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理事長 草場先生の部屋
プライマリ・ケアとAI
暑い夏が続いていますが、会員の皆さん、お元気でいらっしゃいますか? 私の地元の北海道も異例の暑さの7月に驚きつつ、患者さんと愚痴をこぼし合う日々でした。地球温暖化の影響をひしひしと感じますね。
さて、先日、日本医師会に設置されたAI の臨床利用に関する検討委員会に招かれて「プライマリ・ケア領域における生成AI利活用」と題して話をしてきました。内容としては、プライマリ・ケア領域で重要となる「多様な疾患への対応」、「多職種連携の必要性」、「限られた医療資源」という課題解決についてAI利活用は大変効果的であるという見解を提示しました。ただ、患者中心の医療や継続性といったプライマリ・ケアの基本原則との調和を図るためには、中小病院や診療所などの地域に密着し人的関わりを重視する現場への導入にはバランス感覚が不可欠であること、そして、技術による効率化・能力向上とケアにおける「人の温もり」や信頼関係維持の両立が成功の鍵を握るということをお伝えしました。
委員会の皆さんにはおおむね賛同を頂きましたが、
「患者に対する共感をAIが上手に行う可能性もあるのでは?」
「AIが苦手とする非言語的なコミュニケーションが患者・医師関係に寄与する余地はあるのか?」
といった鋭い質問もあり、これからのAI時代にプライマリ・ケアがどういった点に力を入れるべきか、深く考えさせられる機会となりました。
私自身は、人と人だからこそ生まれる関係性の価値を考えると、質の高いプライマリ・ケアがAIに代替されてしまう可能性はないと考えていますが、AIを利活用する視点は重要ですので今後も学会として研究・発信を続けていかなければいけないと感じています。
草場鉄周
最終更新:2025年08月04日 12時46分