ホームニュースプライマリ・ケア Field LIVE!Vol.67/「地域に根ざし、人の暮らしと生涯に寄り添う医療を」【医師】木村結子先生
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Vol.67/「地域に根ざし、人の暮らしと生涯に寄り添う医療を」【医師】木村結子先生
今回ご登場いただくのは、地域医療の第一線で多様な患者さんと向き合う中で「総合診療・家庭医療」の道を選択した木村結子先生。研修期間中の結婚・出産といったライフイベントや専門選択の迷いを乗り越え、現在は地元で慢性期医療や在宅診療、多職種連携に奮闘している木村先生に、地域医療への思いや未来へのビジョンを伺いました。
地元・秋田への思いと迷いの先の選択
― まずは木村先生が医師を志したきっかけについて教えてください。
医師という職業を意識し始めたのは中高生の頃でした。大きなきっかけは、祖父の闘病経験です。当時、祖父は末期がんで長期の入院生活を送っていたのですが、自分自身はお見舞いに少し行く程度でした。そのため感覚としては「気づいたら亡くなっていた」記憶として残ってしまい、どこか切なさが心に刻まれたんです。
また、ちょうどその頃、地元秋田の県北地域で医師不足が深刻化しているというニュースを頻繁に目にするようになりました。漠然と「将来は地域に貢献できる仕事をしたい」と考えていた中で「地元で自分にできる最大の貢献は医療職ではないか」と思い至り、チャレンジを決めました。進学先として自治医科大学を選んだのは「地域医療に貢献する」という大学の趣旨が自分の方向性と一致していたからです。
また、ちょうどその頃、地元秋田の県北地域で医師不足が深刻化しているというニュースを頻繁に目にするようになりました。漠然と「将来は地域に貢献できる仕事をしたい」と考えていた中で「地元で自分にできる最大の貢献は医療職ではないか」と思い至り、チャレンジを決めました。進学先として自治医科大学を選んだのは「地域医療に貢献する」という大学の趣旨が自分の方向性と一致していたからです。
― 初期研修時、専門の選択に迷われたとのことですが?
2020年に自治医科大学を卒業し、秋田赤十字病院で初期研修をスタートさせました。研修を進める中で、実は一番強く惹かれていたのが「産婦人科」だったんです。産婦人科は、腫瘍の治療から妊娠・出産、更年期障害まで非常に幅広く対応します。まさに「女性の総合医」として、年代を超えて患者さんの人生に長く関わり続けられる点に魅力を感じていました。「全方位を診る総合診療」と「女性の生涯に寄り添う産婦人科」、どちらの道に進むべきか本当に迷いましたね。
多くの医師は初期研修2年目の終わりに専門研修プログラムを決定するのですが、私はどうしても決めきれませんでした。さらに研修2年目で結婚し、妊娠も重なったため、すぐには特定の専攻医プログラムに入らない道を選択しました。
多くの医師は初期研修2年目の終わりに専門研修プログラムを決定するのですが、私はどうしても決めきれませんでした。さらに研修2年目で結婚し、妊娠も重なったため、すぐには特定の専攻医プログラムに入らない道を選択しました。
― 研修3年目の経験が、大きな転機になったそうですね。
はい。自治医科大学の義務年限を消化するため、3年目はどこにも属さずに北秋田市民病院の内科で勤務しました。そこでの臨床経験が最大の転機となりました。当時の病院では専門医が限られており、循環器や消化器以外の内科全般を総合内科として診ていました。さらに脳外科領域の患者さんや複数の持病を抱える超高齢患者さん、ターミナルケアの方など単一の専門科の枠には収まらない患者さんが次々と訪れました。医療そのものだけでなく、その方の暮らしぶりやご家族の介護背景まで考慮しなければ治療が成り立たない現場に投げ込まれたんです。
当時は「この患者さんが抱える複雑な問題に対し、どうアプローチすべきなのか」と雲を掴むようなもやもや感を抱えていました。しかし、まさにその「もやもや」こそが総合診療・家庭医療の核であり、学問として体系化された解決の手法が存在することを知りました。みんなで論理的に問題を認識し対処できる手法があるのだと気づいた時に「本格的に学ぼう」と決意が固まりました。
当時は「この患者さんが抱える複雑な問題に対し、どうアプローチすべきなのか」と雲を掴むようなもやもや感を抱えていました。しかし、まさにその「もやもや」こそが総合診療・家庭医療の核であり、学問として体系化された解決の手法が存在することを知りました。みんなで論理的に問題を認識し対処できる手法があるのだと気づいた時に「本格的に学ぼう」と決意が固まりました。
