ホームニュースプライマリ・ケア Field LIVE!vol.15/「かかりつけ薬局の薬剤師として地域住民に寄り添い、学会認定プライマリ・ケア薬剤師として共同研究にも参加」【薬剤師】柴田 淑子さん

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プライマリ・ケア Field LIVE!

vol.15/「かかりつけ薬局の薬剤師として地域住民に寄り添い、学会認定プライマリ・ケア薬剤師として共同研究にも参加」【薬剤師】柴田 淑子さん

地域医療を支えるプライマリ・ケアは、多職種との連携・協働なしにはなりたちません。そこで、地域医療の担い手となる薬剤師のキャリアアップ支援を目的に、2009年創設されたのが日本プライマリ・ケア連合学会「プライマリ・ケア認定薬剤師」制度です。薬剤師の柴田淑子さんは、その2期生であり、現在はJPCAの東京都支部の監事としてもご活躍中です。プライマリ・ケア領域における薬剤師の役割について、お話しをうかがいました。
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製薬会社の薬剤師から異業種への転職を経て、保険薬局の薬剤師へ

- 柴田さんは、どうして薬剤師になろうと?

きっかけは単純で、化学の授業が好きだったからです。ただ、理系は好きだけれど、何系の大学へ進学したいという希望が特になくて。高校の面談で担任の先生に相談した時に「薬剤師という選択肢もあるよ」と勧めてもらい、初めて薬剤師に興味を持ちました。それで、京都薬科大学の薬学部へ進学しました。

- 卒業後、薬剤師としてどんなお仕事を?

東京の製薬会社に就職し、治験担当の部署に配属されました。その頃は保険薬局(保険診療に基づいて医師の発行する処方箋に従い調剤を行う薬局)が今と比べると少なくて、薬学部を卒業して薬剤師の資格を取ったら、病院勤務の薬剤師になるか、製薬会社で新薬の開発に携わるかの二者択一がほとんど。私は後者の製薬会社を選んだというわけです。
そこでは、新薬のデータ分析、さらに治験の症例を集めるために医師の方々に研修会で説明したり、集めた症例を書類にまとめて厚生労働省に申請したり。比較的小規模な製薬会社だったので、良い意味で、さまざまな業務に関わらせてもらいました。

- 製薬会社では何年くらいお勤めに?

5年ほど勤めました。実はその後、薬剤師とは全く関係ない色彩とデザインの勉強がしたくなって、建築装飾関係の会社に転職したんですよ(苦笑)。

-えっ、薬剤師からデザイナーの道へ?

ガラスモザイクの制作会社で、床や壁のガラスモザイクを作る仕事です。デザイナーというよりも制作の職人かな。建築現場に入って実際にモザイク画を貼る作業もしましたし、色彩検定の資格も取得しました。ちょうどバブル絶頂期で建築業界全体の景気が良く、毎日が忙しくて4年間があっという間でしたね。
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    小学校の壁画を作っている、ガラスモザイクの職人時代

-思い切ったご決断をされたのですね?

人生一度きりですからね。薬剤師の国家資格もそうですが、色彩検定に挑戦したり、常に新しいことを学べる環境に飛び込むのが好きなのかも知れません。

- 再び薬剤師に戻ったのは?

バブルがはじけ、潮時かなと。畑違いの職種への挑戦は充実していましたが、一生の仕事として考えたら「やはり薬剤師としてやっていきたい」という思いが改めて強くなりました。ちょうど保険薬局が増え始めていた頃だったので、以前の製薬会勤務の薬剤師とは異なる新しい仕事に挑戦できるチャンスだと感じ、東京都の小金井市にある保険薬局に再就職しました。

在宅支援の薬剤師に興味を持ち、キャリアアップを求めて転職

- それから現在までのことを教えてください。

現在は、すず薬局に勤務していて、それまでに保険薬局を4回転職しました。最初の保険険局は小規模経営で調剤と薬の受け渡しが仕事のメイン。さらに、研修制度が充実した少し大きな組織で学びたいという思いから多店舗展開している保険薬局に転職。そこでは15年近く働き、首都圏の店舗を中心に転勤も経験し、充実した日々を過ごしていました。

そのまま働き続ける選択肢もあったのですが、介護保険制度が始まり、私も薬剤師として在宅医療に関わってみたいと思うように。そこで、2回目の転職では在宅医療での薬剤師訪問サービスに力を入れている保険薬局に転職しました。
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    現在の勤務先 すず薬局井口店

- 薬剤師としてキャリアアップするための転職ですね。「在宅医療」に興味を持たれたきっかけは?

15年勤務した保険薬局で働いていた時に研修認定薬剤師を取り、東京薬科大学の研修会へ参加したのですが、そこで2回目の転職先となる保険薬局の社長が講演され、初めて在宅医療のことを知りました。みよの台薬局のグループ薬局で施設在宅を経験し、その後個人在宅を多く手掛けている薬局に転職しました。

- 在宅医療の薬剤師をご経験されて、いかがでしたか?

