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Current topics - プライマリ・ケア実践誌

健康と社会を考える/社会福祉の援助対象者の健康支援を考える② −プライマリ・ケアができることは?−

前回のおさらい

私は医師、社会福祉士の資格を活かしながら生活困窮者の健康支援を専門に研究しています。診療現場で感じた疑問をきっかけに、学習や研究を進めるなかで私は、社会福祉の援助対象者として重要視されているものの、プライマリ・ケアの現場では、注意深く見なければ見えない、診察室の外に出なければ出会わないような、辺縁化された(marginalized、under-represented)人々がいることに気づかされました。
今号ではそのような援助対象者にはどのような人がいて、プライマリ・ケアの担うべき役割は何かを
考えたいと思います。

社会福祉学の援助対象

前号では、「生活困窮」は食料、衣服、金銭などといった健康な生活のために必要な物質が不足しているだけではなく、パワーレスやボイスレスといった状態が強化され人々が社会関係から排除される動的・多次元的な概念であることを紹介しました。では生活困窮者をはじめ、社会福祉学の援助対象となる人にはどのような人がいるでしょうか。

日本で発展した社会福祉学の理論をもとにすると、私たち個人には社会から期待される役割があり、個人にはその役割に対する主体的な適応行為が求められています。社会福祉学における援助対象は、社会から求められる役割への主体的な適応行為がむずかしい状況です。言い換えれば 社会で生きづらさを抱える状況であるといえます(図1)。

保健医療の分野にあてはめて考えると、公衆衛生対策に主体的に参画する役割がイメージしやすいでしょうか。たとえば、私たち個人はコロナ禍において、手洗い、マスク着用、ワクチン接種などの衛生対策を遂行する役割を社会から期待されています。がん対策においてはがん検診の受診やワクチンの接種、製薬プロセスでは臨床試験の遵守などが求められています。診察室に現れる人には患者という役割“Sick Role"が与えられ、診療への協力や服薬の遵守などが期待されています。社会はそのような役割に対する主体的な適応行為がむずかしい人々に呼称をつけて見える 化し、支援を強化しています(表1)。
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最終更新:2023年05月25日 00時00分

実践誌編集委員会

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