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第13回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 学生セッション 受賞者インタビュー Vo.5 <ポスター発表の部 優秀賞 > 慶應義塾大学医学部

2022年6月11日(土)~12日(日)パシフィコ横浜で開催された、第13回 日本プライマリ・ケア連合学会学術大会 学生セッション。
口演発表(研究)8エントリー、ポスター発表(活動紹介)18エントリーの中から、各部門で受賞された発表内容をご紹介します。

ポスター発表の部 優秀賞

医学生による都会の地域フィールドワークとヘルスプロモーションの取り組み

##受賞内容
ポスター発表の部 優秀賞  
##演題名
医学生による都会の地域フィールドワークとヘルスプロモーションの取り組み
##大学
慶應義塾大学医学部
##発表者名
尾崎 真友さん(慶應義塾大学医学部6年)
##指導者名
春田 淳志先生(慶應義塾大学医学部 医学教育統轄センター)
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慶応義塾大学では、総合診療領域に興味を持つ学生の集まりである、総合診療ゼミの活動の一環として、地域フィールドワークを実施。東京都北区王子・豊島地域の社会福祉協議会や寺小屋子ども食堂の協力のもと、写真を通じて社会に問題提起する「Photo voice」や放課後学習支援、職業体験イベントを行い、これらを通じてフィールドワークの手法を学び、実践と振り返りを発表した。
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データからターゲットとなる地域の傾向をリサーチ

今回の取り組みは、1つ上の学年の先輩たちから引き継いだ活動で、私たちとしては、ネットや文献などを参考にして、地域の傾向を診るためのデータ集めからスタートしました。集めたデータを調べていくうちに、高齢者と外国人が多いことと、収入格差により困っている子どもが多いのではないかということが見えてきました。実際にその中でどんな活動ができるか議論する中で、今回の活動に加わっていただいている王子生協病院の密山先生が、地域の中に子ども食堂があるということを教えてくださって。
活動するメンバーはこれまでまったく関わりのなかった地域でもあるので、密山先生に仲介をしていただきながら活動準備を進めていきました。

「子ども食堂」は食事の提供以外にも勉強を教える場

子ども食堂は月曜日と木曜日の週2日、小学生と中学生を対象にお弁当を提供していますが、宿題を一緒にみたり勉強を教えたりするボランティアの方も一緒に活動をされています。元教師の方や大学生、近くに住む高校生が中学生に英語を教えるなど参加されている方も様ざまで、その中に私たちも入らせていただいた形になります。子ども食堂に来ることができるお子さんは、親の所得など基準があり最初はどんな風に接するのが良いか私たちのほうが身構えていましたが、実際に行ってみると子どもたちのほうが大人に慣れていて、温かな雰囲気で接してくれたのがとても印象的でした。
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― 今回の活動に参加したメンバーは全員が参加されたのですか?

週2日開催されていたので、その日に行けるメンバーが行くといった感じで参加しました。子どもたちと一緒に遊んだり、普通の塾の先生みたいに勉強をみたり想像以上に楽しくて。
この活動から子どもたちの学力や人間関係、子どもたちを取り巻く社会背景を学ぶことができたと思います。

― 地域の方たちの反応は?

子ども食堂に関しては、私たちが関わった1年の間に新しい子どもが加わったり、様ざまな団体との連携など、ニーズの高さを実感しました。周囲からの要望も多くもっと広めていく価値があると思いました。私たちに対しては、医学生というタイトルが付いてしまうと、変なフィルターがかかってしまうのでは?と心配していましたが、それは良い意味での期待であり、その期待を踏まえた関わり方が重要であることも学びのひとつになりました。

― コミュニティ内で「Photo voice」の開催したそうですね

はい、豊島5丁目団地周辺で撮影した写真とともに、撮影者の語りからなる作品を通じて、コミュニティ内の課題等を社会に訴えるという「Photo voice」を開催しました。例えば、商店街に掲示板を出して紹介したり、文化祭でストリートピアノを置いたり、豊島5丁目団地周辺は隅田川を挟んでまったく雰囲気が違うエリアであることが一目でわかる写真を展示したり、様ざまな手法で実施しました。そのほか、地元のお祭りで「医大生としゃべりませんか?」として、地域の方と交流が持てる場を作ったりもしました。
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― 活動するメンバー間の共有はどのように?

子ども食堂に参加したり、イベントを開催した時には、参加したメンバーがそれぞれ振り返りを書き留めて、後日オンラインミーティングでみんなにシェアする形を取っていました。書いた本人は振り返りにもなりますし、見た人は感想やアドバイスをコメントし合うような形でしたので、色んな気づきに繋がりました。特に子ども食堂については、自分がいない日に何が起きていたのかの共有にもなるので、とても便利でした。

小学生向けの職業体験では医療従事者を紹介

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12月に行われた北区社会福祉協議会主催の小学生向け職業体験では、私たちグループは医療従事者を紹介する立場として参加しました。このイベントは地域の企業やボランティアが集まって、弁護士やホテル業、左官職人などを紹介し子どもたちが職業について考えるというもので、私たちは正しい手洗いの仕方や、問診では先生にどういうことを伝えたらいいかをスライドで紹介しました。まだ医者という立場から患者さんと接したことがない私たちにとって、この職業体験では子どもたちと医療について話をしたり、実際に問診や診察体験を通じて接することができる良い機会になりました。

― 春田先生はどのような関わり方をされていたのですか?

フィールドワーク後に必ず振り返りのミーティングを行っていましたが、そこに毎回春田先生にも同席いただいて、私たちが見てきたことを社会学的観点や医学的観点からみたときの考え方やアドバイスをいただいていました。次回はこういう見方をしてみようかな、と新たな視点をくださるのでとても勉強になりました。

― 春田先生からご覧になって今回のフィールドワークのご感想は?

そうですね、フィールドワークについては、学生の皆さんに地域のリアルを感じてもらうことが大きな目的のひとつでした。やはり生物医学的な視点だけで人を診ていると、視野に偏りがどうしても出てしまいます。目の前の人には必ず地域や社会という背景があって、時間軸として一人ひとりの人生があるので、空間や時間の視点で物事を捉えるということをぜひ医学生にも感じてもらいたいと思っていました。また、慶應義塾大学に限らずですが、一貫校出身の医学生が増えてきているので、近所の学校に通ってない、地元の地域活動もよく知らないまま医学生になった人も多く、地域医療といわれてもピンと来ない学生が多いのも実情だったりします。そういった意味でも、物理的な地域や共同体としてのコミュニティを肌で感じてもらうのに、フィールドワークは良い機会になったと思います。

インタビューに答えてくださったお二人の将来目指したいことは?

ー 尾崎 真友さん(慶應義塾大学医学部6年)

今、一番興味があるのは地域医療のような、地域と人と関われることができたらと漠然とですが考えています。今回の取り組みを通じて、自分が何より楽しめたというのが一番大きな理由です。まずは、初期研修の一年間、地方に行くことになったので、何かしら地域活動にも関わっていけたらと思っています。

ー 難波美羅さん(慶應義塾大学医学部3年生)

やりたい事がたくさんあって、まだ定まっていませんが、今回の地域診断を通して、地域を丸ごと診れるというのは自分に合っていると感じました。今は離島に興味があり、コミュニティの温かさはもちろん、医者として責任のある場所で自分を磨いていけるのではないかと、情報収集しながら注目しているところです。

最終更新:2023年03月23日 11時15分

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