ホームスキルアップ在宅医療専門性の高い病院「外来」から在宅医療へのケア移行:ベストプラクティスインタビュー番外編 ― 急性期病院と地域をつなぐ「日本版Extensivist」

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専門性の高い病院「外来」から在宅医療へのケア移行:ベストプラクティスインタビュー番外編 ― 急性期病院と地域をつなぐ「日本版Extensivist」

飯塚病院は、博多から電車や自動車で1時間ほどの筑豊地域にある約1000床規模の病院です。人口約37万人のうち、老年人口約36%と福岡県内で最も高齢化率が高い地域にある唯一の高度急性期病院で移行期ケアに取り組む柏木先生と高橋先生にインタビューをしました。



飯塚病院 連携医療・緩和ケア科の挑戦

「病気はよくなった。でも、家には帰れない」

急性期病院で働いていると、そんな患者さんに出会うことがあります。

感染症や心不全などの急性期治療は一段落したものの、もとの生活に戻るためには、薬剤の調整、リハビリテーション、介護サービスの導入、家族との話し合い、療養場所の選択など、まだ多くの課題が残っています。

高齢化が進み、複数の疾患だけでなく、認知機能やフレイル、独居、経済的問題など、さまざまな課題を抱える患者さんが増えるなか、「病気を治療する」だけでは患者さんの診療は完結しなくなっています。

こうした急性期医療と、その先にある暮らしとの間をつなぐことを専門的に担っているのが、飯塚病院の「連携医療・緩和ケア科」です。

アメリカやイギリスではこういった移行期ケアを専門に担う医師であるExtensivistが活躍し在院日数の短縮や医療費の削減、再入院率の低下などの成果を上げていますが、そこに着想を得て連携医療・緩和ケア科の医師は日本版Extensivistとして活動をしています。

連携医療・緩和ケア科では、常時80〜100名程度の患者さんを主科として診療しています。そのうち3〜4割ががん患者で、残りの6〜7割は、非がん疾患で移行期ケアを必要とする患者さんとなります(1年間で約800名ほど)。これまで専門外来に通院していた患者さんが、入院を契機に当科の移行期ケアの対象となり、退院後は地域のプライマリケア医へケアを移行するケースも多くあります。 

 

HospitalistからExtensivistへ

飯塚病院では、総合内科や循環器内科などと連携医療・緩和ケア科が密接に連携しながら患者さんを診療しています。

総合内科がHospitalistとして主に高度急性期医療を担うのに対し、連携医療・緩和ケア科はExtensivistとして、急性期治療後のPost-acute careや地域へのケア移行を担います。

さらに、Palliative care physicianとして、がん・非がんを問わず、症状緩和、End-of-life discussion、療養場所の調整などの緩和ケア・終末期ケアにも携わります。

急性期から引き継いだ患者さんを、亜急性期、そして必要に応じて終末期まで、切れ目のない形で診療を行っています。また、軽症肺炎や尿路感染症などは内科治療よりはPost-acute careが最初からメインとなるため入院時より主科として担当しています。

このような院内での活動により、図1のように早期から移行期ケアに取り組み在院日数の短縮などを目指しています。
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    図1
「心不全はよくなった。その先」を誰が診るのか

私たちが総合内科や循環器内科と協働する代表的な患者像の一つが、多疾患併存の高齢心不全患者さんです。

高齢心不全では、心不全だけを診ていればよいとは限りません。

糖尿病、腎機能障害、認知機能低下、フレイル、ポリファーマシーなど複数の医学的問題を抱え、さらに独居や老老介護、経済的問題など、生活上の課題を併せ持つこともあります。

当院では、このような患者さんの一部を循環器内科だけではなく、連携医療・緩和ケア科でも入院診療しています。

急性期には総合内科や循環器内科がVolumeの適正化やGDMT(Guideline-Directed Medical Therapy)の導入などを行います。

しかし、うっ血が改善して薬物治療が整えば、そこで診療が終わるわけではありません。

「なぜ今回、心不全が悪くなったのか」
「退院したあと、同じ生活に戻って大丈夫なのか」
「薬をきちんと管理できるのか」
「誰が体重や食事を見てくれるのか」
「また悪くなったとき、どこまで治療を希望するのか」

こうした問いに向き合う必要があります。



急性期治療の「バトン」を受け取る

病状が安定すると、連携医療・緩和ケア科へ診療のバトンを引き継ぎます。

そこからは利尿薬や心保護薬などの調整を継続しながら、Post-acute careを進めていきます。

看護師、薬剤師、リハビリテーションスタッフ、MSWなど多職種と協働して、再入院を予防するための患者教育や生活習慣指導を行う。必要に応じて訪問看護や介護サービスを導入する。そして、患者さんや家族とACP(アドバンス・ケア・プランニング)について話し合い、地域の医療機関へ診療をつないでいく。