地域密着型の薬剤師訪問サービスを経験できたので、患者さんとのコミュニケーションや医師や訪問看護師との連携など、多くの学びがありました。ただ、週の半分くらいは夜中まで勤務するハードな毎日だったため、長く続けるのは難しいと感じ、現在のすず薬局に2020年転職しました。地域密着型の保険薬局で在宅医療の支援も行っていること、自宅から薬剤師としての地域活動(ワクチン接種等)がしやすいことが決め手でした。
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    この車で在宅へ行きます

- 現在は薬剤師としてどんな業務を?

在宅支援のメインは高齢者向けの施設です。施設へお薬を届け、施設のスタッフさんに患者さんの状況などを確認して、直接、患者さんともお話しをします。また、個人宅の在宅支援もしているので、患者さんのご自宅へ伺うときには、お薬を渡しがてらお話しをすることも多いですね。

- 医師の訪問診療に同行されることも?

もちろん、あります。個人宅の場合、特にご高齢の方は飲み忘れの問題が発生しやすいので、患者さんの残薬管理を行い、処方するお薬が多すぎると感じた場合は往診に同行できる場合はその場で医師に伝え、そうでない場合は訪問後に報告書で伝えたりします。

また、訪問サービスに訪問看護師さんが入っていないケースもあり、その場合は現場の介護スタッフさんとドクターが直接コミュニケーションを取る機会が少ないため、介護スタッフさんから利用者さんの状況を聞いてドクターに伝える橋渡しのような役割も薬剤師である私がしています。

プライマリ・ケアとの出会いで薬剤師としての視点が広がった

- 日本プライマリ・ケア連合学会との出会いはいつ頃、どんなきっかけで?

薬局に無料配布されている薬学系の雑誌で、当時の学会で理事をされていた薬剤師・矢澤一博先生と医師・石橋幸滋先生の対談記事を偶然目にしたのがきっかけです。その対談の中で「プライマリ・ケア認定薬剤師」の存在を知って興味を持ち、2011年に学会に入会。2013年にプライマリ・ケア認定薬剤師を2期生として取得しました。

- 「プライマリ・ケア認定薬剤師」のどのような点にに興味を持たれたのでしょう?

その頃、薬局業界では「ファーストアクセス」「ラストアクセス」の両面から地域を支える役割が求められつつありました。それまでの薬局の役割は、利用者さんが症状を自覚してから病院で診察を受け、医師の処方箋をもとにお薬を処方する「ラストアクセス」が中心。「ファーストアクセス」は、病院を受診する前に健康面で不安を感じた利用者さんが薬局で薬剤師に相談することです。私自身、お薬を調剤して渡すだけではなく、患者さんとのコミュニケーションが楽しいと感じていたので、今後を見据えて「ファーストアクセス」に応えられる薬剤師になりたいと考えていたので、プライマリ・ケア連合学会の存在を知り「これだ!」と思いました。

- つまり、プライマリ・ケアの領域の広さが魅力だった?

そうです。保険薬局には、立地で考えたときに大きく分けて「門前」(薬局が病院の門前にあり、その病院の処方箋をメインに扱う)と「面分業」(薬局の周囲に最寄りの病院がなく複数の病院の処方箋を扱う)、そして「敷地内薬局」があります。「門前」は連携する病院の診療科に紐づく調剤が主流ですが、「面分業」の場合はより幅広い調剤が必要になります。当時の私は「面分業」の薬局で働いていて、婦人科の処方箋を受けることが多かったので、婦人科をはじめ広域な調剤知識を深めるための勉強会に参加したいと思っていました。
プライマリ・ケアの診療科を特定しないオールマイティさは、まさに求めていたものでした。

- 実際、学会に入会されて手応えはどうですか?

期待以上の手応えを感じました。それまでに参加した他の研修会は、ほぼ座学で講義を受けるスタイル。ところが、日本プライマリ・ケア連合学会では、スモールグループディスカッションという双方向スタイルの研修会がメインで、参加者それぞれの意見を聞くことができ、自分の意見も話すことができました。その違いに、とても感銘を受けました。

- 研修会の参加者は薬剤師さんが中心ですか?

研修会の内容によるのですが、学会に入って一番最初に体験したのは薬剤師の研修会で、薬剤師ばかり50名以上が参加していました。参加するたびに薬剤師の仲間ができて横のつながりが増え、勉強することはもちろん、仲間と会える楽しみもあり、研修会があるたびに顔を出したくなりましたね。

- 学会での活動について、具体的に教えてください。

学会の研修会で薬剤師の坂口眞弓先生と知り合うことができて、先生の「セルフメディケーション」に関する研究をお手伝いさせていただくようになりました。

「セルフィメディケーション」とは、処方箋がなくても購入できる市販の医薬品(OTC医薬品)などを活用しながら一般市民の方が病気になる前から予防や体調管理を行い、ご自身の健康を自分で守ることです。とはいえ、市販薬にはたくさんの種類があるので、どれを選んだらいいのか迷ってしまいますし、服用中のお薬がある場合はしっかり飲み合わせをチェックしなければなりません。

2016年に健康サポート薬局(かかりつけ薬局・薬剤師の機能に加え、市販薬や健康食品などに関することも相談できる薬局)の認定制度が施行され、今後ますますセルフィメディケーションのサポートが重要になると考えています。

