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プライマリ・ケア Field LIVE!

Vol.04/「学会認定プライマリ・ケア看護師の第1期生として、診療所・看護や学会・企画運営など多彩に活躍中」【看護師】田中亜紀子さん

医療現場の中心が総合病院から地域の診療所や在宅診療へシフトしていくなか、プライマリ・ケアを担う看護師のニーズが高まっています。そんな背景から2019年7月にスタートしたのが、『プライマリ・ケア看護師認定制度』です。
その第1期生であり、現在学会のプライマリ・ケア看護師認定委員会 委員、看護部会・政策部門委員で委員長としてもご活躍の田中亜紀子さんに、認定プライマリ・ケア看護師や診療所の看護の魅力についてお話しを伺いました。

総合病院の病棟勤務から出産・育児を経て診療所の看護へ

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- 田中さんの看護師としてのキャリアについて聞かせてください。

中学生のとき、「人のために何かできる仕事を」と看護師を志すように。看護短大を卒業後、地元の静岡にある700床規模の県立総合病院に就職し、呼吸器外科・泌尿器科・眼科・耳鼻科がある外科混合病棟で4年、呼吸器内科の単科病棟に7年の計11年間勤務しました。その後、新しく創設された静岡県立静岡がんセンターの緩和ケア病棟で約3年、出産まで働いていました。

- 緩和ケア病棟のご経験が、プライマリ・ケアに関わるきっかけに?

呼吸器内科へ配属になり、がん終末期の患者さんの緩和ケアに携わるようになってからですね。呼吸器内科には、手術や抗がん剤治療ができない患者さんも多くいらして…。緩和ケアについて、もっと知りたい、深く関わりたいという思いが強くなりました。静岡がんセンターの設立準備室に配属後は病院立ち上げに携わりながら、東京の聖路加国際病院で1年間研修し、緩和ケア病棟でも学ばせてもらいました。静岡がんセンターが開院してから緩和ケア病棟に着任したのも、自ら望んだこと。2人目出産で退職しなければ、そのまま働き続けていたと思います。

- 看護師として復帰されたのは?

今から15年ほど前、3人の子どもの育児が少し落ち着いてからです。静岡がんセンターへ研修に来られたことがある「トータルファミリーケア北西医院」の院長(北西 史直医師)が、お声がけくださって。総合診療医として、訪問診療・在宅の緩和ケアにも力を注がれていることを知り、お手伝いさせてほしい!と。看護師としての自分が再び目覚めた感じがしました。
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    田中さんが現在勤務する 静岡県富士市のトータルファミリーケア北西医院

プライマリ・ケア看護の学びが新たな扉を開いた

- 復帰後は順調でしたか?

診療所で働き始めた頃は、それまでの経験があれば何とかなるだろうと考えていました。でも、限られた時間のなかで多くの患者さんに関わっていく診療所は病棟勤務とは勝手が異なり、看護師の役割が分かりづらいところがあって。
外来勤務や訪問診療の同行をしながら、診療所の看護師としての関わり方について、考えるようになりました。
でも、専門的な看護を学びたくてもテキストがなく、勉強会もセミナーの情報もない…。

- そんな時に日本プライマリ・ケア連合学会を知った?

はい。診療所の院長が日本プライマリ・ケア連合学会に加入されていて、「診療所看護師向けのセッション(勉強会)があるよ」と教えてくださって。それが最初の出会いで、2013年のこと。
看護師として、ニーズの変化に合わせた、しなやかな対応をするために、総合的で包括的な看護を学びたいと思って参加しました。

- 学会認定プライマリ・ケア看護師の制度がスタート(2019年)する以前から参加されていたんですね?

そうです。ちょうど2014年、学会では、プライマリ・ケア領域を担う看護師を育てるための養成プロジェクトが立ち上がり、看護師認定制度に向けた準備が始まった時期でもありました。一緒に勉強していた仲間との繋がりから、「プライマリ・ケア看護師養成のプロジェクトのコアメンバーに入りませんか?」と学会からお声がけいただいて。
いろいろなタイミングが良い意味で重なり、ラッキーでした。

- そして、看護師認定の1期生に合格。認定までの流れを教えてください。

プライマリ・ケア看護学に関する計27時間以上のe-ラーニングを受講し、東京・大阪等で開催される学会主催の看護セミナー(現在はオンラインでも開催)を計9時間以上受講します。さらに、「トリアージ」「慢性疾患管理」「家族志向のケア」の必須領域3事例の報告書類、「在宅ケア」「緩和ケア」「地域ケア」など、13領域から2領域を選択した2事例の報告書類(計5 事例)を作成し、学会の審査を受けて合格すれば、プライマリ・ケア看護師としての認定を受けられます。

- 看護師として働きしながらだと結構ハードですね…。1期生は田中さんを含めて何名くらい?

20名です。診療所勤務や病院の外来勤務、訪問看護ステーションの看護師が多く、私と同じような葛藤や課題を感じていて。認定までの学びの大変さよりも、「志を共にできる仲間と出会えた」という喜びの方が大きかったですね。プライマリ・ケアの学びを通して、看護師としての前向きな夢と悩みの両方を分かち合える、かけがえのない仲間と出会えました。大げさではなく、新たな世界への扉が開いた感じがしました。

プライマリ・ケア看護の学び仲間とエネルギッシュに活動!

- プライマリ・ケアを学んで何が一番変わりましたか?

