ホームニュースCurrent topics - プライマリ・ケア実践誌気候変動とプライマリ・ケア/「第3回」病院でどんな気候変動対策ができるでしょうか?

ニュース

Current topics - プライマリ・ケア実践誌

気候変動とプライマリ・ケア/「第3回」病院でどんな気候変動対策ができるでしょうか?

本連載は、当学会プラネタリーヘルスワーキンググループによる「気候変動」をテーマにした全3回のシリーズです。近年、気候変動は危機的な状況を迎えつつあり、全世界で取り組みが加速しています。私たちがかかわる医療も例外ではありません。第2回では診療所で取り組める対策について紹介しましたが、第3回ではとくに病院で取り組める対策について解説していきます。
気候変動対策は、適応策(すでに起こっている気候変動の影響への対策)と緩和策(温室効果ガス排出などの要因を改善する対策)の二つに分けられました。適応策については第1回、第2回でも詳しく述べており、病院と診療所では重複するところも多いため、今回はとくに病院で取り組む緩和策のほうに着目してみていきましょう。
病院は、第2回でみてきた診療所と比べて、働いている人員も取り扱う医療資源の量もはるかに大きい医療システムです。そのため、日常的な活動の至るところで温室効果ガス(greenhouse gas:GHG)の排出につながります。GHGの全体の排出量(カーボンフットプリント)で考えると、外来通院で加療した場合は平均で1人当たり年間2.1tのCO2を排出するのに対して、病院に入院して加療した場合12tのCO2を排出し、約6倍ものGHG排出量の違いが出るという試算もあります。
医療システムから排出されるGHGは大きく、医療施設自らによる直接的な排出(スコープ1)、他施設から供給された電気や熱・蒸気の使用に伴う間接的な排出(スコープ2)、医療施設で提供するサービスや商品について関連企業を含むサプライチェーン全体で発生する間接的な排出量(スコープ3)、という三つの区分に分類できます。一般的に医療からの排出量はとくにスコープ3からの排出量が多くを占めるといわれていますが、病院での緩和策を考える際にはスコープ3だけではなく、スコープ1、スコープ2で排出されるGHGも考慮し、多様な視点をもって対策を考える必要があります。
病院から排出されるGHGについて、我が国の病院で問題となるものを図1にまとめました。大きく、病院の建物、移動手段、医薬品、食事、廃棄物という視点で整理できます。それでは、それぞれの問題とその具体的な緩和策についてみていきましょう。
  • https://www.primarycare-japan.com/pics/news/news-693-1.jpg
POINT
・病院は医療資源を多く使用する大きな医療システムであり、病院における活動のさまざまな場面で温室効果ガスの排出が起きています。
・医療者個人で緩和策を取り組むには限界があり、院内の診療の質やサービスの改善活動の一環として多職種で取り組みましょう。

病院で取り組む緩和策

●病院の建物

ここから先は
日本プライマリ・ケア連合学会の
会員記事です

ログインして続きを読む

入会のご案内

最終更新:2024年03月05日 00時00分

実践誌編集委員会

記事の投稿者

実践誌編集委員会

タイトルとURLをコピーする