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健康と社会を考える/プライマリ・ケアは健康格差を縮められるか

はじめに

本シリーズでは、ここまでさまざまなプライマリ・ケアの現場における健康の社会的決定要因の現状や取り組み、
こうした要因にアプローチする際にソーシャルワークの視点をもつことの有用性などについて述べられてきた。本稿では、すこし目線を上げて、ヘルスケアシステムの一部と してプライマリ・ケアを捉えた際に、健康格差を縮める役割を担っているのか、について、エビデンスと私見を交えながら考えてみたい。まず、背景にあるプライマリ・ヘルス・ケアの概念とプライマリ・ケアの関連について解説を加え、その後エビデンスレビューに基づいて、プライマリ・ケアが健康格差を縮められているかを確認してみよう。

プライマリ・ヘルス・ケアとプライマリ・ケア

2019年5月、世界銀行やG7の保健相、国際機関の長らが出席する会合にて、G7は閣僚声明を発表し、「プライマリ・ヘルス・ケアを強化することが健康格差を縮小するための最もスマートな方法である」ことを強調した。プライマリ・ヘルス・ケアは1978年のアルマ・アタ宣言に端を発する、用意すべきヘルスケアシステムの根幹となる考え方とされている。地理的条件や費用面、医療の質などの面ですべての人への医療アクセスの改善を行い、“No one left behind(誰も取り残さない)"をめざすUniversal Health Coverageの概念もこの考え方の延長線上にある。

すべての人が、どこでも、自分の住む地域で、適切なケアを受ける権利がある。これがプライマリ・ヘルス・ケアの大前提である。プライマリ・ヘルス・ケアは、生涯を通じて、人の健康ニーズの大部分に対応するものであり、そのなかには身体的健康、精神的健康、社会的健康、そしてウェルビーイングすべてが含まれる。病気中心ではなく、人中心であるところも大きな特徴である。プライマリ・ヘルス・ケアは、健康増進、疾病予防、治療、リハビリテーション、緩和ケアなどについて、国を含む社会全体で取り組み、めざす方向性といえる。

プライマリ・ヘルス・ケアとプライマリ・ケアは混同されがちだが、このプライマリ・ヘルス・ケアの実現のために、プライマリ・ケアは主に臨床現場におけるアプローチとして欠かせない仕組みといえる。

ヘルスケアシステムとしてのプライマリ・ケアの機能

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最終更新:2023年04月27日 11時52分

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