ニュース
災害医療
災害支援活動組織「PCAT」 第1回導入研修を開催 〜多様な職種から25名が参加、スフィア基準を用いたケースワークも実施〜
2024年12月14日、15日に日本プライマリ・ケア連合学会は、大規模災害発生時に被災地域の健康に貢献する災害支援活動組織「PCAT(Primary Care Assistance Team)」の第1回導入研修を開催しました。
過去2回のパイロット研修を経て、今回、第1回PCAT導入研修を開催する運びとなりました。定員25名に対し、39名もの方々からお申し込みをいただきました。参加者の選考にあたっては、職種、地域性、災害活動経験、および保有資格等のバランスを総合的に考慮し、委員会での協議を経て決定いたしました。結果、医師、看護師(うち、診療看護師1名)、薬剤師、管理栄養士など、多様な職種から計25名が参加しました。
研修の目的と内容
PCATは災害時に多種多様な支援活動が想定されます。そのため、本研修では特定の活動内容に焦点を当てるのではなく、「どのように活動するか」という活動の指針やチームビルディング、コミュニケーションスキルに重点を置いたプログラム構成としています。本研修の目的は、災害発生時にPCATの一員として安全かつ正しく活動するための災害医療に関する基本的な知識を取得し、PCAT隊員に求められる資質を養うための技術やコミュニケーションスキルを獲得することです。
研修では、災害などの影響を受け、困難な状況にある人々が尊厳ある生活を送ることができるよう支援するために重要な指針を示した「スフィアハンドブック」を用いたケースワークを取り入れました。スフィアハンドブックは、石破茂首相が所信表明演説で取り上げられたことでも話題となりました。
スフィア基準は、人権を守るための基準の根本的な部分が損なわれることがないよう、基準にとらわれ過ぎず、状況を改善する努力を続けることが何よりも大切だと考えております。この点については、人道憲章・行動規範や権利保護の原則、人道支援の必須基準(CHS)にも明記されています。
研修スケジュール
1日目
・PCAT活動指針や災害関連法規の説明
・災害時の保健医療福祉体制、PCATの組織運営と指示命令系統
・ケースワーク「準備から実働まで」
・DMATやDPATの仕組みと役割、災害薬事、災害時のメンタルヘルスと支援についての講義
・ケースワーク「こころのケアの実際」
・PCAT活動指針や災害関連法規の説明
・災害時の保健医療福祉体制、PCATの組織運営と指示命令系統
・ケースワーク「準備から実働まで」
・DMATやDPATの仕組みと役割、災害薬事、災害時のメンタルヘルスと支援についての講義
・ケースワーク「こころのケアの実際」
2日目
・PCAT内の情報共有
・災害時の診療記録
・DWATや日本赤十字社における災害支援の仕組みと役割
・スフィアハンドブックを用いたケースワーク「過去の反省から学ぶ」
・今後の派遣体制について
・PCAT内の情報共有
・災害時の診療記録
・DWATや日本赤十字社における災害支援の仕組みと役割
・スフィアハンドブックを用いたケースワーク「過去の反省から学ぶ」
・今後の派遣体制について
プライマリ・ケアの重要性とPCATの役割
災害の影響を受けた地域では、プライマリ・ケアのニーズが高まります。日本プライマリ・ケア連合学会は、近接性・包括性・協調性・継続性・責任性(ACCCA)をプライマリ・ケアの原則として重視しています。特に亜急性期から慢性期にかけて、プライマリ・ケアを担う医療者の役割は極めて重要です。
PCATは、多職種連携を得意とするプライマリ・ケア従事者の強みを活かし、公衆衛生の視点をもって介護・福祉領域や行政との連携を図りながら、災害の影響を受けた地域の住民の生活を支援することを目的としています。
PCATの沿革と今後の展望
PCATは2011年の東日本大震災時に初めて発動され、その後2016年の熊本地震でも「PCAT2016」として活動しました。2019年度からは学会としての災害支援継続方針に転換し、2022年度にPCATの本格的組織化方針が承認されました。2023年度には災害支援活動に関する規則案・細則策定が承認され、今回の第1回PCAT導入研修の開催に至りました。
直近の活動として、2024年1月の能登半島地震および9月の能登豪雨災害では、PCATとしての活動ではありませんでしたが、支援プロジェクトを立ち上げ医療支援活動を行いました。この活動を通じて、能登北部医師会として輪島市保健医療福祉調整本部に受援側代表として入られていたごちゃまるクリニック小浦院長が、調整会議体に出席できるような体制を構築しました。
PCAT登録者による支援活動組織の構築を進め、災害発生時に迅速かつ効果的に対応できる体制を整備してまいります。来年度も2回の導入研修開催を予定しておりますので、今回参加が叶わなかった方も、ぜひ次回以降の研修にご参加いただければ幸いです。
最後に、本研修にご協力いただいた全ての関係者の皆様に心より感謝申し上げます。引き続き皆様のご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
最終更新:2024年12月15日 18時27分
記事の投稿者
災害医療システム委員会
災害時のプライマリ・ケアの維持とプライマリ・ヘルスの維持と向上を目指して、学会としてできる取り組みを見出し、形にすることを目的とした委員会です。
タイトルとURLをコピーする