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vol.31 / 「生まれ故郷で地域医療を!その夢を描きながら研修に臨む専攻医」【医師】林亮佑先生

今回登場いただくのは専攻医として安房地域医療センター・亀田ファミリークリニック館山で後期専門研修を受けている林亮佑先生。医師になろうと思ったきっかけからプライマリ・ケアとの出会い、家庭医としての将来の夢などについてさまざまに語っていただきました。専攻医ならではのフレッシュな意欲をぜひ感じ取って下さい!
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医師として自分のいのちの時間を誰かのために使っていくということ

— 林先生が医師を目指した理由から教えていただけますか?

最初に意識したのは中学2年生の時だったと記憶しています。その年齢の頃は自分が何をしたいのかがよくわからなかったので、具体的な夢として描いたわけではなく、両親に言われたことがきっかけでした。父は歯科医をしていて「お医者さんもいいよ」と軽い気持ちで言ったのだと思います。
より具体的に考えるようになったのは、高校2年生の時ですね。進路を考えなければならない時期を迎えたので、真剣に将来のことを考えました。ちょうどそのタイミングで読んだのが聖路加国際病院の日野原重明先生の著書です。
そこには「いのちとはあなたが持っている時間のことです。大人になったら、誰かのために自分のいのちの時間を使ってください。」というようなことが書かれていて、素直に「あぁ、そうか」と納得したのを覚えています。

人のために役立つというのは、どの仕事にも言えることです。ただ、他の人のいのちの時間に直接的に関わる医師はこれを体現するものだと感じましたし、その言葉を仰っていた日野原先生ご自身も医師であったことから、「自分も医学の道に進もう」と思いました。医師として自分の時間を周りの人のために使ってみようと思ったんです。
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    生まれ育った場所にはいつも広大な海
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    学生時代はヨット部で大活躍

— 何科の医師になりたいということは考えていましたか?

当時はそこまで考えていませんでしたが「地域の人たちとのふれあいを大切にする医師になりたい」とのイメージは持っていました。と言うのも、私の生まれ育ったエリア(千葉県の南房総地域)は、近所の人たちの仲が良く、人と人とのふれあいを大切にする風土が育まれていたからです。そういう関係性の中で医師として役割を果たしたいと思っていました。その意味では、プライマリ・ケアに通じるものがあったといえますね。
その後、千葉大学の医学部に進んだのですが、私がプライマリ・ケアのことを知ったのはその3年生の時です。プライマリ・ケアと家庭医に関する授業が1コマあって、子供どもから高齢者まで患者さん自身の生活環境や家族のことなども踏まえた上で診療に取り組む姿スタイルに感銘を受けました。「自分がなりたいのは、家庭医だ!」と強く思ったほどです。
私はいま、亀田ファミリークリニック館山で後期専門研修を受けていますが、実はここの院長の岡田(唯男)先生がその時の講師だったんです。

「できるかできないか」ではなく「どうすればできるか」

— 初期研修は湘南鎌倉総合病院でしたね。どういう経緯でこちらに?

高度専門医療が中心となる大学病院で勉強する中で、一時期はプライマリ・ケアや家庭医への関心が頭の隅っこにいってしまっていました。転機となったのは、大学5年生の時に厚生労働省の地域医療計画課というところで2週間のインターンシップを経験した時です。そこで地域医療構想に関する資料作りに携わったのですが、そのなかで日本の医療制度の方針において、プライマリ・ケアが重要な意味を持つことを知ったんです。それでプライマリ・ケアの方面に進もうと思いました。また、厚労省の方々は本気で「世の中を良くしていこう」という思いを持ちながら仕事に取り組んでらっしゃって、その姿勢にも感化されました。それから離島僻地医療に力を入れている病院へ見学に行ったり、アンテナを高くして色んな勉強会に参加したりということを始めてみました。ちょうどその時期にお会いしたのが、塩田病院の総合診療科の青木信也先生です。大学の勉強会で面識を得たのですが、青木先生は湘南鎌倉総合病院の救急科で研修を受けたあと、地域医療の道に進まれたとのことでした。「地域医療をやる上で、目の前の患者さんのアセスメントと初期対応を正確に行う救急医療のスキルがとても大切だ」とのアドバイスをいただいたことがきっかけで湘南鎌倉総合病院のお世話になることにしました。
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    自身の価値観が変わった2週間のインターンシップ

— 湘南鎌倉総合病院ではどのようなことを学びましたか?