- そんな背景からセルフメディケーションの研究に参加されたのですね。

はい。具体的な活動内容としては、OTC医薬品の啓発イベントでの検体測定室(血糖値や中性脂肪などの簡易な測定を行う施設)のサポートです。一般参加者さんの健康チェックとアンケート調査を行い、その調査結果を日本薬剤師会や日本薬学会の学術大会で発表したり、論文にまとめるという経験もしました。プライマリ・ケア連合学会と出会えなかったら、研究や論文発表という経験もできませんでした。
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    健康チェックイベント
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    イベントでの検体測定の様子
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    セルフメディケーション研究メンバーと

プライマリ・ケア認定薬剤師の活動を通じて発信力を高めたい

- プライマリ・ケア認定薬剤師として大切にしていることはありますか?

薬剤師は、つい、お薬ありきで患者さんと接しがちですが、私はプライマリ・ケアと出会い、患者さんを総合的に診る視点に気づくことができました。例えば、眠くなる成分が入っているお薬なら、お薬をお渡しする患者さんが、どんなお仕事をされているか、さり気なく聞き出して、お薬を飲むタイミングをアドバイスします。その患者さんの職業や日常生活に、お薬がどう影響するのかまで注意深く観察しながら向き合うのが重要だと感じています。

- 患者さん一人一人でお薬に関する情報も違ってきますよね?

そうですね。患者さんがお持ちになるお薬手帳をはじめ、薬局には薬歴を記載するカルテのようなものがあるので、気づいたことを書き込んで、患者さん個人ごとのお薬に関する情報をインプットするようにしています。

- そんな日々のお忙しい業務に加え、2021年4月から学会の東京都支部の監事もお務めとか?

はい。東京都支部で監事の業務をやらせていただいています。東京都支部はエリアの職種をまたいだ集まりなので、薬剤師だけでなく、プライマリ・ケアの中心を担うドクターや看護師など、多職種の方と接することができる点に魅力を感じています。プライマリ・ケアにおける薬物療法では多職種との連携が不可欠ですから。

- 薬剤師として感じている課題や今後の目標を教えてください。

まず、薬剤師の活動、特に薬局薬剤師の活動を、もっと多くの人に知ってもらいたいですね。病院薬剤師と違い、薬局薬剤師としてのエビデンスは、まだまだ少ないと感じています。研究もまだ十分とは言えないし、研究を論文にまとめて発表する機会も少ないのが現状。薬局薬剤師の研究が世の中にもっと発信されることで、健康サポート薬局やセルフメディケーションの認知度も向上し、薬剤師自身のモチベーションも向上すると思っています。そのための認定薬剤師の勉強会や支援活動も今後やっていきたいですね。

とはいえ、私一人ではできないことなので、学会で出会った薬剤師仲間と一緒に活動と研究の枝葉を広げてゆけたらと思っています。薬剤師でプライマリ・ケアに興味がある人がいたら、ぜひ仲間に加わっていただけたら嬉しいです。
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    学会でのポスター発表

プロフィール

ファーマシーすず すず薬局井口店 
薬剤師
柴田 淑子(しばた・よしこ)

~プロフィール~
1990年 京都薬科大学卒業 
      大洋薬品工業(株)入社 治験業務を行う
1995年 日本モザイク入社(建築装飾会社、ガラスモザイク制作を行う)
1999年 株式会社セントラルドラッグ入社(慈雲堂桜町薬局 調剤業務)
2000年 株式会社三祐産業入社(稲垣薬局 調剤業務)
2015年 株式会社本木薬局入社(志宝薬局 調剤業務:みよの台薬局グループ)
2017年 有限会社よつ葉堂 入社(よつ葉薬局 調剤業務)
2020年 ファーマシーすず 入社(すず薬局井口店 調剤業務)

<資格等>
公益財団法人 日本薬剤師研修センター認定 研修認定薬剤師取得
プライマリ・ケア連合学会認定 プライマリ・ケア認定薬剤師取得(2期生)
公認スポーツファーマシスト
色彩検定2級

JPCAプライマリ・ケア薬剤師認定制度委員会委員
JPCAダイバシティ推進委員会委員
JPCA東京都支部 監事

柴田さんが勤務するファーマシーずず
http://pharmacy-suzu.com

取材後記 ~地域住民の視点から介護・看護に寄り添う薬局薬剤師~

医師の処方箋をもとに薬を調剤するだけでなく、訪問診療時の患者の残薬管理、患者のライフスタイルに応じた薬の飲み方アドバイス、病気になる以前の健康相談にも応える。薬局薬剤師の守備範囲の広さに正直驚きました。高齢者はもちろんのこと、忙しい現代社会では働き盛りの世代にとっても、病院を受診する手前で相談に乗ってくれる薬局薬剤師の存在は心強いもの。幅広い領域の医療を担うプライマリ・ケアにおいて、薬剤師の活躍の場は今後さらに増えそうです。

最終更新:2023年04月02日 23時57分

「プライマリ・ケア公式WEB」 編集担当

記事の投稿者

「プライマリ・ケア公式WEB」 編集担当

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