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第13回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 学生セッション 受賞者インタビュー Vol.1 <ポスター発表の部 最優秀賞 > 千葉大学医学部

2022年6月11日(土)~12日(日)パシフィコ横浜で開催された、第13回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 学生セッション。
口演発表(研究)8エントリー、ポスター発表(活動紹介)18エントリーの中から、各部門で受賞された発表内容をご紹介します。

<ポスター発表の部 最優秀賞 > 千葉大学医学部

「新型コロナ流行下におけるGeneral Medicine Interest Groupの役割と教育効果」

■受賞内容
 ポスター発表(活動紹介)の部 最優秀賞   
■演題名
 新型コロナ流行下におけるGeneral Medicine Interest Groupの役割と教育効果
■大学
 千葉大学医学部
■発表者名
 中熊 日奈子さん(千葉大学医学部6年)
■指導者名
 鋪野紀好先生(千葉大学医学部附属病院 総合診療科)

千葉大学医学部では、これまで学生主体のサークル「General Medicine Interest Group」(GMIG)として、臨床推論能力向上を目的とした活動を行ってきました。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により、学生たちが患者さんに直接触れ、問診や身体診察を学ぶ機会が激減し、結果として、問診や身体診察に対して苦手意識が芽生える学生が増加。この状況を改善するため、同サークルの副代表を務める中熊 日奈子さんたちは、コロナの時代に対応したGMIGの役割や学び方について再検討を行いました。その教育効果についての考察がポスター発表(活動紹介)の部で最優秀賞を受賞しました。
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コロナにより大きな影響を受けた学びの場

コロナ禍でのGMIGの活動は、2週に1回程度のペースでオンラインによる活動を行っていました。しかし、臨床推論能力向上を目的としたサークルとしては、オンラインでの活動内容に限界を感じ、日ごろから鋪野先生には今後どう運営していったら良いかご相談をしていました。いかに臨床実習を補填できる教育活動ができるか模索する中、全8回の授業計画を立て、どうすればより深い学びができるのか、これまであまり活用がなされていなかったオンラインのメリットを活かしたプログラムを考案しました。

(写真 ※A)
コロナが少し落ち着いてきたタイミングで、身体診察が対面でできるチャンスが訪れたときの様子。「この1回限りになる可能性もあったので、鋪野先生のお力を借りてプログラムに応じた総合診療科の先生をコーディネートしていただいたり、できるだけ多くの学びが得られる場にできるように工夫しました」と中熊さん。
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    ※A

オンライン活動も学修者中心の効果的な学びの場に

全8回のプログラムでは、頭痛や胸の痛みなど、どの身体症状にスポットを当てるかを検討して、試行錯誤しながら実施内容を決定しました。そして、オンラインというメリットを活かして授業の前にはGoogle classroomで、先生方がアップロードしてくださったテキスト等を事前課題として予習。できるだけイメージが膨らむように動画やPDFを効果的に活用したのも工夫したことのひとつです。

また、授業ではICTツールを活用して、症例を基礎とした学修者や教員とのディスカッションに活用したり、WEBツールを使ったリアルタイム検索で、実臨床で求められる問題解決能力を養いました。
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そして、授業後には自己調整学修として、振り返りシート(One minute paper)を使った復習や学修間での振り返り内容の共有など、客観的に自分がどう理解できているのかが自覚できる振り返りを導入。
この「予習」⇒「授業」⇒「振り返り」のサイクルで、1回の授業を余すところなく学び尽くせるサイクルを確立しました。

パンデミック時における臨床実習の補完を数値化

GMIGを受講した19名の学生には、受講前にアンケートを取り、全セッション受講後に7段階リッカート尺度のポストアンケートを実施しました。結果として、今回取り入れた教育方略は、問診の苦手意識や学び方を改善することはできるものの、身体診療に関しては、優位な改善は見られませんでした。

ただ、身体診察の知識面における学習方法としては良い効果があり、さらに対面での身体診察演習による補完によって、より効果的な学びの場となることがわかりました。
新型コロナウイルスというかつてなかったパンデミックの中で、学生の臨床実習について学生主体の勉強会サークルであるGMIGがどこまで不足分を補完でき、限界はどこだったのか・・・。今回、客観的に数字で表せたことで説得力を持たせることができたので、私たちの取り組みによって、“問診は補完できた"というところも伝えたいことのひとつです。
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「学会発表当日はプライマリ・ケアに携わる医師や看護師の方、薬剤師の方などの様々な職種の方が参加されていて、格式ばらない雰囲気にすぐに緊張もほどけました。ポスターの前に立っていると興味を持った方が集まって下さって、フランクなディスカッション形式で楽しみながら発表内容を伝えることができました。」

ポスター制作では、全体のレイアウトで一番苦労したという中熊さん。
「鋪野先生には、“この人は何が伝えたいのか"がひと目でわかる説得力のあるレイアウトをということで、たくさんのアドバイスをいただきました。自分なりに試行錯誤して、色使いやグラフの配置など工夫しながら制作しました。」

鋪野紀好先生コメント

医学生が総合診療やプライマリ・ケアを学びたいというニーズは、千葉大学でも常に一定数あります。そのニーズに対して学びを提供する、もしくはそれを支援するための仕組み作りのサポートは教員の役割ですが、学生は6年生になったら卒業するものなので、学生の学年を越えて継続性を持った繋がりを作る、仕組みを作るというのは常にいる教員がやるべきことだと考えています。そこの最初の設定の部分は、学生と相談しながら力を入れたところですし、GMIG等の取り組みを通じてそういった文化が大学に根付いてきたと感じています。

中熊 日奈子さんが将来目指したいこと

今回プライマリ・ケア連合学会に初めて参加させていただいて、千葉県以外の地域医療が色々な場所で展開されていることを知ることができました。私自身も今後初期研修・後期研修を通して、千葉の地域医療に携わってみたいと思っています。地元の家庭医として、身近にいる、いつでも相談できる医師を目指したいです。

最終更新:2022年12月19日 16時27分

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