スキルアップ
在宅医療
専門性の高い病院「外来」から在宅医療へのケア移行:ベストプラクティスインタビュー番外編 ― 医療資源の少ない地域で在宅医療を支える ―
「医師一人では地域は支えられない。だから任せる。」
― 医療資源の限られた地域で実践する、多職種と築く在宅医療 ―
山形県新庄市では、人口約6万5千人の広い医療圏を、わずか数名の訪問診療医が支えています。冬は雪深く、患者さんのもとへ向かうだけでも40~50分かかることも珍しくありません。
そのような地域で30年以上訪問診療を続けてきた医療法人土田医院の土田秀也先生と、地域で在宅医療を支える有限会社メディカ ほし薬局の薬剤師、星利佳先生に、医療資源の限られた地域で在宅医療を継続するための工夫についてお話を伺いました。
「断らない」を支えるのは、一人で抱え込まないこと
土田先生は、地域唯一の基幹病院に対し、
「病院の先生方の負担を減らすためにも、どんどん紹介してください」
と伝えています。
一見すると、医師一人が献身的に患者を受け入れているように見えます。しかし実際には、一人で抱え込んでいるわけではありません。
例えば薬剤調整。
訪問看護師から相談が入ると、まず薬剤師が調整案を作成し、その案を土田先生へ提案します。医師はその中から患者さんに合うものを選択するだけで済みます。
がん患者の疼痛コントロールでも、土田先生は
「薬のことは星先生に教えてもらっています。」
と自然に話します。
専門性を発揮する人に任せる。
その積み重ねが、一人の医師でも地域を支えられる仕組みになっていました。
「先生に聞けばいい」ではなく、「星先生に聞けばいい」
星先生が地域へ来た当初、目標にしたのは「チーム土田」の一員になることでした。
そのために在宅医療や緩和ケアを学び、積極的に薬剤の提案を続けました。
最初は看護師との関係づくりにも苦労しましたが、
「薬のことなら星先生に聞けばいい」
という雰囲気が少しずつ地域の中でできあがっていきました。
土田先生も薬剤については自然に星先生へ相談します。
役割が明確だからこそ、医師へ相談が集中せず、それぞれの専門性が生きています。
心理的安全性がチームを育てる
印象的だったのは、お二人とも「否定されない関係」を何度も口にされたことです。
土田先生は、
「まず全部受け入れて、診てみて、自分はこう思うけど、と話し合う。」
と話します。
星先生も、
「患者さんのことを思って話せば、意見が違っても怒られない。」
と語ります。
共通しているのは、「誰が正しいか」ではなく、「患者さんのためになるか」を判断基準にしていることです。
この心理的安全性があるからこそ、多職種が積極的に意見を出し、結果として医師の負担も軽減されています。
医師だけでは見えない生活がある
土田先生は、
「訪問診療に行っていない先生には見えないものがある。」
と言います。
病院では病気が中心になりますが、在宅では生活が中心になります。
一方で、
「20~30年在宅をやっていても、患者さんの生活を24時間見ているわけではない。」
とも話します。
だからこそ、訪問看護師や薬剤師から得られる生活情報が欠かせません。
医師が生活を支えているのではなく、多職種が集めた情報をもとにチーム全体で生活を支えているという姿勢が印象的でした。
看取りを支えるのもチーム
夜間に患者さんが亡くなった場合でも、まず訪問看護師が対応します。
朝になるとエンゼルケアが終わり、穏やかな表情になった患者さんのもとへ土田先生が伺います。
家族も医師ではなく、まず訪問看護師へ連絡することを理解しています。
施設でも事前に看取りについて十分話し合っているため、施設も安心して対応できます。
こうした一つ一つの役割分担が、医師一人では支えきれない地域医療を支えています。
「一人で頑張る」ではなく、「任せる勇気」
今回のお話を伺っていて印象的だったのは、「医師が地域を支えている」のではなく、「医師が多職種を信頼して任せている」という点でした。
患者さんに最も近い職種が情報を集め、それぞれの専門性を発揮する。
医師はその情報をもとに判断し、チーム全体で患者さんを支えていく。
医療資源が限られた地域だからこそ必要なのは、誰か一人の献身ではなく、互いを信頼し、役割を分かち合うチームづくりなのかもしれません。
編集後記
「医療資源の少ない地域で在宅医療は本当に実践できるのか?」これから多くの地域で医療資源が少なくなっていく中でどのように在宅医療を実践するかはとても大きなテーマです。
土田先生は、多職種の専門性を信頼し、任せることで、一人では到底担えないと思われる役割を担っていました。
そして星先生をはじめとする多職種は、その信頼に応える形で主体的に考え、行動しています。
医師の役割と限界、そして心理的安全性とタスクシェア、目指すべき医療の姿がここにあると感じました。
こうした「任せる文化」と「支える文化」は、一朝一夕にできるものではありません。
しかし、医療資源が限られる地域だからこそ、その文化が地域医療を持続可能なものにしているのだと強く感じました。
