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健康と社会を考える/社会的処方ってなに?プライマリ・ケア医はやるべき? Part.1

「モントリオールの医師は美術館訪問を処方する」、 「スコットランドの医師は自然を処方する」

読者の皆さんは、このようなタイトルの記事を目にしたことはあるだろうか。「モントリオールの医師は美術館訪問を処方する」、「スコットランドの医師は自然を処方する」。
これらはどちらも2018年10月のWorld Economic Forumの記事である。実はこの手の記事が最近増えている。読者のなかには、この著者たちは何をいっているのか??と混乱される読者もいるかもしれない。しかしどうぞご安心を。本稿と次回(Vol.4 No.3)の記事をお読みいただければ、これらの意味・意義について十分にご理解いただけると信じている。ひょっとしたらあなたも「美術館」や「自然」を処方せずにはいられなくなるかもしれない。

健康は医療だけが規定するか?

この雑誌の読者の多くには釈迦に説法になってしまうかもしれないが、論を進めるにあたり重要な項目なのでおつきあい願いたい。
人々の健康とは、狭義の医療のみが規定するものであろうか。たとえば、心臓の病気は、遺伝子と血圧と血糖値とBMIと喫煙とコレステロールと家族歴でほぼ規定されるだろうか。リスク軽減は、これらのいわゆる生活習慣の改善と適切な内服を継続することくらいであろうか。答えは、当然これらは重要な因子であるが、ほかにも考慮すべき重要なことがある。たとえば喫煙するかどうかは、本人の意思の強さ(?)だけではなく、家族や職場や友人に喫煙者がいるかどうかも大きく影響するだろう。もちろん本人の喫煙に対する理解も重要だろう。また日本のように、政府がたばこ会社の大株主であり、たばこの値段が政府によりひどく安く抑えられていたり、禁煙治療のための保険適応が寛容ではないような国では、国民はなかなか喫煙はやめることができないかもしれない。
このように、個人の健康といっても、その個人の遺伝や意思だけにより規定されるのではなく、その個人を取り巻く社会経済的な環境にも大きく影響される。これを健康の社会的決定要因social determinants of health(SDH)とよび、近年では学術研究にとどまらず、世界医師会、日本医師会、各国の医師組織などがSDHへの取り組みを加速させている。

社会的なつながりが健康と関連する

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最終更新:2023年06月23日 00時00分

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