患者さんご自身に寄り添った看護を、その方の生活やご家族も含めて、しっかりとサポートできるようになったことです。ちょっとした患者さんの表情の変化が気になり、処置や検査をしながら会話するなど、患者さんとの接し方が変わり、気付きの視点も増えました。
振り返ってみると、病棟勤務の看護師だったときは、患者さんの入院生活をどう支えていくか?がメインになってしまい、退院後の生活やご家族のことが少ししか視野に入っていなかったのかな、って。看護師として自分を客観視できるようになりました。
患者さんとご家族は切り離して考えるのではなく、大切な一つのケアユニット。それが、プライマリ・ケアを学んで得た新たな視点です。
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    患者さん、ご家族様と共に
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    地域のイベントにも積極的に参加

- 学びを通じて出会った看護師仲間とは現在も交流を?

はい。学会とは別に「FPNs(Family Practice Nurse)会」という自主的なグループを結成し、家庭医療やプライマリ・ケアに関心のある看護師が集い、日々の学びや気付きを共有する場にしています。現在も月1回はオンライン勉強会で顔を合わせていますし、学会の夏期セミナーや学術集会でワークショップを企画・開催したり、その他発表の機会をいただくなど活動の場を増やしています。
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    2011年に結成したFPNsのメンバーと。現在、公式Facebookの参加者数は190名にも!
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    看護師向けの学会セミナーに登壇する田中さん

- 看護師の仕事と子育ての両立、さらに学会とFPNsの活動。すごいです。

ぜんぶ、大好きなんです。プライマリ・ケア看護と出会ってから、仲間がどんどん増えていくのが嬉しくて、楽しくて、忙しさも忘れるほど(笑)。1期生20名からスタートしたプライマリ・ケア看護師の認定者は、2022年度で4期生・71名になりました。「認定者の会」を立ち上げ、勉強会や雑談会を通じて交流を深めています。ですが、認定看護師が日本全国に散らばっているので、オンラインでは繋がれても、実際に対面で交流したいと思いながら、なかなか実現できていません。これから対面スタイルで認定者同士の横の繋がりを強める活動にも力を入れたいと考えています。

プライマリ・ケア看護を通して地域を幸せに

- ほかにも感じている課題と目標があれば、聞かせてください。

今はまだ診療所をはじめプライマリ・ケアの看護に関心がない、プライマリ・ケア看護師の認定制度にメリットを感じていないという看護師に、プライマリ・ケアの魅力を伝えながら、少しずつ裾野を広げていくことが課題であり、目標です。特に、看護師として「なかなか自信を持てない」「キャリアプランを描けない」と悩んでいる多くの人に、プライマリ・ケア看護師の意義と可能性を知ってもらい、認定を取得して自信と誇りを持って働けるようになってほしいと思っています。

プライマリ・ケア看護って、家庭医や総合診療医と考え方や学びの部分で共通項が多いので、看護師認定を取ると、病院や診療所などの職場内で他職種と協働していける力が高まり、視点も深くなります。それが地域の人々の暮らしが豊かになるということに実は繋がるのだと感じています。

- 現在、多様なフィールドで働く看護師にメッセージをお願いします。

プライマリ・ケア看護は、まだまだ発展途上の領域かも知れません。だからこそ、まだまだ成長できるノビシロもたくさん感じています。

特に女性看護師は、出産や育児などでキャリアプランの変更や中断を迫られることも多いですよね。地域の診療所をはじめとするプライマリ・ケア看護は、私自身が3人の子育てを経て少しずつ看護師として復帰できたように、「子どもが学校へ通っている時間だけ」「週2日だけ」など多様な働き方が可能で、ワークライフバランスが取りやすい利点もあります。

プライマリ・ケアの看護師は、地域の人々と生活を結ぶ架け橋です。自分自身と家族も暮らす地域を、より良くするために、看護師としてできることは何なのか。

どうすれば、看護の現場をもっと魅力的で笑顔あふれるものにできるのか。一緒に学び、共に成長しましょう!

プロフィール

トータルファミリーケア北西医院/
富士地域ケア総合診療センター
看護師 田中 亜紀子(たなか・あきこ)

~プロフィール~
1990 年 岡山大学医療技術短期大学部看護学科卒業
1990 年 静岡県立総合病院(呼吸器外科・内科、泌尿器科、耳鼻科、眼科)
2001 年 聖路加国際病院(呼吸器内科、腎臓内科、緩和ケア科)
2002 年 静岡県立静岡がんセンター(緩和ケア科)
2008 年〜トータルファミリーケア北西医院/富士地域ケア総合診療センター 
2014 年〜日本プライマリ・ケア連合学会プライマリ・ケア看護師認定委員会委員 
2019 年 日本プライマリ・ケア連合学会認定プライマリ・ケア看護師取得
2022年〜日本プライマリ・ケア連合学会看護師部会政策部門委員
FPNs(Family Practice Nurse)会・公式Facebook
https://www.facebook.com/groups/378106038886339/

取材後記 ~看護師の支えあればこその家庭医療〜

診療所の看護師としてだけでなく、日本プライマリ・ケア連合学会で看護師育成のプロジェクトを担う役割も任されている田中さん。日本の抱える地域医療の課題とともに、看護師としてのキャリアを柔軟に積み重ねている印象を受けた。一人で何役もこなすバイタリティーの源は、「プライマリ・ケア看護の学びを通して得た仲間の存在」と、にっこり。看護師たちが自らの力とネットワークで、自分らしく活躍できる場を創り出す。そんな明るい未来を感じることができた。

最終更新:2023年01月20日 17時22分

「もっとプライマリ・ケア」 編集担当

記事の投稿者

「もっとプライマリ・ケア」 編集担当

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