第15回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会スポーツ運動医学委員会シンポジウム報告

2024年6月8日、第15回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会において、スポーツ運動医学委員会によるシンポジウムを開催しましたので報告いたします。オンデマンド配信も9月30日まで視聴可能ですので、是非ご覧ください。

・Lessons from the U.S. Primary Care Sports Physician

【概要・企画意図】
「スポーツ医学」は、スポーツに関連した問題への対応や、スポーツと健康増進に関する領域横断的な分野であり、総合診療・家庭医療との親和性は高い。しかし、実際に携わっている学会員は少ないのが現状である。以前に行った学会員向けの調査では、今後スポーツ医学に取り組みたい・学びたいというニーズがあることがわかった。

米国では家庭医療の研修後に Primary Care Sports Medicine fellowship がある。外来で運動器診療を幅広く行うだけでなく、脳振盪後の競技復帰や女性アスリートのケア、スポーツチームへの帯同やマッチドクター等の現場活動、研究活動などを行っている。本企画では、米国で活躍する Primary Care Sports Physician であるDr. Yuka Kobayashi を招聘し、米国でのスポーツ医学

の実践や、医学部・卒後研修・フェローシップでの教育システム、スポーツ医学のキャリアについて学ぶ。そして、今後日本で家庭医がスポーツ医学を学び、実践していくために必要な具体的なスキルや教育プログラム、システム等について総合討論を行う。

【役割分担】
座長：小林知貴（うじな家庭医療クリニック）
　　　濱井彩乃（安房地域医療センター総合診療科／亀田ファミリークリニック館山家庭医診療科）

演者：Yuka Kobayashi（Medical College of Wisconsin）
　　　小松孝行（順天堂大学医学部　スポーツ医学研究室）

【シンポジウム内容】
はじめに、委員の小松孝行より、「本邦におけるスポーツ医学教育の現状とスポーツ医学的観点を持つことの意義」と題し、日本におけるスポーツ医学とその教育の現状、プライマリ・ケアとスポーツ医学の関連性などについてプレゼンテーションを行いました。

続いて、今回のゲストであるYuka Kobayashi先生より、「Primary Care Sports Medicine: United States」と題しご講演をいただきました。Yuka先生は、米国でFamily medicineのレジデンシーを終えたあと、Primary care sports medicine fellowshipで研修され、現在はWisconsin大学のPrimary care sports medicine fellowshipのDirecterをされています。

米国のPrimary care sports medicine fellowshipは、基礎領域として家庭医、内科、小児科、救急科、リハビリテーション科の研修後に入ることができ、1-2年のプログラムを行います。整形外科医は手術を主に手術を行い、Primary care sports medicineではエコーや注射などの手技を含む運動器の外来診療全般に行うという役割分担になっています。Primary care sports medicineの仕事の実際、米国のスポーツ医学教育などについて詳細にお話しをいただきました。トップアスリートだけでなくコミュニティにいる多様な住民へのアプローチなど、Primary care sports physicianとしての幅広い役割についても言及していただきました。

総合討論の時間には、活発な質疑応答がなされました。今後日本のプライマリ・ケアでスポーツ医学領域をどのように展開していくか、多くの示唆を得ることができました。

Yuka先生が所属されているAmrican Medical Society for Sports Medicine（AMSSM、米国のPrimary care sports physicianの学会）では、ウェブサイトで多くの有用な教育リソースが公開されています。　

スポーツ運動医学委員会では、学術大会や学会の各セミナーにおいて、スポーツ医学を学ぶことができるコンテンツを発信していきます。興味を持っていただいた方は是非ご参加ください。

参考：Amrican Medical Society for Sports Medicine
　　　https://www.amssm.org/