― 医療資源の限られた地域で実践する、多職種と築く在宅医療 ―
山形県新庄市では、人口約6万5千人の広い医療圏を、わずか数名の訪問診療医が支えています。冬は雪深く、患者さんのもとへ向かうだけでも40~50分かかることも珍しくありません。
そのような地域で30年以上訪問診療を続けてきた医療法人土田医院の土田秀也先生と、地域で在宅医療を支える有限会社メディカ ほし薬局の薬剤師、星利佳先生に、医療資源の限られた地域で在宅医療を継続するための工夫についてお話を伺いました。
「断らない」を支えるのは、一人で抱え込まないこと
土田先生は、地域唯一の基幹病院に対し、
「病院の先生方の負担を減らすためにも、どんどん紹介してください」
と伝えています。
一見すると、医師一人が献身的に患者を受け入れているように見えます。しかし実際には、一人で抱え込んでいるわけではありません。
例えば薬剤調整。
訪問看護師から相談が入ると、まず薬剤師が調整案を作成し、その案を土田先生へ提案します。医師はその中から患者さんに合うものを選択するだけで済みます。
がん患者の疼痛コントロールでも、土田先生は
「薬のことは星先生に教えてもらっています。」
と自然に話します。
専門性を発揮する人に任せる。
その積み重ねが、一人の医師でも地域を支えられる仕組みになっていました。
「先生に聞けばいい」ではなく、「星先生に聞けばいい」
星先生が地域へ来た当初、目標にしたのは「チーム土田」の一員になることでした。
そのために在宅医療や緩和ケアを学び、積極的に薬剤の提案を続けました。
最初は看護師との関係づくりにも苦労しましたが、
「薬のことなら星先生に聞けばいい」
という雰囲気が少しずつ地域の中でできあがっていきました。
土田先生も薬剤については自然に星先生へ相談します。
役割が明確だからこそ、医師へ相談が集中せず、それぞれの専門性が生きています。
心理的安全性がチームを育てる
印象的だったのは、お二人とも「否定されない関係」を何度も口にされたことです。
土田先生は、
「まず全部受け入れて、診てみて、自分はこう思うけど、と話し合う。」
と話します。
星先生も、
「患者さんのことを思って話せば、意見が違っても怒られない。」
と語ります。
共通しているのは、「誰が正しいか」ではなく、「患者さんのためになるか」を判断基準にしていることです。
この心理的安全性があるからこそ、多職種が積極的に意見を出し、結果として医師の負担も軽減されています。
医師だけでは見えない生活がある
土田先生は、
「訪問診療に行っていない先生には見えないものがある。」
と言います。
病院では病気が中心になりますが、在宅では生活が中心になります。
一方で、
「20~30年在宅をやっていても、患者さんの生活を24時間見ているわけではない。」
とも話します。
だからこそ、訪問看護師や薬剤師から得られる生活情報が欠かせません。
医師が生活を支えているのではなく、多職種が集めた情報をもとにチーム全体で生活を支えているという姿勢が印象的でした。
看取りを支えるのもチーム
夜間に患者さんが亡くなった場合でも、まず訪問看護師が対応します。
朝になるとエンゼルケアが終わり、穏やかな表情になった患者さんのもとへ土田先生が伺います。
家族も医師ではなく、まず訪問看護師へ連絡することを理解しています。
施設でも事前に看取りについて十分話し合っているため、施設も安心して対応できます。
こうした一つ一つの役割分担が、医師一人では支えきれない地域医療を支えています。
「一人で頑張る」ではなく、「任せる勇気」
今回のお話を伺っていて印象的だったのは、「医師が地域を支えている」のではなく、「医師が多職種を信頼して任せている」という点でした。
患者さんに最も近い職種が情報を集め、それぞれの専門性を発揮する。
医師はその情報をもとに判断し、チーム全体で患者さんを支えていく。
医療資源が限られた地域だからこそ必要なのは、誰か一人の献身ではなく、互いを信頼し、役割を分かち合うチームづくりなのかもしれません。
編集後記
「医療資源の少ない地域で在宅医療は本当に実践できるのか?」これから多くの地域で医療資源が少なくなっていく中でどのように在宅医療を実践するかはとても大きなテーマです。
土田先生は、多職種の専門性を信頼し、任せることで、一人では到底担えないと思われる役割を担っていました。
そして星先生をはじめとする多職種は、その信頼に応える形で主体的に考え、行動しています。
医師の役割と限界、そして心理的安全性とタスクシェア、目指すべき医療の姿がここにあると感じました。
こうした「任せる文化」と「支える文化」は、一朝一夕にできるものではありません。
しかし、医療資源が限られる地域だからこそ、その文化が地域医療を持続可能なものにしているのだと強く感じました。
最終更新:2026年07月03日 20時08分
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