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小児・AYAがん患者の長期健康管理 シンポジウム報告と質問への回答
JPCA2024でシンポジウムを開催
がん診療に関するプライマリ・ケアワーキンググループです。
第15回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会で、AYAがんの医療と支援のあり方研究会(AYA研)とのジョイント企画として「小児・AYAがん治療後患者の長期健康管理 プライマリ・ケアへの期待」と題したシンポジウムを開催しました。
第15回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会で、AYAがんの医療と支援のあり方研究会(AYA研)とのジョイント企画として「小児・AYAがん治療後患者の長期健康管理 プライマリ・ケアへの期待」と題したシンポジウムを開催しました。
小児・AYA がん経験者の健康リスク
小児・AYA がん経験者は身体的晩期合併症や心理的・社会的問題を抱えるリスクが高いことが示されており、治療終了後も長期的な健康管理が推奨されています。
しかし、がん治療を行った小児科医・がん治療医によるフォローアップの限界、他診療科との連携の困難さ、医療費の発生や遠距離での通院の負担、患者の進学・就職・転居などライフステージ変化による受診中断など長期健康管理における課題が指摘されています。
しかし、がん治療を行った小児科医・がん治療医によるフォローアップの限界、他診療科との連携の困難さ、医療費の発生や遠距離での通院の負担、患者の進学・就職・転居などライフステージ変化による受診中断など長期健康管理における課題が指摘されています。
プライマリ・ケアへの期待
これらの課題への対策の一つとして、小児・AYA がん経験者の生活圏のプライマリ・ケアの関わりが期待されています。プライマリ・ケア従事者の視点では普段出会うことの少ない希少疾患への対応を求められることに困難感を感じますが、実は期待されている役割がプライマリ・ケアの役割の範疇であることはよく知られていません。
そこで本シンポジウムでは小児・AYA がん経験者の長期健康管理の現状と課題、長期健康管理に総合診療医・家庭医が連携するモデルの構築の取り組み、小児がん経験者の視点での長期健康管理の経験・課題の共有を通して、小児・AYA がん経験者が適切な長期健康管理を継続できる社会をめざし、プライマリ・ケアが関わることでどのような将来像が描けるのかを議論することを目的としました。
そこで本シンポジウムでは小児・AYA がん経験者の長期健康管理の現状と課題、長期健康管理に総合診療医・家庭医が連携するモデルの構築の取り組み、小児がん経験者の視点での長期健康管理の経験・課題の共有を通して、小児・AYA がん経験者が適切な長期健康管理を継続できる社会をめざし、プライマリ・ケアが関わることでどのような将来像が描けるのかを議論することを目的としました。
当日の様子
小児がん、AYA世代がんの専門家の先生方、小児期にがんを経験され患者会の活動をしている当事者の方、そして新たな取り組みをしている小児腫瘍内科医と総合診療医に登壇いただきました。
土曜の朝一番での開催で、参加者が来てくださるか不安がありましたが、30人以上の会場参加者だけでなく、ライブ配信でも視聴してくださった方もたくさんいらっしゃいました。質疑も活発に行われ、あっという間の90分間でした。
「ニッチなテーマ」ではあるかもしれませんが、関心を持ってくださる方がいることをとても心強く感じたシンポジウムでした。
ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
ご参加されなかった方も、後日オンデマンド配信がされますので是非ご覧ください。
土曜の朝一番での開催で、参加者が来てくださるか不安がありましたが、30人以上の会場参加者だけでなく、ライブ配信でも視聴してくださった方もたくさんいらっしゃいました。質疑も活発に行われ、あっという間の90分間でした。
「ニッチなテーマ」ではあるかもしれませんが、関心を持ってくださる方がいることをとても心強く感じたシンポジウムでした。
ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
ご参加されなかった方も、後日オンデマンド配信がされますので是非ご覧ください。
当日回答できなかったご質問への回答
時間の都合上取り上げられなかったご質問への回答を演者の先生方からいただきましたのでこの場を借りて回答いたします。
<ご質問①>
小児がん経験者の団体は全国にネットワークをお持ちでしょうか?また、もし外来でフォロー通院されていない患者と出会ったとき、啓発や仲間づくりの勧めで、必要に応じて団体様をご紹介してもよろしいでしょうか?その際、患者様の年齢は紹介に関係ありますか?
