される権利があることは言うまでもありません。リソースが限られている中で、いかにして住民の命と暮らしを守り続けるか。現場の医療者が日々知恵を絞り、困難に直面しながらも奮闘している姿こそが東北のリアルな風景です。
― その厳しい環境下で、プライマリ・ケアが果たすべき役割はどこにあるのでしょうか。
医師の数を増やすだけで解決するような単純な問題ではありません。医師一人ができることには物理的な限界があります。だからこそ、東北においては「多職種連携」がよりいっそう重要になるのです。医師、看護師、薬剤師はもちろん、リハビリ専門職、ソーシャルワーカー、さらには行政や福祉に携わる方々まで、いかにして「お互いを補完し合えるか」が鍵となります。自分の専門職種の枠に閉じこもるのではなく、足りない部分があれば少しずつ専門の枠を広げて、みんなで地域という大きな傘を支えていく。こうした包括的なケアの体制を地域全体で育んでいくことこそが、東北におけるプライマリ・ケアの使命であり、私たち東北ブロック支部が目指すべき姿だと思っています。
オンラインが拓く新しい連携スタイル。多職種・多世代をつなぐ「ハイブリッド」な絆。
― 東北ブロック支部として、具体的にどのような活動を継続されているのでしょうか。
特に力を入れている柱の一つが、『次世代の育成』です。専門研修を始めたばかりの若手を対象とした「JPCA東北ウェルカムセミナー」は、東北ブロック支部の年1回の定例企画として定着しています。先日も盛岡で開催され、私自身も参加してきましたが、新しい仲間との貴重なネットワーキングの場となっています。また、学生さんたちへの支援も積極的に行っています。学生自身が「総合診療を学びたい」と企画を立てた際、講師の紹介や会場費などの経費面でのサポートを通じて、彼らの志をバックアップしています。この分野に関心を持つ若い力が育つことは地域の未来そのものですから、東北ブロック支部として大切に支えていきたいと考えています。
― 「多職種連携」を掲げる中で、医師以外の職種の活動状況はいかがですか。
東北ブロック支部の大きな誇りは、多職種の皆さんの非常に高い自律性です。特に薬剤師部会は全国に先駆けて活発に活動しており、認定薬剤師の先生方が主体となって、毎月定例のオンライン勉強会を自主的に運営されています。ブロック支部はオンラインツールの提供や講師謝金などの後方支援を行っていますが、企画の中身はすべて薬剤師の皆さんが作り上げています。また、看護師さんたちによるオンライン交流会「茶話会」も素晴らしい取り組みです。これは「お茶飲み話」のようにリラックスした雰囲気で情報交換を行う場で、最近では東北以外のエリアからの参加も増えています。こうした「医師が主体」という従来の学会イメージを塗り替えるような、多様な職種が主役になれる環境作りを何より重視しています。
― 広大な東北において、物理的な「距離」という課題にはどう向き合っていますか。
距離の問題は、想像以上に深刻です。例えば福島から青森へ移動しようと思えば、片道500kmから600kmもあり、移動だけで丸1日を費やします。私自身も盛岡へ行くのに片道3時間半、秋田なら5時間近くかかります。そのため、オンラインツールの活用は今や不可欠なインフラとなっています。会議や日常的な勉強会は基本的にオンラインで行い、多忙な現場の皆さんが気軽に参加できる体制を整えています。一方で、年に1度の学術集会のような場では「対面」の価値を大切にしています。同じ志を持つ仲間と直接顔を合わせ、近況を語り合い、時には苦労を分かち合う。こうしたリアルな交流から生まれる熱量や安心感こそが、孤独な地域医療の現場で活動を続けるための大きなモチベーションになるからです。
自律性を重んじる「後方支援」の哲学。地域全体で育む「安心のネットワーク」。
― 各県支部の活動に対してはどのようなスタンスで関わっておられるのでしょうか。
私の運営哲学は「上から指示を出して一律に動かすというやり方を採らない」ことにあります。東北6県はそれぞれ置かれている環境も、直面している課題も全く異なります。だからこそ各県支部の自律性を最大限に尊重しています。ブロック支部としての役割は、学会本体からの助成金を配分したり、相談を受けた際にスムーズに支援したりといった、いわば「後方支援」に徹することです。東北ブロック支部の学術集会も6県持ち回りで開催していますが、プログラムの内容は開催県支部の実行委員会が、その地域のニーズに合わせて自由に企画しています。その土地の先生方が「これがやりたい」と熱を持って取り組むことが、結果として最も魅力的な活動につながると信じているからです。
― 今後の展望や、新たにチャレンジしたいことについて教えてください。
まだまだ一般の方には「プライマリ・ケア」や「総合診療」という言葉が十分に浸透していないという現実があります。ブロック支部として一般向けのイベントを行うことは今後の大きな課題です。まずは、学術集会の門戸をより広く開放したいと考えています。例えば今年2026年に秋田で開催される学術集会では、学会員でなくても発表ができるような開かれた企画を検討しています。特定の職種だけが理解できる難解な議論だけでなく「多職種の視点が入ることで、これほどまでにケアが豊かになる」という実感を共有できる場を増やしていきたいですね。また、福島県支部で年に2回行っているオンラインセミナー「ふくしまプライマリ・ケアトーク」のように、ソーシャルワーカーやリハビリセラピスト、訪問看護ステーションの所長、鍼灸師など、多様な職種の方々の視点から日常の仕事を見つめ直すようなセミナーもブロック全体に良い刺激を与えてくれるはずです。
― 最後に、東北で活動する方々へメッセージをお願いします。
東北ブロック支部に関わる最大の良さは、何より「信頼できる仲間のネットワーク」が得られることです。私自身、ブロック長を務める中で東北中に知り合いが増えました。これは単なる役職上の付き合いではなく、非常に実利的な価値があります。例えば、患者さんを他県の病院へ紹介する際に現地の先生に直接相談できたり、プライベートでも「子どもが他県の大学に進学する」といった際に、現地の仲間に相談できたりします。実際、私の息子は相模原にキャンパスを構える大学に進学したのですが、そこは青森の十和田にもキャンパスがあるんですね。その現地の青森にいる先生とはかねてよりつながりがあり、その点でも大きな安心感がありました。こうしたネットワークは、最終的には患者さんへの質の高いケアという形で還元されます。決して敷居の高い組織ではありません。「入って良かった」と思えるような、多様な学びと交流の場をこれからも提供し続けますので、ぜひ自分自身の成長と、そして愛する東北の地域貢献のために、この温かいコミュニティに加わってください。
― 東北ブロック支部 ホームページもご覧ください
最終更新:2026年06月16日 11時59分