「連動型」プログラムを選択し、幅広い領域を学ぶ
― その後、専攻医として「あきたGP NET家庭医療専門研修プログラム」に入られました。
「あきたGP NET」では「家庭医連動型」を選択しています。プログラムの中では必須科目である救急科や小児科の研修はもちろん、自分が強く関心を持っていた産婦人科も選択研修としてローテーションさせていただきました。救急・小児・産婦人科は、患者さんを包括的に診る家庭医療と非常に親和性が高く、一連の研修を通して全方位的な臨床スキルを研鑽することができました。現場で感じていた課題を言語化して捉え直し、指導医や仲間と共に議論しながら対処法を学ぶ過程は本当に刺激的で、専攻医プログラムに入って良かったと心から実感しています。
― 現在勤務されている大館市立扇田病院についてお聞かせください。
2025年4月より、出身地である大館市の大館市立扇田病院総合診療科に着任しました。それ以前に勤務していた北秋田市民病院が救急車を多く受け入れる急性期病院だったのに対し、現在の扇田病院は慢性期やリハビリ、在宅診療が中心です。
病院の役割が異なることで、より患者さんの「暮らし」や自宅復帰に向けたプロセスに深く関われるようになりました。扇田病院は地域住民にとって長年「何かあればまず相談に行く町の病院」として根付いています。そのため診察室には相談や日々の雑談が自然と持ち込まれます。住民の方々と近い距離感で生活そのものを支えられる点に、家庭医としての大きなやりがいを感じています。
病院の役割が異なることで、より患者さんの「暮らし」や自宅復帰に向けたプロセスに深く関われるようになりました。扇田病院は地域住民にとって長年「何かあればまず相談に行く町の病院」として根付いています。そのため診察室には相談や日々の雑談が自然と持ち込まれます。住民の方々と近い距離感で生活そのものを支えられる点に、家庭医としての大きなやりがいを感じています。
― 多職種連携や地域固有の課題についてどう感じていらっしゃいますか。
訪問診療の現場では、多職種連携なしには一日も成り立ちません。訪問診療の際にはケアマネジャーさんや訪問看護師さん、時には薬剤師さんにも同席していただき、それぞれの専門的立場から意見を出し合って必要なサービスやすり合わせを行っています。
一方で、県北地域が直面する課題は非常に切実です。全国的な高齢化・独居化に加え、冬場の厳しい積雪や交通手段の不足により「自分で運転して通院できない」という地理的・物理的な壁が存在します。さらに、キーパーソンとなるお子さん世代が関東圏などに居住しており、近くに頼れる家族がいない孤立の問題も顕著です。
現在、扇田病院は経営状況や医療従事者不足の影響から、来年度に向けて病床を閉鎖し診療所化する再編プロセスの中にあります。地域住民の方々からは「入院できなくなったらどうすればいいのか」という不安の声も聞かれます。病院の規模が変わっても、必要な時には高機能病院へ適切に繋ぎ、普段は安心して相談できる「かかりつけ機能」を維持・発揮していくことが、私たちの果たすべき重要な役割だと考えています。
一方で、県北地域が直面する課題は非常に切実です。全国的な高齢化・独居化に加え、冬場の厳しい積雪や交通手段の不足により「自分で運転して通院できない」という地理的・物理的な壁が存在します。さらに、キーパーソンとなるお子さん世代が関東圏などに居住しており、近くに頼れる家族がいない孤立の問題も顕著です。
現在、扇田病院は経営状況や医療従事者不足の影響から、来年度に向けて病床を閉鎖し診療所化する再編プロセスの中にあります。地域住民の方々からは「入院できなくなったらどうすればいいのか」という不安の声も聞かれます。病院の規模が変わっても、必要な時には高機能病院へ適切に繋ぎ、普段は安心して相談できる「かかりつけ機能」を維持・発揮していくことが、私たちの果たすべき重要な役割だと考えています。
ライフイベントとの両立と未来へのビジョン
― 木村先生は仕事と家庭の両立はどのように工夫されていますか。
研修2年目に結婚し、翌年の2022年に第1子を出産しました。そして2026年3月に第2子が誕生し、現在は時短勤務制度を利用しながら診療を行っています。両立できているのは、間違いなく家族の全面的なサポートがあるおかげです。夫が家庭や育児のメインを担当してくれていて、さらに現在は地元の大館市で働いているため、実家のサポートも受けながら何とか日々の業務と子育てを回しています。
自身が出産や育児、生活のリアルを経験したことで、患者さんやそのご家族が抱える生活上の悩みに対する共感や解像度が高まりました。一人の人間としての生活体験を医師としての臨床の幅や深みに結びつけることが出来るよう意識しています。