同院は救急の患者さんの受け入れ数が国内でもっとも多いことで知られています。(厚労省「令和3年救命救急センターの現況」によると湘南鎌倉総合病院の年間受入救急車搬送人員は16,321人)。それだけの数の患者さんを受け入れるにあたって「できるかできないか」ではなく「どうすればできるか」を考える風土が同院にはありました。目の前の患者さんのために自分たちができることを柔軟に追求するFor the patientsの理念がしっかり根付いているんです。私が同院で学んだことでもっとも大きかったのは、そうした「医療への姿勢」だと思っています。

— 亀田家庭医総合診療医専門プログラムを選んだ理由を教えてください。

湘南鎌倉総合病院でお会いした家庭医の先生に相談をするなかで決めました。私は将来的にプライマリ・ケアは広まっていくであろうし、そうあって欲しいとも願っています。だったら自身が成長していく過程で学んだことを言葉にして、後輩たちに伝えていける能力を身につけておいたほうがいいだろうということになりました。そこで家庭医療学という学問をきちんと言語化して教育するプログラムが整っているのは「亀田」だということで決めたわけです。
私がいま所属している安房地域医療センターと亀田ファミリークリニック館山は千葉県の館山市にあります。私の出身地である富津市に近く、どちらも南房総地域に含まれます。私は将来的にこのエリアで役立っていきたいと思っていたので「地元」に戻って研修を受けようと考えました。
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    想いある「地元」の南房総地域で研修を受けることを決断

— 専門研修プログラムを受けての感想はいかがですか?

安房地域医療センターは約150床の中規模病院です。ここでは救急外来で自分が対応した患者さんをそのまま入院後も担当することができます。また、退院後の外来に関してもフォローさせてもらうことができますし、もしその患者さんが在宅の診療に臨まれるときは主治医になることもできます。ひとつの医療機関のなかで救急から入院、外来、在宅までずっと寄り添っていける点が特に勉強になっていると思います。
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    専攻医として日々経験を積んでいる安房地域医療センター

将来的には総合診療科のマネジメントも手がけていきたい

— 先生の今後の目標を教えてください。

私自身の目標は千葉県の地域医療を盛り上げていくことです。私は地域医療というのは、その土地の医療・介護・福祉の連携のなかで住民の方々の生活をどうサポートしていくかを考えることが大切だと思っています。ですから、自分自身が働いている病院の他のスタッフのみなさん、介護福祉を含めた多職種の方々との連携を深めたり、地域のリソースとのつながりを強化するといった活動ができればと思っています。
立ち位置としては、中規模病院ので働く「病院家庭医」を目指しています。診療所よりも多くの職種の人たちと働けることが私にとっては魅力で、診療所をはじめとするいろんな機関のハブ的な拠点にもなると考えています。そうした意味でも総合診療科のマネジメントも手がけていきたいですね。

— 地域の人たちとの交流についてはいかがですか?

安房地域医療センターでは「Awa-café project」という活動をしています。地域の方々と医療者が健康等について話をする場を設ける取り組みですが、私もこれに参加しています。医師やセラピスト、事務、相談員、ソーシャルワーカー、検査技師、看護師など様々な他職種のみなさんから構成されていて、安房地域医療センターでは歴史のある取り組みです。地域の公民館でロコモ体操の講習をしたり、地域のイベントに参加して健康教室を開いたりといったことをしていて、私もこの先長く関わり続けていきたいと思っています。
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    安房カフェ
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— 最後に一言メッセージを。

私は「地域医療」には大きな魅力とやりがいがあると思っています。一つの面は、共に働く人や地元の人たちとの確かなつながりであったり、豊かな自然に囲まれた暮らしであったりといったことです。昨年の夏は総合診療科の人仲間たちと病院の近くでバーベキューをしましたが、海辺の本当にきれいなところで楽しかったです。別の面では、縮小していく日本社会の中でその地域がどう在ろうとするか、医療従事者が積極的に地域の人たちとともに医療のことや将来のことを考えていく、そういう対話と課題解決を求められることがやりがいだと思っています。そういう楽しさを共有できる医療従事者が増えてくれるとうれしいですね。
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    安房総診BBQ
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    診療所のみんなでキャンプ

プロフィール

安房地域医療センター 総合診療科
亀田ファミリークリニック館山 家庭医診療科
専攻医 林 亮佑(りょうゆう)先生

経歴:
1995年 千葉県富津市生まれ
2020年 千葉大学医学部卒業
2022年 湘南鎌倉総合病院 初期研修修了
2023年- 亀田家庭医総合診療医専門プログラム 専門研修中

日本プライマリ・ケア連合学会
日本病院総合診療医学会

取材後記

林先生が日本プライマリ・ケア連合学会に入ったのは、専攻医になったと同じタイミングだそうだ。専攻医部会の幹事として専攻医にとって必要なサポートを考えたり、情報共有の場を提供したりといった活動も行っているとのこと。インタビューのなかにもあったように、林先生は「プライマリ・ケアは広まっていく」ことを確信している。その推進のために自身も尽力しているということなのだろう。
プライマリ・ケアに対する思いや将来への展望など落ち着いた口調で話すなかにも秘められた熱意が伝わってきたことに好感が持てた。林先生のフレッシュな意欲が今後どのような成果に結びついていくのか、いまから楽しみであり、大いなる期待とともにエールを送りたい。

最終更新:2024年02月15日 00時00分

「プライマリ・ケア公式WEB」 編集担当

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「プライマリ・ケア公式WEB」 編集担当

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