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災害医療
2回目のPCAT(Primary Care Assistance Team)導入研修パイロット版を開催
日本プライマリ・ケア連合学会は、2024年9月7日(土)、8日(日)の2日間にわたり、大規模災害発生時に被災地域の健康に貢献する災害支援活動組織PCAT(Primary Care Assistance Team)の導入研修パイロット版を開催いたしました。
本研修には、前回の11名から約2倍となる21名のPCAT研修受講者が参加しました。参加者は、南海トラフ地震災害想定地域や災害支援・受援経験のあるJPCA会員を中心に、各支部ブロックのバランスを考慮して選考されました。
また、草場理事長・大橋副理事長、災害医療システム委員会委員8名、学会事務3名に加え、外部専門家として、DMAT(Disaster Medical Assistance Team)、DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team)、日本赤十字社、DWAT(災害派遣福祉チーム)、特定非営利活動法人TMAT、厚生労働省から6名の方々にご参加いただき、総勢40名での開催となりました。
研修の目的と内容
本研修の目的は、災害発生時にPCATの一員として活動を安全かつ正しく行うための災害医療に関する基本的な知識を取得し、PCAT隊員に求められる資質を養うための技術や災害支援チームとしてのコミュニケーションスキルを獲得することです。
1日目は、PCAT活動指針や災害関連法規の説明から始まり、災害時の保健医療福祉体制、PCATの組織運営と指示命令系統について学びました。午後からは、「準備から実働まで」をテーマにしたケースワークを行い、DMATやDWATの仕組みと役割、災害薬事、災害時のメンタルヘルスと支援について講義を受けました。最後に「こころのケアの実際」をテーマとしたケースワークで1日目を締めくくりました。
2日目は、PCAT内の情報共有から始まり、災害時の診療記録について学びました。その後、DPATや日本赤十字社における災害支援の仕組みと役割について理解を深めました。午後は「過去の反省から学ぶ」をテーマとした長時間のケースワークを行い、最後に今後の派遣体制について説明を受けました。
プライマリ・ケアの重要性と PCATの役割
災害の影響を受けた地域では、プライマリ・ケアのニーズが極めて高くなります。日本プライマリ・ケア連合学会は、近接性・包括性・協調性・継続性・責任性(ACCCA)をプライマリ・ケアの原則として重視しています。特に亜急性期から慢性期にかけて、プライマリ・ケアを担う医療者の役割が重要となります。
PCATは、多職種連携を得意とするプライマリ・ケア医療者の強みを活かし、公衆衛生の視点をもって介護・福祉領域や行政との連携を図りながら、被災地域の住民の生活を支援することを目的としています。
PCATの沿革と今後の展望
PCATは2011年の東日本大震災時に初めて発動され、その後2016年の熊本地震でもPCAT2016として活動しました。2019年度からは学会としての災害支援継続方針に転換し、2022年度にPCATの本格的組織化方針が承認されました。2023年度には災害支援活動に関する規則案・細則策定が承認され、PCAT登録者導入研修のパイロット版開催に至りました。
能登半島地震ではPCATとしてではありませんでしたが、支援プロジェクトを立ち上げ約半年間輪島に派遣することで、能登北部医師会として輪島市保健医療福祉調整本部に受援側代表として入られていたごちゃまるクリニック小浦院長が、調整会議体に出席することができるような活動を展開しました。
今後は、本研修でいただいたご意見を踏まえ、今年度中に本格的な導入研修を開催する予定です。また、オブザーバーや理事のフィードバックをもとに、導入研修や技能維持研修の確立、PCAT登録者による支援活動組織の構築を進めてまいります。
最後に、本研修にご協力いただいた全ての関係者の皆様に心より感謝申し上げます。引き続き皆様のご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
最終更新:2024年09月10日 09時08分
記事の投稿者
災害医療システム委員会
災害時のプライマリ・ケアの維持とプライマリ・ヘルスの維持と向上を目指して、学会としてできる取り組みを見出し、形にすることを目的とした委員会です。
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