自身が出産や育児、生活のリアルを経験したことで、患者さんやそのご家族が抱える生活上の悩みに対する共感や解像度が高まりました。一人の人間としての生活体験を医師としての臨床の幅や深みに結びつけることが出来るよう意識しています。
― JPCAの専攻医部会でも活動されているとお聞きしました。
はい、専攻医部会の「キャリア支援部門」に一メンバーとして所属しています。昨年度は知り合いの先生からお声がけいただき、右も左も分からないまま参加していました。一年間活動してみて、子育てとの両立や自治医科大学出身者の義務年限問題など自分自身が当事者として直面してきた悩みと近いテーマについて、同じ専攻医の役に立ちたいという思いから今年度も継続して参加しています。
具体的には、義務年限やライフプラン上の課題を抱えながらキャリアを切り拓いてきた先輩医師たちへのインタビュー調査や知見の共有などを行っています。若手医師が孤立せず、ライフイベントを迎えても前向きにキャリアを継続できるような環境づくりに、細々とではありますが貢献していきたいと考えています。
具体的には、義務年限やライフプラン上の課題を抱えながらキャリアを切り拓いてきた先輩医師たちへのインタビュー調査や知見の共有などを行っています。若手医師が孤立せず、ライフイベントを迎えても前向きにキャリアを継続できるような環境づくりに、細々とではありますが貢献していきたいと考えています。
― 今後目指す医師像や地域で果たしたい役割について教えてください。
私の一番の軸は「地域で必要とされる医療を提供すること」です。在宅医療のニーズがある場所では訪問診療を継続しつつ、自分が関心を持ち続けてきた産婦人科領域の知見を生かして、外来で対応できる「ウィメンズヘルス」の領域を強みとして育てていきたいと考えています。また、現在は病院内での診療が中心ですが、将来的には地域の健康教室や小中学校での性教育など病院を飛び出したプライマリ・ケア活動にも関わっていきたいですね。
一度研鑽のために地域外に出ることがあったとしても、最終的に学びを持ち帰って還元すべき場所は地元・秋田、だと思っています。これからも地域の人々に寄り添いながら「何かあったらまずはあの先生に相談しよう」と思っていただけるような総合診療医・家庭医として歩み続けていきたいです。
一度研鑽のために地域外に出ることがあったとしても、最終的に学びを持ち帰って還元すべき場所は地元・秋田、だと思っています。これからも地域の人々に寄り添いながら「何かあったらまずはあの先生に相談しよう」と思っていただけるような総合診療医・家庭医として歩み続けていきたいです。
プロフィール
大館市立扇田病院 総合診療科 医長
木村結子
<経歴>
2020年 自治医科大学医学部医学科卒業
2020年 秋田赤十字病院 初期臨床研修
2022年 北秋田市民病院 内科 医員
2023年 あきたGP NET専門研修プログラム、あきたGP NET家庭医療専門研修プログラムにて専門研
修開始
北秋田市民病院 内科
2024年 秋田赤十字病院 救急科・小児科
2024年 秋田大学医学部附属病院 産婦人科
2025年 大館市立扇田病院 総合診療科
<所属>
日本プライマリ・ケア連合学会
日本母性内科学会
木村結子
<経歴>
2020年 自治医科大学医学部医学科卒業
2020年 秋田赤十字病院 初期臨床研修
2022年 北秋田市民病院 内科 医員
2023年 あきたGP NET専門研修プログラム、あきたGP NET家庭医療専門研修プログラムにて専門研
修開始
北秋田市民病院 内科
2024年 秋田赤十字病院 救急科・小児科
2024年 秋田大学医学部附属病院 産婦人科
2025年 大館市立扇田病院 総合診療科
<所属>
日本プライマリ・ケア連合学会
日本母性内科学会
取材後記
やわらかな笑顔と落ち着いた語り口の中に、地域医療への確固たる情熱と芯の強さを感じさせる木村結子先生。研修中の結婚・出産という大きな転機や専門選択での模索を経験されたからこそ、患者さん一人ひとりの「人生」や「生活背景」に注ぐ視線は極めて温かいものでした。「地域で必要とされることをやる」という言葉には、病気だけを診るのではない、地域住民の暮らし丸ごとを守る覚悟が込められています。超高齢化や医療再編が進む秋田の地で、木村先生が咲かせる「温かな家庭医療」の輪が、これからの地域医療を明るく照らしていくことを確信させてくれるインタビューとなりました。
最終更新:2026年10月21日 11時07分