<回答>
・舛本様より
多くの経験者団体は他の団体とのネットワークを持っていると思います。ただ、全ての団体とつながっている経験者団体は少ないと思いますので、がんの子どもを守る会へお尋ねいただけましたら、近隣で活動している小児がん経験者の会をご確認いただけると思います。
また、外来でご紹介をいただけることはとても嬉しいです。実際に医師・看護師・MSW・臨床心理士からのご紹介で小児がん経験者の活動に参加される方に出会えました。団体によっては年齢制限を設けている場合もありますし、保護者の方のご同伴をお断りする場合もあります。紹介先の団体に直接お尋ねいただくことをお勧めします。
<ご質問②>
総合診療医と専門医の連携のきっかけはどんな点にあると思いますか?総合診療医からすると「多忙かな」などと躊躇することがあります。電話一本で叶うこともあるでしょうが、なかなかハードルが高いです。個でできる点、組織や地域でできる点、それぞれどんな点がありますか?
<回答>
・清水先生より
忙しいところに連絡して、イライラされたり、つれない対応をされたりするのでは、と遠慮したり萎縮する気持ち、お互いさまですね。結局人に依存する部分はあるのですが、チーム医療が求められる現代の医療において対話の力は重要なスキルだと考えています。複合的な問題を抱えておられる場合に、患者を中心に何が最善か、関係者がみんなで知恵や意見を出していかないと、患者の利益を損なってしまう可能性があるからです。医師どうしが忖度して、お互いに問題と感じていることを議論をしないこと自体が問題だと思うのです。
地域がん診療連携拠点病院等に義務付けられているキャンサーボード(多職種による症例検討会)は、顔の見える関係づくりの良い機会だと思います。施設によって取り組み方は異なるかもしれませんが、NCGMでは、診療科や職種を問わず患者さんの相談することができます。必ずしも患者さんの診療に関わっていない医師が診療科の持ち回りでファシリテーターをつとめるので、素朴な疑問を出しやすい雰囲気になります。話しあっているうちに、それぞれの診療科のスタンスや医師の信念などがみえてきて、その後のコミュニケーションの円滑化にも役立っていると感じています。
ちなみにAYA研にはさまざまな診療科、さまざまな立場の方が参加されております。よろしければ、対話の練習の場としてぜひご参加ください!
・石田先生より
私自身が総合診療医ではないので、そのままの質問に答えることはできません。これは小児科一般医と小児科専門医と読みかえてもよろしいでしょうか?そうであれば、やはり顔の見える関係であれば、容易に相談が可能です。小児科のコミュニティは、内科と違い医師数は少ないので、同じ県内など地域であれば、基本的には顔の見える関係なので、容易に専門医に相談が可能です。確かに専門分野によっては、あまりにも専門外来が予約でいっぱいで、容易に紹介できない分野はあります。たとえば児童精神分野(拒食症、不登校など)などがそうで、紹介しようと思っても、予約できるのが1-2か月先になってしまいます。
・藁谷先生より
今回菅家先生と福島モデルを作るにあたり、やはり紹介させていただく側の小児腫瘍医と、みていただく家庭医療の先生の間に、情報のやりとりがしやすいことは大切だと思われました。それぞれ専門とする範囲が全然違うので、わからないことや困ったことがあったら気軽に相談できる関係性が必要だろうと。
ということで、患者さんを実際ご紹介するにあたっては、事前にzoomを利用したカンファランスを予定したいと考えています。(このカンファランスに可能であれば患者さん・ご家族にもご参加いただき、3者会議のようにできたらと思っております。)
清水先生、石田先生のおっしゃるように、一度「顔の見える関係」を作っておいて、何かあればメールなりお電話なりでご相談いただければと考えています。
ご紹介した小児がん経験者の方について、家庭医療の先生がなにかお困りであれば、むしろいつでもご連絡いただければありがたいと感じます。
・菅家先生より
「顔の見える関係」があれば相談しやすいと私自身は思うのですが、「顔の見える関係」ってそもそもどういうことだろう、と考えました。森田らの地域緩和ケア従事者を対象とした質的研究では、【顔が分かる関係】【顔の向こう側が見える関係】【顔を通り超えて信頼できる関係】というカテゴリが抽出されています。顔の見える関係の構築には、私見としては「連携してくれる相手を知ろうとすること」が第一歩だと思います。多職種連携が強調される現代において、連携する人全員を知ろうとするのは大変です。一方で、私のこれまでの経験では「あの先生は13時頃なら外来おわっているはず」「たしか得意分野はこのあたり」「こんな感じの人だよね」と知っている相手との連携のハードルは低く感じます。初めての連携時点から相手のことをよく知ることはできないので、相手を知ろうとし、自分を知ってもらおうとすることが今日からできる連携の第一歩なのではと考えます。
<ご質問①>
小児がん経験者の団体は全国にネットワークをお持ちでしょうか?また、もし外来でフォロー通院されていない患者と出会ったとき、啓発や仲間づくりの勧めで、必要に応じて団体様をご紹介してもよろしいでしょうか?その際、患者様の年齢は紹介に関係ありますか?
