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理事長 草場先生の部屋

高額療養費制度をめぐって

2025年4月を迎え、新しい年度がスタートいたしました。職場にもフレッシュな顔ぶれが並び、気持ち新たに仕事に臨まれる方も多いかと思います。どうか、充実した日々をお過ごしください。

高額療養費制度

さて、今回は国政にて大きな論議を引き起こした高額療養費制度をめぐる展開について触れたいと思います。実は、本件については国会で論議になった際に当学会の健康の社会的決定要因検討委員会にて対外的な声明を検討頂いていたのですが、その結論が出る前に首相から見直しの撤回の声明が出てしまい、機を失したこともあり表面的には何も動いていない形になってしまいました。会員の皆様には「何をしているんだ」との思いもあったかもしれません。この場を借りてお詫び申し上げます。

見直しの内容については報道でご覧になっているでしょうから繰り返しませんが、詳細は厚労省のHPにある資料がわかりやすいでしょう。(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001393881.pdf)ポイントはなぜ見直すのか、という点です。資料では「高額療養費について、高齢化や高額薬剤の普及等によりその総額は年々増加しており、結果として現役世代を中心とした保険料が増加してきた。そこで、セーフティネットとしての高額療養費の役割を維持しつつ、健康な方を含めた全ての世代の被保険者の保険料負担の軽減を図る観点から、以下の方向で見直す。」とあります。保険料増加の原因となる医療費の増大の一端が高額医療にあることは事実ですが、主たる要因は多疾患合併が避けられない高齢者の増加による医療費増大にあることは言うまでもありません。そして、削減するべきはフリーアクセスで生じる複数科受診や多剤投与、重複する検査などであり、難病患者を含む高額医療を必要とする少数の患者の医療にあるはずはありません。ただ、前者については既得権益の壁は分厚く、国も手がつけられない政治的な現実があるのはご存じの通りです。

少数派で政治的抵抗が弱い集団ならば声を上げられないだろうという安易な見通しで国や関係団体が進めた見直しが患者団体の強烈な反対を受けて頓挫したのは、少数与党という政治状況に加えて、日本の民主主義がまだ健全である証拠かと思います。米国の惨状を見るにつけ、ホッと胸をなで下ろしたくなります。


 こうしたテーマについては今後も学術団体として発信すべきことは発信していく所存です。どうか会員の皆様からも声をお寄せくださいませ。これからもフットワークの軽い学会であり続けていきます。

草場鉄周

最終更新:2025年04月11日 11時21分

「プライマリ・ケア公式WEB」 編集担当

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「プライマリ・ケア公式WEB」 編集担当

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