つまり、「病気がよくなったから退院する」のではなく、
「この人が退院したあと、どのように暮らしていくのか」から逆算して入院中の医療を考える。

それが連携医療科の重要な仕事の一つです。




病院の中だけで「連携」を考えない

一方、患者さんが実際に暮らすのは急性期病院の中ではありません。

そこで私たちは、病院内の診療だけでなく、地域へのアウトリーチやサイトビジットにも取り組んでいます。

2023年度からは、飯塚病院と頴田病院が連携した「心不全アウトリーチ」を開始しました。

病棟回診や多職種カンファレンス、レクチャーなどを通して、急性期治療の相談、再入院予防、心不全患者さんのACP、看護計画の策定などに取り組み、コミュニティホスピタルでも心不全患者さんを診療できる体制づくりを進めています。
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    写真1.循環器内科医を交えたコミュニティホスピタルでの病棟カンファ
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    写真2. 心不全看護師によるコミュニティホスピタル看護師へ向けたレクチャー
また、ケアミックス病院、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、地域包括支援センターなどへのサイトビジットも行っています。

そこでは、こちらから何かを教えに行くことが目的ではありません。

それぞれの施設の得意なこと、難しいことを知る。
なぜ、その施設では看取りまで行うことが難しいのかを知る。
そして、地域から急性期病院への要望を聞く。

実際の現場を知ることで、急性期病院側の「このくらい地域でできるだろう」という思い込みに気づくことがあります。

連携とは、情報を送ることだけではありません。

相手を知ることから始まる。

私たちはそう考えています。



若手医師にも「退院後の生活」を想像する力を

飯塚病院版Extensivistのもう一つの大切な仕事が「教育」です。

連携医療・緩和ケア科では、若手医師が移行期ケアチームをローテーションします。

そこで学ぶのは、疾患の診断や薬物治療だけではありません。
介護保険制度や病床機能などの社会資源を知ること。
看護師やMSWなど、多職種がどのような役割を担っているのかを知ること。
そして、医学的に正しいだけではなく、患者さんや家族の意向やゴール、さらに退院後の生活まで考えたプランを提案することです。

ローテーションを経験した若手医師からは、
「治療中から、今後の生活の場としてどこがふさわしいか考えられるようになった」
「ポリファーマシーの見直しや予防医学にも目を向けられるようになった」
「他施設の実情を知り、連携を取りやすくなった」
といった声も聞かれています。



「治す医療」と「暮らしを支える医療」の間をつなぐ

高齢化が進むこれからの医療では、一つの病院、一つの診療科、一人の医師だけで患者さんを支えることはますます難しくなっていきます。

急性期病院には高度な治療を行う力が必要です。
地域には、患者さんの暮らしを長く支える力があります。
そして、その二つの間には、治療を生活へとつなぐ役割が必要です。

総合内科がHospitalistとして急性期医療を担い、連携医療・緩和ケア科がExtensivistとしてその後のPost-acute careを担う。そして、地域の医療者へバトンをつなぐ。
必要であれば、Palliative care physicianとして人生の最終段階まで患者さんと家族を支える。

私たちが目指しているのは、新しい専門領域をつくることそのものではありません。

急性期から地域へ、治療から生活へ。
患者さんのケアが途切れない仕組みをつくること。

それが、飯塚病院版Extensivistの目指す姿です。

 


編集後記

この連載では急性期病院とプライマリ・ケアの連携について考えてきましたが、飯塚病院連携緩和ケア科の取り組みは、急性期病院にケア移行、プライマリ・ケア、緩和ケアの視点が高度に備わるとどうなるかの優れた事例だと思います。高度に発展した医療は"点"だけで支えることは難しく、"面"で支える必要がありますが、その"点"を"面"にしていくには"点"と"点"をつないで、"線"とし、さらに"線"と"線"をつないで"面"とする必要があります。そのために院内で、さらには院外で繋がり、面を作っていく、さらにそれを若者に伝えていく。"面"をつくるにはお互いの情報や事情に通じる必要があります。アウトリーチをする必要性が、ケア移行が自然にできるものでなく、意識的・主体的に取り組む必要があることを示しています。

最終更新:2026年09月21日 21時50分

高齢者医療・在宅医療委員会

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高齢者医療・在宅医療委員会

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