<回答>
・舛本様より
多くの経験者団体は他の団体とのネットワークを持っていると思います。ただ、全ての団体とつながっている経験者団体は少ないと思いますので、がんの子どもを守る会へお尋ねいただけましたら、近隣で活動している小児がん経験者の会をご確認いただけると思います。
また、外来でご紹介をいただけることはとても嬉しいです。実際に医師・看護師・MSW・臨床心理士からのご紹介で小児がん経験者の活動に参加される方に出会えました。団体によっては年齢制限を設けている場合もありますし、保護者の方のご同伴をお断りする場合もあります。紹介先の団体に直接お尋ねいただくことをお勧めします。
<ご質問②>
総合診療医と専門医の連携のきっかけはどんな点にあると思いますか?総合診療医からすると「多忙かな」などと躊躇することがあります。電話一本で叶うこともあるでしょうが、なかなかハードルが高いです。個でできる点、組織や地域でできる点、それぞれどんな点がありますか?
<回答>
・清水先生より
忙しいところに連絡して、イライラされたり、つれない対応をされたりするのでは、と遠慮したり萎縮する気持ち、お互いさまですね。結局人に依存する部分はあるのですが、チーム医療が求められる現代の医療において対話の力は重要なスキルだと考えています。複合的な問題を抱えておられる場合に、患者を中心に何が最善か、関係者がみんなで知恵や意見を出していかないと、患者の利益を損なってしまう可能性があるからです。医師どうしが忖度して、お互いに問題と感じていることを議論をしないこと自体が問題だと思うのです。
地域がん診療連携拠点病院等に義務付けられているキャンサーボード(多職種による症例検討会)は、顔の見える関係づくりの良い機会だと思います。施設によって取り組み方は異なるかもしれませんが、NCGMでは、診療科や職種を問わず患者さんの相談することができます。必ずしも患者さんの診療に関わっていない医師が診療科の持ち回りでファシリテーターをつとめるので、素朴な疑問を出しやすい雰囲気になります。話しあっているうちに、それぞれの診療科のスタンスや医師の信念などがみえてきて、その後のコミュニケーションの円滑化にも役立っていると感じています。
ちなみにAYA研にはさまざまな診療科、さまざまな立場の方が参加されております。よろしければ、対話の練習の場としてぜひご参加ください!
・石田先生より
私自身が総合診療医ではないので、そのままの質問に答えることはできません。これは小児科一般医と小児科専門医と読みかえてもよろしいでしょうか?そうであれば、やはり顔の見える関係であれば、容易に相談が可能です。小児科のコミュニティは、内科と違い医師数は少ないので、同じ県内など地域であれば、基本的には顔の見える関係なので、容易に専門医に相談が可能です。確かに専門分野によっては、あまりにも専門外来が予約でいっぱいで、容易に紹介できない分野はあります。たとえば児童精神分野(拒食症、不登校など)などがそうで、紹介しようと思っても、予約できるのが1-2か月先になってしまいます。
・藁谷先生より
今回菅家先生と福島モデルを作るにあたり、やはり紹介させていただく側の小児腫瘍医と、みていただく家庭医療の先生の間に、情報のやりとりがしやすいことは大切だと思われました。それぞれ専門とする範囲が全然違うので、わからないことや困ったことがあったら気軽に相談できる関係性が必要だろうと。
ということで、患者さんを実際ご紹介するにあたっては、事前にzoomを利用したカンファランスを予定したいと考えています。(このカンファランスに可能であれば患者さん・ご家族にもご参加いただき、3者会議のようにできたらと思っております。)
清水先生、石田先生のおっしゃるように、一度「顔の見える関係」を作っておいて、何かあればメールなりお電話なりでご相談いただければと考えています。
ご紹介した小児がん経験者の方について、家庭医療の先生がなにかお困りであれば、むしろいつでもご連絡いただければありがたいと感じます。
・菅家先生より
「顔の見える関係」があれば相談しやすいと私自身は思うのですが、「顔の見える関係」ってそもそもどういうことだろう、と考えました。森田らの地域緩和ケア従事者を対象とした質的研究では、【顔が分かる関係】【顔の向こう側が見える関係】【顔を通り超えて信頼できる関係】というカテゴリが抽出されています。顔の見える関係の構築には、私見としては「連携してくれる相手を知ろうとすること」が第一歩だと思います。多職種連携が強調される現代において、連携する人全員を知ろうとするのは大変です。一方で、私のこれまでの経験では「あの先生は13時頃なら外来おわっているはず」「たしか得意分野はこのあたり」「こんな感じの人だよね」と知っている相手との連携のハードルは低く感じます。初めての連携時点から相手のことをよく知ることはできないので、相手を知ろうとし、自分を知ってもらおうとすることが今日からできる連携の第一歩なのではと考えます。
最終更新:2024年06月21日 15時36分