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産業保健
【活動報告】日本産業保健法学会 第4回学術大会に参加しました!
1.はじめに
2024年9月21日から22日に開催されました日本産業保健法学会 第4回学術大会において日本プライマリケア連合学会との連携学会シンポジウム6 テーマ「ギリギリの就業判定~運転業務従事者を焦点に~」というセッションに安藤先生は座長、わたくし富田はシンポジストとして参加しましたのでご報告させていただきます。
2.シンポジウムの様子
最初に安藤先生から日本プライマリ連合学会の紹介・プライマリケア医は全世代にとって健康問題の最初の相談先となり得る、その中での診断書の作成の重要性・今回の企画に至る背景が述べられました。
次に合同会社ワンピックの渋谷純輝先生(産業医)から「トラックドライバーと産業保健」と題してトラック運送業の構造と課題・過酷な労働環境などについて述べられると共に、その一方で安全に運転できるかどうかの判断は複雑で曖昧さを含み実に悩ましいとの意見が示されました。
次に弁護士法人淀屋橋・山上合同の渡邊徹先生(弁護士)より労働安全衛生法・貨物自動車運送事業法など法律の観点から事業主の法律上の義務や各種指針とガイドライン・運転手(労働者)の義務について説明がありました。
次に合同会社ワンピックの渋谷純輝先生(産業医)から「トラックドライバーと産業保健」と題してトラック運送業の構造と課題・過酷な労働環境などについて述べられると共に、その一方で安全に運転できるかどうかの判断は複雑で曖昧さを含み実に悩ましいとの意見が示されました。
次に弁護士法人淀屋橋・山上合同の渡邊徹先生(弁護士)より労働安全衛生法・貨物自動車運送事業法など法律の観点から事業主の法律上の義務や各種指針とガイドライン・運転手(労働者)の義務について説明がありました。
3.事例提示
次にわたくし富田から「大手トラック運送会社に勤務する58歳男性(ドライバー歴15年)が自損事故を起こし病院を受診して勤務の継続が可能かどうか医師の判断をもらうように会社から指示を受けた」という事例を提示しました。頭部MRI・MRA・脳波の結果から脳の器質的疾患・てんかんは否定的。高血圧・糖尿病もあるが内服アドヒアランスが悪くコントロール不良。肥満(BMI 29)あり。簡易ポリソノグラフィー検査でAHI 15とSASは認めるがCPAP適応にはならない。エプワース眠気尺度は7点で軽度の眠気あり。このような事例に運転可否の診断書を求められた主治医はどうするか?先生方ならどうしますか?「運転可能なんて診断書は書けない!」「患者さんに泣きつかれたし…ひどいSASじゃないし診断書を書いてあげたい」「どうしたら良いのか?困った」など様々な意見があると思います。
4.登壇者間のディスカッション
ここで東京南部法律事務所の竹村和也先生(弁護士)から法律家にとっての「診断書」の意味とその重要性などについて説明があり、その後、診断書発行不可の主治医Aと発行可の主治医Bを提示し登壇者間でディスカッションをしました。このシンポジウムの性格上、渡邊弁護士(雇用者側)・竹村弁護士(労働者側)・産業医(渋谷先生)・主治医(富田)といった形のポジショントークにならざるを得ない部分もありましたが、非常に有意義な議論になったと感じています。会社側からはトラックドライバーの大事故は企業の存続に関わる重要問題になるのでなんとか運転させないようにできないか?という意見。産業医からは高血圧・糖尿病があり認知機能低下はないのか?主治医との連携の必要性を問う意見。主治医(富田)からはAHI 15でも事故を起こしCPAP導入で劇的に改善するケースもある。現在CPAPの記録はオンラインでわかるため結果を産業医と共有することは可能だが、風邪など体調が悪い場合は運転させないなどの配慮は必要で、これはかかりつけ医ならではの視点である旨を発言させていただきました。
5.会場とのディスカッション
その後、会場の参加者を含めてのディスカッションになり「勤務可の診断書を書いたことで一見ハッピーエンドに見えてその後、再事故ということもある。」「就業不可の診断書を書いた主治医Aは過剰診断。果たしてこの事故はSASが原因なのか?自分なら条件付きで診断書を発行する。」「就業不可能にしても期限を設ける」「乗務がだめでも他の仕事に配置転換するなどができないか?」など会場と登壇者の間で多くの意見交換がなされました。
6.終わりに
今回の事例は正解がないテーマではありますが、会場の参加者も含めて熱い議論が展開されました。大田区産業プラザPiOの現地会場には47名(ほぼ満席)、ウエブで41名の参加をいただき、オンデマンド視聴数は273回を超えました!改めて御礼申し上げます。会場のアンケートでは「様々な立場の人の話を聞けて良かった」「主治医としての考えや方針がわかった」など数多くの感想をいただきました。来年度は日程の関係で第5回学術大会への参加は難しいですが、今後も産業保健法学会との連携は継続できればと考えています。
最終更新:2024年12月18日 20時05分