ホームニュースCurrent topics - プライマリ・ケア実践誌プライマリ・ケア現場で役立つ耳鼻咽喉科/耳疾患のエマージェンシー
ニュース
Current topics - プライマリ・ケア実践誌
プライマリ・ケア現場で役立つ耳鼻咽喉科/耳疾患のエマージェンシー
突発性難聴
まずは、突発性難聴について説明します。これは、文字どおり突然聞こえにくくなる疾患です。年間発症頻度は人口10万人あたり60人程度で50〜70歳代に多いとされています。
さて、急に聞こえなくなったらそれだけで突発性難聴としていいでしょうか?突発性難聴はこの連載の第1回で説明した難聴の分類では感音性難聴に分類されます。そのため、鼓膜は通常正常所見を呈しますので耳鏡で観察することを忘れないでください。耳垢塞栓でも突然聞こえなくなることはありますので......。また、聴力検査も必須です。耳鼻咽喉科では標準純音聴力検査などを行いますが、耳鼻咽喉科以外のセッティングでは困難です。ここでこの連載の第1回で紹介した音叉を用いた簡易型の聴力検査が役に立ちます。詳細は第1回を参照していただくとして、Weber検査やRinne検査を行って伝音性難聴か感音性難聴かを鑑別します。
また、突発性難聴の症状は難聴だけではありません。それ以外にもめまい、耳鳴、耳閉感を呈することがあり、めまいは突発性難聴の20〜60%に認めるという報告もあります。そのため、めまいの患者さんを診察するときに難聴の有無についての問診や診察、検査(とりあえず音叉を用いた簡易型の聴力検査でいいと思います)を忘れないようにしてください。そうでないと、良性発作性頭位めまい症等の診断で入院していた患者さんが、めまいが改善したあとに難聴や耳鳴を訴えて、そこで初めて突発性難聴によるめまいだったということになりかねません。突発性難聴は早期治療が重要といわれていますので、これは避けたいです。
その他の鑑別診断としては、外リンパ瘻、メニエール病、聴神経腫瘍等があげられます(表1)。外リンパ瘻は、あまり聞きなれない病気だと思いますので、これについては次の項で説明したいと思います。次にメニエール病は皆さんよく聞く病気だと思いますが、めまいと難聴という病態は突発性難聴とよく似ています。これを繰り返すような場合には、メニエール病という診断がつきやすいですが、初回発作では鑑別がむずかしいです。また、聴神経腫瘍では、基本的には難聴は徐々に進行しますが、ときに突発性難聴のように、突然聞こえなくなるという症状で受診することもあります。突発性難聴を疑う患者さんの場合、可能な限り造影MRIを撮影すべきであるという意見もありますが、難治性の場合等はとくに画像検査を考慮したほうがいいと思います。
以上のように、突発性難聴の診断は、他の疾患との鑑別が重要になり、それは耳鼻咽喉科でないと困難ですので、早期に耳鼻咽喉科紹介をお願いします。なお、早期に耳鼻咽喉科紹介ができない場合は、PSL1mg/kg/日で開始し、徐々に減量するのが一般的ですが詳細は成書を参照ください。また、難治性や、糖尿病等でステロイドの全身投与に耐えられないような人には、ステロイド鼓室内投与という治療法もありますが、これはもちろん耳鼻咽喉科で行います。
外リンパ瘻
ここから先は
日本プライマリ・ケア連合学会の
会員記事です
最終更新:2024年08月07日 00時00分